上 下
276 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

240.お爺ちゃん達と前準備

しおりを挟む
「やぁ、よく来てくれたね。師父氏にくま君。それとAWO飛行部の皆さん……と言っても二人だけだけど。山本氏はお元気ですか?」
 

 私の前にはジキンさんに連れられたくま君、そして天空の開拓の時に競い合った乱気流のマスターである師父氏。
 AWO飛行部からは初顔合わせの二人が来てくれた。


「ちーっす、初めましてっす。自分ムササビって言います。あ、これ名刺です」

「これはこれはご丁寧にどうも。ムササビのハーフビーストで飛行部に所属しているなんて珍しいですね。自分の皮膜で飛ばないんですか?」

「それ、みんなからよく言われるんすけど、自分、もっと大空を滑空したいんす。木から木の間を飛び移るんじゃなく、大空を滑空だけで飛び回りたくて飛行部に参加させてもらってるっす」


 上から下まですっかり飛行服に身を包んだ二足歩行するムササビが愛嬌たっぷりにお辞儀をした。
 彼をみてるとどこかスズキさんを思い出す。


「そりゃ良い。浪漫に満ちている。今日はよろしく頼むよ?」

「はいっす」

「続いて僕はアウルって言います。うちの父がよくアキカゼさんの話をしていまして、勉強してこいと本日やってきました」

「はて、父というと?」

「父はAWO飛行部のマスターをしている山本です。僕はその息子に当たります」

「はぁ、なるほど。こんなに大きなお子さんがいるとは思いませんでした」

「よく言われます。うちの父は生活が見えないから独身だと勘違いされてるみたいなんですけど、家では立派な父親ですよ。クランのみんなには信じてもらえないんですが」

「ははは。私もシェリルのお父さんには見えないとよく言われるよ。うちの娘は生真面目だからね。私より妻に似たのだろうね。とは言えよく来てくれた。学ぶことよりこっちが胸を借りるつもりでよろしく頼む」

「はい」


 アウル君は山本氏と比べて好青年だ。
 しかし山本氏とどこかに通ってる雰囲気を感じた。
 気性がおとなしいだけで案外本質はよく似ているのかも知れないね。


「では次はワシかな? 乱気流でマスターをしている師父と言う。今はレムリアの姿で失礼するよ。人の体を捨ててはいるが、頭の中では常に人間の肉体でどこまで高みに至れるか考えている。此度の戦場では地上だけではなく空中戦もこなしてみせよう」

「よくぞ来てくれました師父氏。天空攻略以来ですね、お元気でしたか?」

「お陰様での。アキカゼさんのお陰で乱気流のクランも随分と人が増えた。あの試練に参加できてワシらのクラン理念が良い方向に浸透したのはアキカゼさんのお陰じゃ。今日はその時の礼をさせてもらうつもりで来た」

「最後にくまの番くまね。くまは森のくまって言うくま。普段は悪い事をしているレッドネームをお仕置きしたり慈善事業に勤しむ心優しきくまだくま」

「その割にPK扱いされてるのはなんでだろうね?」

「見た目が怖いからですよ。子供に見せたら泣くから変えろと言ってるんですが変えやしないんです」

「くまー父ちゃんひどいくま。息子はかっこいいって言ってくれるくまよ?」

「言わせているの間違いじゃないか? お前の息子はまだ2歳だろう?」

「それを言われると弱いくま」


 森のくま君は仕草は可愛く反省していたが、興奮しているのか鼻息が荒かった。


「ところでみんなジョブは何を取った? 一応ランクも公開してもらえたら嬉しいね。まずは私から説明しよう。こう言うのは言い出しっぺから始めるものだからね。ちなみにプライベートな問題だから言いたくないなら言わなくて良いよ」

「俺っちは問題ないっす」

「僕も平気ですね。そもそもアトランティスでランクを公表しない方が迷惑おかけしますし、普通のことだと思ってました」

「無論、ワシも問題ない。切り札はともかくとして、やれることは事前に教えておいた方が事故は少なくて良いからの」

「くまもオッケーくま」

「僕の技術は白日の元に晒されてるので今更ですね」


 全員から許可をもらい、私は続ける。


「まず最初に私はアトランティス陣営でテイマーをしている。ランクはⅤ、枠は5で、使役しているエネミーは『シャドウ強化型/タワー』『ABヨルムンガンド』『ABヒュプノ』最後にテイムしなおした『ボール強化型/マジック』を扱っている。ABは古代獣に与えられる表記だ。イベント限定モンスターという定義だろうね。ABは召喚が非常に限定的で最大100秒しか出していられず、その度にABPというゲージを使う。回復にENは関係なく、自然回復でのみ回復される。そしてこれはあまり知られてない情報だが、古代獣ごとにABPがある。私はこれらを用いて今回ヤマタノオロチに挑むつもりだ」

「へぇ、テイマーのジョブについて知らないことばかりだったので勉強になるっす」

「これ、さらっと僕たちに教えてますけど結構機密じゃないですか? 古代獣は捕まえられ始めてますが、枠を圧迫するので複数所持は非効率的と言われてます。だから実際に複数持ってるアキカゼさんの情報ってなにものにも変えがたいはずですよ?」

「まぁそれはそれ。今回協力申請したのは私だし、事前に知ってくれていた方がタイミングも計りやすいでしょ? ここぞというときは指示出ししますけど、基本的には各自の判断に任せたいので」

「それは確かに。ご配慮感謝します。じゃあ続いて僕ですね。僕はアキカゼさんと同じくアトランティス陣営でメカニックに就いています。ランクはⅣ。四つのメカを操り、最近ジキンさんの発見してくれたミラージュとの併用での転身で新しい構想が思いつきました。僕に限らず、今回参加するムササビさんも合体勢です。パーツパーツを組み合わせて様々な状況に対応するメカとなっています。乗り物から銃器、ビームソードに変形したりはお手の物。5つ合わせてロボットに変形した事はヒーローショーで見聞きしている方もいるでしょう」

「へぇ、あれってアウル君の仕事だったんだ?」

「それと俺っちのメカが合体してっすね。俺っちも合体変形勢っすが、あくまで強化パーツという扱いっす。メカのパワーアップ要素くらいで単機単機が変形合体させるほど器用じゃないっす。俺っちは空さえ飛べればそれで良いんで!」

「あれってやっぱり難しいんだ?」

「アキカゼさんのところの秋風さん……紛らわしいので探偵風の人と呼ばせてもらいましょう。あの人のメカは芸術的ですね。細部細部のこだわりが普通じゃない」

「あの人は昔から凝り性だったからね」

「凝り性というレベルに収めて良い人じゃありませんよ。とにかくあのレベルの変形ほどではありませんが、僕の操るメカはあれを目指して設計されてます」


 探偵さんに密かにファンが出来ていたことにちょっとだけ嫉妬する。けどそれはあの人のロマンがその世代に影響を与えたということだからとても偉大なことだと思う。


「続いてワシじゃな。ワシはレムリア陣営に所属しておる。そしてジョブはブラスター。ランクはⅣじゃ」

「聞いたことのないジョブですね」

「レムリアでは一握りしか成れんからの。これはガンスリンガーとテレポーターをランクⅤまで上げたものに開かれるジョブよ。移動にはTPというゲージを使い、これはアキカゼさんの古代獣召喚と同じ様にENで回復できない特殊ゲージじゃ」

「ほう、TP……テレポーター……テレポートポイントですか?」

「そう思ってもらって構わんわい。ただこのTPじゃが、間に遮蔽物があっても直接相手にビームをワープさせて当てることもできる」

「やばいジョブじゃないですか!」

「ただし消費が激しくての。テレポートと併用してるとあっという間に枯渇してしまう燃費最悪の技じゃ。故に宙に浮くのはスキルで賄う。アキカゼさんの様にワープできるので囮くらいは引き受けるが、あまり多用は出来んのでそこばかりは気をつけとくれ」


 カッカッカと笑って元気さをアピールしているけど、レムリアの姿でアピールされても説得力が弱い。


「最後にくまくまね? くまはムー陣営に所属しているグラップラーくま。ランクはⅣくま」

「また知らないジョブが来たね。ジキンさん知ってた?」

「一応事前に聞きましたが、派生条件はずっと一人でいたことだそうです」

「寂しいですね。まぁ熊って群れるイメージないですけど」

「そうくま! 男は一人の力で成り上がるものだってとーちゃんも言ってたくま。だからくまも自分一人の力で頑張ってたくまよ」


 ふふんと胸を張るくま君。
 あまり背を逸らしすぎると転ぶよ?
 言わんこっちゃない。ドシンと尻餅を突いてしまった。
 そのままのそのそと起き上がって続きを話し出す。


「グラップラーの能力は部分的に体を巨大化できるくま。腕だけを大きくしてぶん回すことも可能クマよ! スキルも今までと同様使えるくま! ただ空は飛べないので拾って欲しいくま~」

 自己紹介とジョブ紹介は終わり、配信の許可をもらって私達はヤマタノオロチの領域内に赴いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重
SF
 真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。 「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」  これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。 「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」 「彼、クリアしちゃったんですよね……」  あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。

VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。 彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。 新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。 「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう! 「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」 そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。 一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。 主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。 ※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。 ※是非感想いただけると幸いです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~

虎柄トラ
SF
音ゲーが大好きな高校生の紫乃月拓斗はある日親友の山河聖陽からクローズドベータテストに当選したアーティファクト・オンラインを一緒にプレイしないかと誘われる。 始めはあまり乗り気じゃなかった拓斗だったがこのゲームに特典として音ゲーが付いてくると言われた拓斗はその音ゲーに釣られゲームを開始する。 思いのほかアーティファクト・オンラインに熱中した拓斗はその熱を持ったまま元々の目的であった音ゲーをプレイし始める。 それから三か月後が経過した頃、音ゲーを全クリした拓斗はアーティファクト・オンラインの正式サービスが開始した事を知る。 久々にアーティファクト・オンラインの世界に入った拓斗は自分自身が今まで何度も試しても出来なかった事がいとも簡単に出来る事に気づく、それは相手の攻撃をパリィする事。 拓斗は音ゲーを全クリした事で知らないうちにノーツを斬るようにパリィが出来るようになっていた。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞
SF
「お前もういらないから」  大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。  彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。 「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」 「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」  個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。 「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」  現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。  私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。  その力、思う存分見せつけてあげるわ!! VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。 つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。 嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

処理中です...