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4章 お爺ちゃんと生配信

254.お爺ちゃん達とvsヤマタノオロチ11

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「喰らいつけ、ヘビー」

[キシャァアアアアアアア!!]

「シフト/ライダー」


 虹首に向かってまっすぐ伸びていくヘビーの首の上を駆け上がり、向かってくるレーザーの雨をショートワープで切り抜けていく。まっすぐ虹首に向かうヘビー。私は邪魔をする桃首を天羽々斬で斬り伏せ、その隙間を縫って、虹首へとヘビーが至る。
 ヘビーの食らいつき攻撃は桃首にも通用するが、時間の無駄だったので私がその役目を受け取った。そのあとヘビーの顎までまっすぐに走って虹首を両断する。
 ジャスト1分、ヘビーは消滅し、私はショートワープでカメラの元まで戻った。


【なになになに!? 何今の】
【一瞬すぎてわかんなかった!】
【ただ何がやべーって、アキカゼさん、ヘビーの首の上を走ってなかった?】
【走ってたわね。重力無視だけではできない芸当よ、いつの間にそんなスキル覚えたのかしら?】

「スキルじゃないよ。あれはダンジョンの奥に眠ってたジョブの特性だ」

【そう、それは良いことを聞いたわ】
【新ジョブ?】
【確かブリーダーかライダーのどっちかだろ? 陣営スレに載ってた】
【それがテイマーの進化先? 俺レムリアだから詳しくない】
【そういえばライダーとかなんとか言ってたね】
【でもライダーならわざわざ名乗る必要ある?】
【その前にこの3日でテイマーのランクⅩに到達したってこと? それこそ無理っしょ】
【だなぁ、メカに比べたら比較的にランクを上げる難易度は低いものの、Ⅹは数日で終わる難易度じゃない】
【ブリーダー取った知り合いは1週間かかったって言ってたぞ】
【ランクⅩ達成者は探せばいるもんだな】
【ブリーダーって何やれるの?】
【パーティメンバーをテイムモンスターに固定して陣形が組める。要は同時召喚枠が取っ払われて同時に五体召喚できるそうだ】
【でもテイマーのランクⅩでそれは達成してるでしょ?】
【それは進化先のランクⅠで消えるから】
【マ?】
【マジ。テイマーのランクと進化先のランクは別物だ】
【マジかー(クソデカため息)】
【テイマーは人少なくていいよなー、逆にメカは人が居すぎてランクマッチしてるもん。早くⅩにしてトランサーになりたい】
【トランサーって何?】
【機体性能をリミットブレイクして自爆特攻させる奴。その分持てるメカの数も増えるから良いぞ。使用後は大破するのに目を瞑れば】
【まぢか】
【それ使ってファンネルごっこするんだ】
【メインじゃなくサブで使うのか!】
【ミサイルに使って任意でホーミングするのも面白そう】
【逆に一発一発狙うをつけるとか気が狂いそう。どこのニュータイプさんですか?】
【|◉〻◉)ハヤテさんならやってくれるって僕信じてました】


 君、手のひら返すの早いね?
 いや、さっきのはもちろん冗談だとわかっていたよ。


「ハヤテさん、それが隠し玉?」


 ジキンさんが驚いた、と言わんばかりに声をかけてくる。


「くまくまー、くまも吃驚仰天したくま」

「そうでしょ? 実はジョブの特性はそれだけじゃないんだ」

「他には何があるんです?」

「実はEBPの消費が安い」

【えっ】
【えっ】
【えっ】
【ライダーならそうだな。バフがかかると召喚可能時間は倍になる。その分消費も倍だけど】
【あれ、それは安上がりの計算にならないのでは?】

「違うよ、テイマーのランクⅤを達成済みで例のダンジョンに行くと陣営としてのアップデートが始まるんだ。それを含めた成果だね。この場合は一度の召喚が一律30%消費する代わりに、回復速度を5倍にするというパッチが組まれてる。最初に茶番で使った時もそれが適用されてるから時間をかけてしまったんだ」

【なるほど】
【ならそれを使わなければよかったのでは?】
【逆転の発想】

「そうかな? 実質使いやすくなったよ?」

【でもライダーになったらテイムできなくない?】
【あっ】
【あっ】
【あっ】
【そうじゃん。進化したら元の能力失われるもんな】
【どゆこと?】
【進化はジョブごとに覚えられるスキルが変わるんだ。簡単に言えばテイマーならモンスターを取っ替え引っ替えできるが、モンスターの強さはそのまま。進化する事によって一匹に限定して超強化する方と数で陣形組んでみんなで強くなるタイプに派生する。だからテイマー系の進化はメンバーを決めてからじゃないとしちゃいけないんだよ】
【なにそれ地獄じゃん】
【そうだよ、じゃあ今回はテイムはしない配信なの?】

「いいや、するよ。むしろメインはそれだからね。ちなみに私の就いたジョブはテイマー/ライダーという特殊なものだ。テイマーのテイミング中はライダーの技能が封印される。逆もまた然り。使い勝手は難しいけど、私に取っては頗る相性がいいジョブだよ。お勧めはしないけどね!」

【え、テイマーとライダーの能力が同時に使えんの?】
【同時ではないってさっき言ってたじゃん】
【ん?】
【つまりどういう事だってばよ】

「確かに傍目で見ればすごそうに見えるかもしれない。けどね、そのかわりライダーの能力も自分のテイムした奴にのみ限るよ。相手のモンスターには使えない。それゆえの特殊ジョブだね」

【あー、そう言うやつね納得】
【説明プリーズ】
【単純にライダーの能力が半分死んでるんだ】
【詳しく】
【俺もジョブのヘルプ読んだだけだけど、ライダーはあらゆるモンスターの上を地上のように歩けるのがまず一つ】
【えっ、は?】
【なんじゃそら】
【そこに加えて敵なら足元のモンスターのデバフ、主に能力低下を引き起こせる。対してそれが味方なら能力強化のバフだ。つまりモンスターに乗った時に敵か味方で能力を変化出来るジョブなんだよ、ライダーって】
【あれ、普通に強くない?】
【強いぞ。ただしアキカゼさんのは敵に対するライド機能が利かない感じだ。味方は強化するけど敵の弱体化はしない感じだな】
【だから能力が半分死んでるのか】
【でも逆に言えばモンス取っ替え引っ替えできてテイムモンスを超強化できるのって強くね?】
【あれ? 有能じゃね?】
【俺もそう思う】
【どうしてお勧めしてくれないんだ?】
【単純に正当進化じゃないからじゃね? 進化先は当然次に進化先がある。でもそっちは非常に不安定かつ曖昧だ】
【あー……万能が故に派生先がないのか】

「まだ分からないけどね。ランクはテイマーのものにライダーのⅠがくっついてる状況だ。この先もライダーで行くのなら私はいいと思ってるよ。ブリーダーになりたい人は素直にそっちに行ったほうがいい。お勧めしない理由は大体そんなところだよ」

【場は既に発狂モードに入っていると言うのに、ここでのんびりお話ししてて良いんですか?】
【それ】
【会話しながら首落としてるのいつ見ても笑う】
【師父さんも参戦し始めたからの余裕だし?】
【でもライド中にテイムできないのは厄介かもな】
【モンスターの上に乗ってなきゃ良いんじゃないの?】
【無理。モンスターは地上と地続きと定義されるから重力がモンスターにも発生するから】
【あ、そう言うデメリットがあんのか】
【普通はデメリットにならないんだぞ? テイマー/ライダーだからこそのデメリットだな】

「知らなかった」

【本人知らなくて草】
【そこまで考察進んでないっしょ。俺らもまだライダーになったやついねーし】
【アキカゼさんの今後に期待】
【つってヘビー級のモンスターが通常マップにいるとは思えないけどな】
【それ。オロチくんだからこその活躍】
【分からんぞ? 陣営イベントの一発目からこの規模の運営だ、次はなにが来るかわからんし、用心はしておいた方が良さそう】
【いうてまだ今回の討伐済んでないんだから目の前のこと済ませようぜ】
【テイマーって最初なんのためにいるんだって思ってたけど、レイドボス捕獲できるって知ってから見る目変わったわ】
【そう考えるとジョブって陣営の特色強いんだよな】
【色々腑に落ちないことばっかだけどな】
【なんでアトランティスがエネミーやレイドをテイム出来るかとかな】

「あ、それは敵にアトランティスの裏切り者がいるからだよ。当時のアトランティスは二つの派閥に分かれてたって話だ」

【ちょっ】
【なんでそんな事実を雑談で話すかな?】
【この人の話、どこまでが冗談か掴めないんだよなー】

「その手の話もダンジョンの隠し部屋で聞けると思うから、みんなもぜひ探索してってね」

【しかもなんでもない風に暴露してったぞ?】
【この人の口の軽さには呆れるね。多分、それほどとくダネとも思ってないかだろう】
【発掘してきたネタを振り返ってみても衝撃の事実なんですが?】
【そりゃ一切姿の見えない敵が元アトランティス陣営だと知れたらな】
【じゃあテイムって?】

「エネミーに一部アトランティスの技術が使われてるからハッキングして乗っ取ってるだけのようだね。敵対した後に変化した技術までは流石にアトランティス陣営には残ってないから」

【ああ、討伐回数でテイム率が上がるのってつまり】

「それだけハッキングしてれば解析も済む頃だろうと私は踏んでいる」

【アトランティスはやっぱそっち分野だったか】
【そっちってどっち?】
【サイエンス、化学系統だよ。テイムなんてファンタジーなガワに騙されるところだった】
【|◉〻◉)え、僕もテイムされちゃう?】
【魚の人にアトランティスの技術が使われてればワンチャン】
【テイム以前にあんた既にクラメンじゃねーか!】
【|ー〻ー)ふ、よくぞ見破った! 褒めて遣わすぞ】
【見破った、じゃねーよ!】
【謎の上から目線】
【この人が入ってくるだけで話の脱線具合がすごいのなんなの?】

「むしろそれを期待してる私達がいるね」

【アキカゼさん公認だった】
【|◉〻<)テヘペロ!】


 本当、彼女の掻き乱しっぷりは天下一品だね。
 うっかりボロを出した時でもなんの話だったか有耶無耶にできるし。
 いや、配信だから厳密にはできてはいないんだけどさ。
 それでも雑談や冗談なんかで有耶無耶にできる。

 だから彼女の作ってくれた隙に、今度こそ私のものになってもらうよ、ヤマタノオロチ!
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