上 下
339 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

298.お爺ちゃんと古代獣討伐スレ民_7

しおりを挟む
 ざわつくコメント欄をまるっと無視し、モロゾフ氏に確認を取る。作戦は有って無いようなもの。
 その時々で動いていく。とてもやりやすいものだった。

 今回のバトルでは初めて見る私以外のテイマーさん。
 しかもハーフビーストで空から自在に召喚すると言うんだから私の上位互換かもしれない。
 性能云々では私に分があるだろうが、それでも上手い事考えたなと思う。飛行中、スタミナ温存が課題中の課題。
 攻撃系スキルに振り込むプレイヤーも多い中、彼は飛行に全特化した野生種で攻撃手段を得たのだから。
 テイマーは単体では大して強くないからね。
 頼りになる仲間が居て、そして打倒したモンスターを従える術を持つ。そのテイムモンスターをどう活かすかはテイマー次第なのだ。私も内心で負けてられないなと思った。


「それでは適度に援護しつつ君たちの戦い方を見せて貰おうか」

「討伐できてないからそんな大したもんじゃ無いけどな」


 モロゾフ氏は苦笑する。
 元々効率的な戦闘を得意としていたらしく、今回のような勝つまでやるのなんて赤字もいいところだと嘆いている。
 その一方で、もしこれで勝てたら周囲に自慢してやるんだとも吹聴しているらしく、彼なりに考え有ってのことだと伺わせた。


「リーダーは考えすぎなんすよ」

「お前にだけは言われたく無いぞチキン」

「プークスクス」

「あとそこの助っ人アイドルも」


 今のスズキさんはアイドルモード。
 なのに普段と変わらぬ奇行に走るので体面を考えるように促すが、今更ですしと開き直っている。


「まぁ、邪魔にならない程度にヘイト取りとダメージを与えていくのでそのように」

「結構無茶な注文してる自覚あるか?」

「まぁ謎が解けない限り倒しきれない証明はそちらが持ってるのでしょうし、こちらはやれる事をやるだけですよ。ね、スズキさん?」

「え?」


 スズキさんボディに足を突っ込んでいる最中のリリーは、こっちの話を聞いていなかったように聞き返してくる。
 そのままボディに神経を通わせるかのようにビチビチして見せると、先ほどまで見えていたジッパーが背鰭と一体化して目立たなくなった。
 一体全体どんな仕掛けか分からないが、そこにはさっきまでのアイドルは居らず、見慣れたスズキさんがおちゃらけた様子でこちらを見返している。


「お待たせしました。で、なんの御用ですか?」

「なんでもないよ。ね、モロゾフ氏?」

「ああ、なんでもない。戦闘の主体はこちらで、そっちは助っ人の分を弁えておけよとかそんなのだ」

「なるほどー、僕の槍捌きのお披露目はまたの機会としますか」

「そうして貰えると助かるな。じゃあ俺たちはいつも通りに攻めていくから、せいぜい巻き込まれないように」


 そう言いながらモロゾフ氏はテュポーンに向かって駆け出した。その大きな体躯は、雑木林から巨大な蛇をいくつも生やし、足元にも同系統の蛇がわんさか生えている。

 上の方が攻撃主体で、下の方は移動が主体だそうだが、『食らいつき』と『丸呑み』はしてくるので十分に警戒していてくれとのことだった。
 私は忠告通りに注意を払い、スズキさんが出したソファの上で緑茶を楽しむ。


【くっそwww】
【ゲストが真面目に戦ってるのになんでこの人達寛いでんの?】
【そのソファどっから出した!】
【魚の人ー、自由すぎるだろ】
【それ以前にサハギンてソファに座れるのな】

「何言ってるんですか。座れますよ」

【尻尾どうしてるんだよ】

「そこはプライベートな質問なのでNGです。ね、ハヤテさん」

「え? 何聞いてなかった」

「だ、そうです」


 聞いていたけど、こちらを巻き込む気満々な彼女のニヤついた視線にシラを切る。気になるのは確かだが、そこはあえて突っ込まない方向で頼むよ。ゲームだからなんでもありでいいじゃない。その着ぐるみは超高性能で、ソファに座るときは勝手に折り畳まれるとかそう思ってくれたらいいと思うよ。


 コメント欄を賑やかしてやると、早速戦局が動き出す。
 テュポーンの耐久が大きく減少したのだ。
 どうやら上空を旋回している小型円盤はクリエイターのれーめん氏のマシンらしい。
 ウチの探偵さんと同じタイプの乗り物勢……いや、合体タイプか?
 モロゾフ氏どころかチキンタルタル氏や塩だいふく氏やブリ照り氏、◇鴨南蛮◇氏が上空を取って交互にレーザーを照射していた。
 ムーにはレーザー兵装が使用できないと聞いたので、あれは備え付けのものなのかもしれないね。
 なるほど、よく考えられてる。
 でもクリエイターって、そう言うジョブだっけ?
 探偵さん曰く、転送に長けたジョブだと聞くけど。


【こいつらの戦い方、独創的すぎない?】
【大体クリエイターのせい】
【センスはクリエイターのせいだけどさ】
【なんでUFOなのさ】
【宇宙人はビーム持ってそうなイメージ】
【そもそも古代人がビーム持ってるんだよなー】
【つまり古代人は宇宙人だった!?】
【どうしてそうなる!?】


 ビーム照射で減らせる耐久はどうも80%までらしい。
 そこでようやくテュポーンの方も敵と認識したのか戦闘形態へと移行し始めたようだ。
 コアが迫り上がり、上空に向けて音波を発する。

 ミョワワ~ンと気が抜けるような音の波がUFOに触れると、コントロールが効かなくなって衝突し始める。
 まるでメカに対してメタを張っているかのような兵器を有しているらしい。
 対アトランティスのものなのだろうか?
 だとしてもレムリアやムーが協力して削りきれないというのもおかしなものだが。


 しかし全てのUFOが撃墜された頃、明後日の方向から極大のレーザーがコアを撃ち抜いた。
 確かこれは師父氏の使っていたブラスターだったか?
 
 つまり、さっきまでのUFOは囮で乗組員は全部偽物だということになる。わざわざコクピットが剥き出しだったのはそうやって騙す意図があったのかと納得したところで、コアに向けて第二射が発射される。
 このパーティにブラスターは二名。
 ベルト持ちエルフのブリ照り氏にヒューマンの◇鴨南蛮◇氏だ。
 先程までの人形から、やけにメタリックなボディに姿を変えていた。それでも当時であったレムリアの民ほど奇抜ではない。
 どちらかと言えば正義のヒーローにも見てとれた。
 某マスクドライダーと同じ時間帯に放映している戦隊ヒーローものと似たような姿だ。レムリアでは今このようなファッションが流行っているらしい。

 連射が利かない、エネルギー効率が非常に悪いと言われたブラスターであるが、人数が増えた分だけ維持が随分と楽になるのかコアに直接ダメージを与えて耐久を70%まで削っていた。
 
 それ以上はコアが引っ込んでしまったので無駄なのだろう、彼らからの攻撃も同時に止む。無駄打ちは彼ら的にも痛手だろうからね。色々と考察が捗る。
 スズキさんからよこされたお茶請けの濡れせんべいを一枚取り、咀嚼した。それを緑茶で流し込み、ホッと一息。


【この人達、すっかり観戦モードだ】
【こんな戦地で茶をしばける神経もどうかと思うが】
【邪魔するなって言われてたししゃーない】
【そうか? スッゲー邪魔じゃね?】
【一緒にパーティ組みたくないのは確かだしな】


 70%からテュポーンは出産モードになる。
 コアのあった上部が花の花弁のように膨れ上がる。
 肉で出来たその花弁はやがて開き、出てきたのは大蛇。
 いや、上半身は女性体をしており両目は黄金色に光っていた。
 あれは確か、メデューサ。
 
 テュポーンに比べて幾分か小さな個体を生み出して、テュポーンは沈黙する。じわじわと耐久が回復しているのを見るあたり、放置するのは得策じゃないのが見てとれた。


「そろそろ私たちも行こうか」

「変身しないんですか?」

「しておこうか。向こうは状態異常を行なってきそうな見た目をしているからね。こちらも相応な対応をしないといけないよね」

【お?】
【邪神インストール来る?】
【普通のライダー姿でも強いんだけどな】
【変身しなくても強いのは黙っておこう】
【そこはポリシーの問題なので】
【よくわかんないけど、お爺ちゃんの好きなようにやらせてあげて】
【コメントにマリンちゃんが居ますね】


 孫に応援されながらの変身は少し恥ずかしいけど、でも。
 守るための戦いに身体を張るのは気分がいい。
 いつものポージングから、変身の掛け声。
 膨張する光に飲まれ、私の肉体は純銀のボディに包まれた。
 両手を広げ、神格を迎え入れる。


「いあ、いあ! くとぅるー!」


 前方と背後から魔法陣が競り上がり、そして私のボディは飲み込まれる。肉体が邪なる意識に飲み込まれそうになるのをなんとか抑え切り、強制的に人型に押し留める。
 おどろおどろしい腐臭を周囲に放ち、強烈なヘイトを回収する。
 どうもこの変身、周囲を嫌でも巻き込むものらしい。
 新しい敵性存在の出現に最初に気がついたのはメデューサだった。


「さぁ、力比べと行こうか」


 見上げるほどの巨体を見据え、私は駆け出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん
SF
生まれつき体の弱い少女、夏凪夕日は、ある日『サンライズファンタジー』というフルダイブ型VRMMOのゲームに出会う。現実ではできないことがたくさんできて、気が付くとこのゲームのとりこになってしまっていた。スキルを手に入れて敵と戦ってみたり、少し食事をしてみたり、大会に出てみたり。初めての友達もできて毎日が充実しています。朝起きてご飯を食べてゲームをして寝る。そんな生活を続けていたらいつの間にかゲーム最強のプレイヤーになっていた!!

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

余暇人のVRMMO誌〜就活前にハマっていたマイナーゲームにログインしなくなって五年、久しぶりにインしたら伝説になってた〜

双葉 鳴|◉〻◉)
SF
向井明斗25歳。通院中、会社からかかってきた要件は、これ以上業務を休むならもう来なくていいと言う実質上の首切り宣言だった。 就職難で漸く拾ってくれた会社にそれこそ身を粉にして働き、その結果が通院処分。精神と肉体を磨耗した明斗は、通院帰りに立ち寄ったゲームショップで懐かしいタイトルを発見する。 「New Arkadia Frontier」 プレイヤーを楽しませる要素を徹底的に廃し、しかしながらその細かすぎるくらいのリアルさに一部のマニアが絶賛するクソゲー。 明斗もまたそのゲームの虜になった一人だった。 懐かしさにそのタイトルをレジに持っていこうとして立ち止まる。あれ、これって確かPCゲームじゃなかったっけ? と。 PCゲームは基本、公式ホームページからのダウンロード。パッケージ販売などしていない筈だ。 おかしいぞとパッケージを見返してみれば、そこに記されていたのはVR規格。 たった五年、ゲームから離れてるうちにあのゲームは自分でも知らない場所に羽ばたいてしまっていた。 そもそも、NAFは言わずと知れたクソゲーだ。 5年前ですらサービス終了をいつ迎えるのかとヒヤヒヤしていた覚えがある明斗。一体どんなマジックを使えばこのゲームが全世界に向けてネット配信され、多くのプレイヤーから賞賛を受けることになるのか? もはや仕事をクビになったことよりもそっちの方が気になり、明斗は当時のネーム『ムーンライト』でログインする事に。 そこでムーンライトは思いがけずそのゲームの根幹を築いたのが自分であることを知る。 そこで彼が見たものは一体なんなのか? ──これはニッチな需要を満たし続けた男が、知らず知らずのうちに大物から賞賛され、大成する物語である。 ※この作品には過度な俺TUEEEE、無双要素は設けておりません。 一見して不遇そうな主人公がニッチな要素で優遇されて、なんだかんだ美味い空気吸ってるだけのお話です。 なお、多少の鈍感要素を含む。 主人公含めて変人多めの日常風景をお楽しみください。 ※カクヨムさんで先行公開されてます。 NAF運営編完結につき毎日更新に変更。 序章:New Arkadia Frontierへようこそ【9.11〜9.30】19話 一章:NAF運営編【10.2〜10.23】23話 二章:未定 【お知らせ】 ※10/10予約分がミスで11/10になってたのを10/11に確認しましたので公開にしておきました。一話分飛んでしまって申し訳ありません。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ダンジョンでサービス残業をしていただけなのに~流離いのS級探索者と噂になってしまいました~

KK
ファンタジー
旧題:ダンジョンでサービス残業をしていただけなのに ~ピンチの有名配信者を救った結果「流離いのS級探索者」と噂になってしまいました~ 「くそっ! もうこんな会社辞めてやる!」(今年通算5度目の宣言)  ブラックな職場で働く限界社畜、渡陽向(わたり・ひなた)は今日も仕事の持ち帰り――サービス残業を余儀なくされていた。  そんな陽向の目に留まったのが、仕事先と自宅との間に存在する『新東京ダンジョン』。  学生時代、趣味でダンジョン探索をしていた記憶を思い出し、陽向はサービス残業のアイデア出しも兼ねて気晴らしに潜る事にした。  昔の感覚を取り戻しながら、軽快にダンジョンを突き進んでいく陽向。  そこで偶然、陽向は探索系配信者の女の子が凶悪なモンスターに襲われている現場に遭遇。  モンスターを瞬殺し、彼女を危機から救った。  ……――翌日、とあるネット記事が世間を騒がせる事となった。 〈登録者数100万人超え人気探索系配信者シュガァ 生配信中にピンチを救われる 「何も言わず去って行って…」「是非、お礼したい」 ネット騒然〉

処理中です...