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4章 お爺ちゃんと生配信
277.お爺ちゃんとアイドル戦国時代③
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「えっ、本当にあたし達だけで挑むの?」
今更踏み出した場所が地獄だと気づいた様子のみくるさん。
あかりさんに至っては無言だ。
マリン然り、彼女達の世代は失敗を恥と考える。
だからこう言葉を付け足した。
「勘違いしないで欲しいんだけど、私は何も君たちに意地悪をしたい訳じゃないよ」
「違うの?」
「全然違うよ。むしろこれからアイドルとして活動していくんならこれくらいの無理難題は常に来ると思った方がいいよ。もし君がランクを駆け上がった先に出会う案件に、今回のような無茶振りが来ないとも限らないでしょ?」
「流石にその案件は遠慮させて貰いたいわ」
【でもアキカゼさんの理屈も納得できるんだよなー】
【ランクが上がればスポンサーもつく】
【スポンサーがつけば給料が増える代わりに無茶振りもくる】
【それでもこの規模の嫌がらせはない取ろうと思う】
「嫌がらせとは酷いな。一度これくらいの難易度に挑んでみると、不思議とそれ以下の企画に立ち往生しなくていいと言う経験が得られると思うんだ」
【あ、なるほどな】
【確かにこれに挑めればある程度のことは問題なさそう】
【ランキングすらどうでも良くなりそうな難易度だけどな】
【そこまで考えての無茶振りだったんですね】
「因みにこれは一回戦で二回戦と三回戦も考えてるよ」
【草】
【一戦目ヘビーって事は二戦目はピョン吉ですか?】
【おい! アイドルを一体なんだと思ってるんだ!】
【これはスパルタですわ】
「別にリタイアしたっていいんだよ? 私は無理強いしたい訳じゃないし」
【そりゃそうよな】
【下手しなくてもアキカゼさんの炎上待った無し】
【前回の釣り回もある意味で発狂者続出してたしな】
【あ、あれって釣り回だったっけ?】
【正気度残ってる奴少なすぎんだろ】
【邪教の密会か何かかと思った】
「ただね、このチャンスを逃すと君達は一生後悔する事になる」
「どう意味よ」
みくるさんが敵意を瞳に乗せて私に言葉を投げてきた。
うんうん、後に引けなくなっていよいよ体裁を繕う余裕も無くなってきたね。
「はっきり言って君たちの個性はとても弱いんだ。それこそ簡単に真似されてしまうほどの惰弱性を持っている。みくるさんは少し天然入ってるけど、探せば君くらいの子は出てくるんじゃないかな?」
「…………ッ!」
【アキカゼさん、ゲスト煽ってどうするの】
【みくるちゃん涙目じゃん】
【俺たちのみくるを泣かせるなー】
【ふぅ、みく虐助かる】
【この子は半狂乱になってるのを見守るファンが多いですし】
【分かる。後方父親ヅラしたくなるよな】
「でもね、これはいずれ彼女が気がついてぶつかる壁だ。今のうちに対策を立てないと身を滅ぼすことになる」
「それと今回の無茶振りがどうつながるのよ!」
「君は良くアイドルランクが低いことを口にするけど、それは裏を返せばファンを数字でしか見ていないのに気がついているかね?」
「!」
「ファンは人だよ。自分の時間を使って君の配信を覗きにきてくれるし、コメントを打って応援してくれてる。そんなファンの前で君はファンを馬鹿にしているんだ。自分にその気がなくても、そう思ってしまう人も少なくない。君のランクが低いのはそんな態度を表に出しすぎているからだ」
「そんなつもりはなかったのよ。でも他のアイドルの子達はランクの上下で優位に立てるかどうか競ってるし……」
「だからファンを蔑ろにしていいと? それ以前に君がその子達に付き合う必要なんてあるの? もっと自由に生きなさいよ。好きでこのゲームで遊んでるのに、周囲の意見に流されてどうするの」
「ごめんなさい」
「謝る相手が違うよ? 私に謝られても困ってしまうね。今でもついてきてくれるファンの皆さんと相談して、対ヨルムンガンドの攻略法を練るといい」
「え、あたし達だけで挑戦するんじゃないの?」
「いつそんな話になったの? 私は君達がアイドルとして戦場に立ち、どんな結果であれファンと協力して挑んでくれる場面を見たいんだ。それに私は付き合わないと宣言しただけだね。勝ちに拘らなくてもいい。今まで培ってきた技術を見せつけてもいいし、ファンに頼ってもいい。君を見捨てないでついてきてくれるファンだ。君が集合かければいつでも集ってくれるよ? ゲーム内アイドルってそういう身近な存在なんでしょ?」
「分かったわ」
「それに今なら全部私の所為に出来る。失敗しても私が泥を被ればいいのさ。だから遠慮せずぶつかっていきなさい」
「うん!」
【なんでこの人こんな臭いセリフ吐けるんだろう】
【全部責任持ってくれるのはありがたいよな】
【AWOアイドルは本来個人事業主だから責任は全部自分に回ってくるんやで】
【今ならアキカゼさんが悪いで済む辺りほんとwww】
【もしかして今回でこの二人一皮剥けるかもな】
【おーっし、みくるのためにいっちょ人肌脱ぐか】
【のりこめー】
【のりこめー】
みくるさんは責任を負わなくていいという言葉を真に受けて、早速ファンにパーティの募集を掛けていた。
相変わらず口は少し悪いが、自分の非を認めてからは少しデレをみせている。
「あかりさんもファンを頼るかい?」
「私のファンは……」
「来てくれない。そう思っているかな?」
あかりさんはコクリと頷いた。
計算で作り上げたキャラ。
ミスをしない編集は見る分には良いが、固定ファンが付きづらいと自分でも分かってるようだ。
「案外、君のファンは君という人間を理解してついてきてくれてるものだよ」
ほら、とみくるさんの周囲に集まってるプレイヤーとは毛色の違う集団を指差した。
「あかりちゃん、たまには俺らも頼れよ!」
「あかり無理すんな」
「うぅ、みなさん」
「ほら、行ってきなさい」
「はい!」
ぐすぐすと泣き出す彼女を囲うように、良い歳した大人のプレイヤーがあかりさんを囲った。
ちょっとボロが出始めた彼女だが、理解者はわざわざ指摘せず、いつものように振る舞うよう言葉を掛けていた。
二人のアイドルはファンを頼って0%の勝率を15%ぐらいに引き上げて勝負に挑む。
もちろん何度もボロ負けした。
見てる側からしたら痛ましいシーンもたくさんあった。
「降参するかい?」
「まだまだ、あたしとファンの力はこんなもんじゃないわ!」
「もちろん、私たちも負けませんよ!」
「ならば最善を尽くすと良い」
彼女達の巣立ちは、案外すぐそこまで来てるのかもしれない。
今更踏み出した場所が地獄だと気づいた様子のみくるさん。
あかりさんに至っては無言だ。
マリン然り、彼女達の世代は失敗を恥と考える。
だからこう言葉を付け足した。
「勘違いしないで欲しいんだけど、私は何も君たちに意地悪をしたい訳じゃないよ」
「違うの?」
「全然違うよ。むしろこれからアイドルとして活動していくんならこれくらいの無理難題は常に来ると思った方がいいよ。もし君がランクを駆け上がった先に出会う案件に、今回のような無茶振りが来ないとも限らないでしょ?」
「流石にその案件は遠慮させて貰いたいわ」
【でもアキカゼさんの理屈も納得できるんだよなー】
【ランクが上がればスポンサーもつく】
【スポンサーがつけば給料が増える代わりに無茶振りもくる】
【それでもこの規模の嫌がらせはない取ろうと思う】
「嫌がらせとは酷いな。一度これくらいの難易度に挑んでみると、不思議とそれ以下の企画に立ち往生しなくていいと言う経験が得られると思うんだ」
【あ、なるほどな】
【確かにこれに挑めればある程度のことは問題なさそう】
【ランキングすらどうでも良くなりそうな難易度だけどな】
【そこまで考えての無茶振りだったんですね】
「因みにこれは一回戦で二回戦と三回戦も考えてるよ」
【草】
【一戦目ヘビーって事は二戦目はピョン吉ですか?】
【おい! アイドルを一体なんだと思ってるんだ!】
【これはスパルタですわ】
「別にリタイアしたっていいんだよ? 私は無理強いしたい訳じゃないし」
【そりゃそうよな】
【下手しなくてもアキカゼさんの炎上待った無し】
【前回の釣り回もある意味で発狂者続出してたしな】
【あ、あれって釣り回だったっけ?】
【正気度残ってる奴少なすぎんだろ】
【邪教の密会か何かかと思った】
「ただね、このチャンスを逃すと君達は一生後悔する事になる」
「どう意味よ」
みくるさんが敵意を瞳に乗せて私に言葉を投げてきた。
うんうん、後に引けなくなっていよいよ体裁を繕う余裕も無くなってきたね。
「はっきり言って君たちの個性はとても弱いんだ。それこそ簡単に真似されてしまうほどの惰弱性を持っている。みくるさんは少し天然入ってるけど、探せば君くらいの子は出てくるんじゃないかな?」
「…………ッ!」
【アキカゼさん、ゲスト煽ってどうするの】
【みくるちゃん涙目じゃん】
【俺たちのみくるを泣かせるなー】
【ふぅ、みく虐助かる】
【この子は半狂乱になってるのを見守るファンが多いですし】
【分かる。後方父親ヅラしたくなるよな】
「でもね、これはいずれ彼女が気がついてぶつかる壁だ。今のうちに対策を立てないと身を滅ぼすことになる」
「それと今回の無茶振りがどうつながるのよ!」
「君は良くアイドルランクが低いことを口にするけど、それは裏を返せばファンを数字でしか見ていないのに気がついているかね?」
「!」
「ファンは人だよ。自分の時間を使って君の配信を覗きにきてくれるし、コメントを打って応援してくれてる。そんなファンの前で君はファンを馬鹿にしているんだ。自分にその気がなくても、そう思ってしまう人も少なくない。君のランクが低いのはそんな態度を表に出しすぎているからだ」
「そんなつもりはなかったのよ。でも他のアイドルの子達はランクの上下で優位に立てるかどうか競ってるし……」
「だからファンを蔑ろにしていいと? それ以前に君がその子達に付き合う必要なんてあるの? もっと自由に生きなさいよ。好きでこのゲームで遊んでるのに、周囲の意見に流されてどうするの」
「ごめんなさい」
「謝る相手が違うよ? 私に謝られても困ってしまうね。今でもついてきてくれるファンの皆さんと相談して、対ヨルムンガンドの攻略法を練るといい」
「え、あたし達だけで挑戦するんじゃないの?」
「いつそんな話になったの? 私は君達がアイドルとして戦場に立ち、どんな結果であれファンと協力して挑んでくれる場面を見たいんだ。それに私は付き合わないと宣言しただけだね。勝ちに拘らなくてもいい。今まで培ってきた技術を見せつけてもいいし、ファンに頼ってもいい。君を見捨てないでついてきてくれるファンだ。君が集合かければいつでも集ってくれるよ? ゲーム内アイドルってそういう身近な存在なんでしょ?」
「分かったわ」
「それに今なら全部私の所為に出来る。失敗しても私が泥を被ればいいのさ。だから遠慮せずぶつかっていきなさい」
「うん!」
【なんでこの人こんな臭いセリフ吐けるんだろう】
【全部責任持ってくれるのはありがたいよな】
【AWOアイドルは本来個人事業主だから責任は全部自分に回ってくるんやで】
【今ならアキカゼさんが悪いで済む辺りほんとwww】
【もしかして今回でこの二人一皮剥けるかもな】
【おーっし、みくるのためにいっちょ人肌脱ぐか】
【のりこめー】
【のりこめー】
みくるさんは責任を負わなくていいという言葉を真に受けて、早速ファンにパーティの募集を掛けていた。
相変わらず口は少し悪いが、自分の非を認めてからは少しデレをみせている。
「あかりさんもファンを頼るかい?」
「私のファンは……」
「来てくれない。そう思っているかな?」
あかりさんはコクリと頷いた。
計算で作り上げたキャラ。
ミスをしない編集は見る分には良いが、固定ファンが付きづらいと自分でも分かってるようだ。
「案外、君のファンは君という人間を理解してついてきてくれてるものだよ」
ほら、とみくるさんの周囲に集まってるプレイヤーとは毛色の違う集団を指差した。
「あかりちゃん、たまには俺らも頼れよ!」
「あかり無理すんな」
「うぅ、みなさん」
「ほら、行ってきなさい」
「はい!」
ぐすぐすと泣き出す彼女を囲うように、良い歳した大人のプレイヤーがあかりさんを囲った。
ちょっとボロが出始めた彼女だが、理解者はわざわざ指摘せず、いつものように振る舞うよう言葉を掛けていた。
二人のアイドルはファンを頼って0%の勝率を15%ぐらいに引き上げて勝負に挑む。
もちろん何度もボロ負けした。
見てる側からしたら痛ましいシーンもたくさんあった。
「降参するかい?」
「まだまだ、あたしとファンの力はこんなもんじゃないわ!」
「もちろん、私たちも負けませんよ!」
「ならば最善を尽くすと良い」
彼女達の巣立ちは、案外すぐそこまで来てるのかもしれない。
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