上 下
266 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

232.お爺ちゃん達とvsヨルムンガンド③

しおりを挟む

 発狂状態は程なくして終わったが、これを完全に回避し切るシェリル達は一体どれほど検証を積んだのだろう?
 彼女のことだから寝ずに検証をするくらい普通だろうからね。
 それでもまだ詰めれると確信が持てるのだからすごいとしか言いようがない。
 
 私達は現在「スワンプマン強化型/ホバー」に乗って爆走している。ただでさえヨルムンガンドが暴れ回って足場が捲れ上がっていて、地上は迷路みたいになっていた。

 ジキンさんはもう一度メカに転身する為にも命大事に状態なので、じゃあ機動力のあるホバーに捕まって移動しようかと言うことになってそうしている。

 タワーはビームに弱いのか、さっきの発狂の巻き添えで耐久を5割近く持って行かれていたので回収して自己回復させている。
 強化型でも足止めすらできないとかやばいよね。

 まあダメージは与えてるんだ。
 どうもビーム兵器の通りがいいみたいだね。
 特効武器は銀装備だったような気がするけど、ここにスズキさんが居たらどのような活躍をするだろうかと思い描く。
 軽く想像したら炬燵に入ってみかんの皮を剥く彼女の姿が浮かび上がって、苦笑する。
 出てくるたびに笑わせにくるのやめてもらえます?
 彼女は私の中ですっかりお笑い担当のような立ち位置になっていた。


【この絵面と来たら】
【お爺ちゃん達が楽しそうで何よりです】
【それ移動用の乗り物じゃねーから!】
【えっ?】
【あ、ちょまっ!】


 今までビームは上から来ていたが、発狂後は真横から来るらしい。
 風操作と重力操作を同時に使ってホバーを強制的に浮上!
 大縄跳びをするように、その場で一回、2回とビームの縄をやり過ごした。


【クッソ笑った】
【あれを回避しおったwww】
【ホバーってあんな動きできたっけ?】
【出来ねーよ! ホバーをなんだと思ってるんだ!】


 だいたいわかってきたぞ。
 あくまで行動にはパターンがあるのだ。
 一番最初の真上からレーザービームは様子見状態。
 きっと耐久がある程度回復したらあの状態に戻るのかもしれない。
 耐久が三割削れると一度発狂し、真横からビームが飛んでくるようになる。
 それが終わると尻尾での薙ぎ払いと丸呑み攻撃がくる。
 一通り終わると様子見状態に戻る。

 攻撃チャンスは耐久を回復してるであろう、様子見形態の時。
 実際それ以外では動き回るのもあって何処に頭があるのかわからない状態だ。


「ビームが横から来るときは逃げに徹して、上から来たらメカ呼んで」

「何か掴んだんですか?」

「多分だけど、このモンスターは一定のパターンで行動している。まるで動かないときは耐久を回復させてるんじゃないかと思う。だからあそこまでサンドバックになってたんだ」

「なるほど。発狂したのを見たからわかりますが、普段はそんなにおとなしくないですもんね、っと。耐久回復中は他の行動ができないと?」

「そう睨んでます」


 真横からくるビームを条件反射で大縄跳びを飛ぶようにジャンプ。
 これはホバーに乗ってるから対応できることであり、普通に歩いてたら対処不可能だと思う。

 モンスターそのものの大きさもあるけど、ビームの範囲も結構大きい。
 ジキンさんクラスの巨大ロボとタメを張る時点でそれはわかっていたことだけどさ。
 人間がどうにか出来る相手じゃないよ。
 そう思えば金狼君はよくぞこれに立ち向かえたなと思う。


【ビーム見てから回避余裕でしたー】
【当たり前のようにビーム避けてるのなんなん?】
【普通はあれで大体死ぬんだよな】
【ムーは巨大化するとビームの集中砲火喰らうんだぞ?】
【そりゃ(的がでかけりゃ)そうよ】
【古代獣君、ムーにだけ厳しすぎない?】
【これを当時プレイヤーのみだけで倒したってんだから大したもんだよ】
【そうなの?】
【記念すべきアキカゼさんの発掘イベントだぞ?】
【開催期間めちゃ短くて参加できなかった話をしてやろうか?】
【ほぼ身内で解決したんだよな】
【身内にそこそこ大きいクランのマスターが居たからな】
【羨ましい限りだよ】
【羨ましいってどっちが?】
【そりゃ、身内のクランがだよ!】
【あれを振られたのが小規模クランだったらきっと詰んでたぞ?】
【ほぼ丸投げだったしな】
【ノーヒントだぞ? 涙拭けよ状態。それでも立ち上がった精錬の騎士と漆黒の帝はすごいよ。拍手喝采】

 コメント欄では随分と懐かしい話をしているね。
 
 
「さて、動きも散漫になってきたね。そろそろかな?」


 ミ゛ョウン!
 真上からビームが飛んでくるのを合図に、ジキンさんがそこへ突っ込んだ。
 一度自殺しないと転身出来ないのはとても面倒だけど、生身でメカを操作できるメリットはでかい。
 精神体の場合、メカが大破するとアトランティスの格納庫に戻されてしまうからだ。
 しかしミラージュによる幽体離脱状態なら、肉体が復活するまで。肉体をその場に残さず、メカを操り、転送で送り返すと肉体が生えると言う裏技だ。


 が、ジキンさんのフォームはまた変わっていた。
 バットは持たず、グローブをつけている。
 どうもピッチャーの様だ。
 犬であることは変わらないんだけど、どうも野球のユニフォームのような衣装を身に纏っていた。
 本当、変なところに拘るんですから。


「バッターはもう良いんですか?」

「もう少し変則的に行こうかと思いまして。殴るよりビームの方が効くのなら、こっちかな、と」


 ジキンさんが振りかぶり、第一球!
 流れるようなフォームから繰り出されたのは、七つに分裂した揺れる球だった。
 それは本当に七つに分裂しているのか、7回のダメージを与え、チェインアタック扱いになっていた。
 えっぐ。エグい攻撃だなぁ。


【なんぞ! ボールが七つに分裂したwww】
【本当に分裂して7ヒットしてるのは草】
【チェインアタックまでついてるぞ】
【アキカゼさんの番ですよー】


 コメント欄もジキンさんへのツッコミが追いつかないのか、私に無茶振りを要求してくる。
 それに応えるようにジキンさんの肩へショートワープ。
 その直後にビーム攻撃。
 ジキンさんはグローブを構えてビームを受け止めていた。


「あ、それって電磁バリア?」

「ちょっと違いますね。これはビームを吸収してボールを作る魔法のグローブです。結構燃費いいんですよ」

【ビーム吸収するとかマ?】
【でもお高いんでしょう?】
【それは電装系全部死ぬ諸刃の刃だぞ】
【ビーム吸収できる代わりにビーム打てなくなるガラクタだ、騙されるな!】
【そんなにいいものじゃなかった!】

「良いものですよ。貯めたビームは手元でボール状になる。射出せずに投げる分には有効だっ!」

【くっそ正論で返ってきた】
【ビーム兵装捨ててまで野球にこだわるこの人はなんなの?】
【この世代はリアル優先だからしょうがない】

「草野球で鍛えた魔球を喰らえっ!」

【今度は炎がボールを包んで巨大化した!?】
【めちゃくちゃで草】
【この人も大概おかしいな!】
【今回アキカゼさんずっと大人しくない?】
【大人しくはないぞ。サブマスが暴れてるだけ】

「今回の目標は古代獣のテイムですからね。倒すのは二の次です。私は弱らせてテイムできるか何回か挑戦してますが、結果は芳しくないですね」

【古代獣ってテイム出来るの?】
【あれってエネミー限定じゃないんだ?】

「現状はエネミーが対象というだけで、説明文にはこうあります。敵対対象を使役すると。使役種族を使役するのは当たり前ですが、本来はエネミーだけではなく、こういった種族も含まれるんだと思うんですよ」

【それってただの言いがかりでしょ?】
【また無茶苦茶言い出したよ】
【言ったもん勝ちとか思ってそう】
【誰もやろうとしないから出来るかどうか試してるだけでしょ?】

「その通りだ。最終目標はファイべリオンのヤマタノオロチをテイムする事だからね。ここはその練習さ」

【未検証で練習って言い張る人がおるぞ】
【言い出したら聞かないからな】
【それで実績出してるんだから、誰も止められないでしょ】

「失敗しても諦めなければそのうちなんとかなる。私はそう思ってるよ?」

【アキカゼさん、がんばえー】
【誰だよ、今回アキカゼさんが大人しいとか言った奴】
【事後承諾の無茶振りの初戦でこんなところに連れてくる人が大人しいはずないんだよなぁ……】


 散々な言われようだけど、ジキンさんにも話してないからね。
 私は彼の暴れる舞台を用意してあげるだけ。
 結果は彼が勝手に出してくれるとそう踏んでいるよ。

 しかしこの古代獣……どうもエネミーと体質が似てるんだよね。まるでアトランティスと因縁がありそうな……そんな気がするんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成
SF
 黒髪ロングに紫色の瞳で個性もなく自己主張も少なく、本来ならば物語で取り上げられることもないモブキャラ程度の存在感しかない女の子。  登校時の出来事に教室を思わず飛び出した内気な小学4年生『夜空 星』はズル休みをしたその日に、街で不思議な男性からゲームのハードであるブレスレットを渡され、世界的に人気のVRMMOゲーム【FREEDOM】を始めることになる。  しかし、ゲーム開始したその日に謎の組織『シルバーウルフ』の陰謀によって、星はゲームの世界に閉じ込められてしまう。 凄腕のプレイヤー達に囲まれ、日々自分の力の無さに悶々としていた星が湖で伝説の聖剣『エクスカリバー』を手にしたことで、彼女を取り巻く状況が目まぐるしく変わっていく……。 ※感想など書いて頂ければ、モチベーションに繋がります!※ 表紙の画像はAIによって作りました。なので少しおかしい部分もあると思います。一応、主人公の女の子のイメージ像です!

サ終手前の元覇権ゲームを極めた俺、再ブームした世界で無双する。

ファンタジー
世界初! 圧倒的グラフィック! 高性能AIによる生きているかのようなNPC! 脳波を読みとるヘッドギアが織りなすリアルと遜色ない操作性! どう成長するかはプレイヤー次第の自由成長システム! キミを待つのはゲームじゃない。もう一つの世界だ。 な〜んて謳い文句で世界中のゲーマーを虜にし、大ヒットを記録したのは過去の栄光であり、過疎も過疎、運営すらも匙を投げたVRMMORPG【Another verse online】。 そんなゲームを共に遊ぶフレンドすら失ったにも関わらず、飽きずにソロで周回する毎日だった主人公。 大規模アップデートをする!と大々的に告知されてから丸2年。アプデに対して黙りこくっていた運営がとある発表をした日から、世界は大きく変わることとなる… カクヨム様でも投稿しています。

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game> それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。 そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!? 路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。 ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。 そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……? ------------------------------------- ※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。

【エッセイ】BL大賞に出たいと思って滑り込みエントリーしたはいいものの、大苦戦中の字書きの日常

はいじ@11/28 書籍発売!
エッセイ・ノンフィクション
はーーい! 字書きが1作品仕上げるまでのノンフィクションが始まりますよーー!(ぱんぱん!) アルファポリスの大会用の作品に今から取り掛かります(11月8日現在) 「全然進まねぇぇ」言ってる自分を客観視するための記録用ブログであり、むしろそういう字書きの日常の方が作品より面白いのではーーー!?と思い、ここを立ち上げました。 1日1回記録にくるかもしれませんし、無理かもしれない。 1記事5分以内で書くというルールの元、良く言えば臨場感たっぷり。悪く言えば雑で整えられていない「はいじ」のBL小説大賞までの日々を、どうぞご覧ください。

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった) 妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。 そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。 その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。 私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。 誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・

マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜

かむら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞にて、ジョブ・スキル賞受賞しました!】  身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。  そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。  これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。

魔法刑事たちの事件簿

アンジェロ岩井
SF
魔法が空想のものではなく、現実にあるものだと認められ、浸透していった2329年。日本共和国の首都ビッグ・トーキョー 郊外にある白籠市は地元を支配するヤクザ・刈谷阿里耶(かりたにありや)に支配され、町の人々は苦しめられていた。彼はタバコや酒等を自由自在に売り捌き、賄賂や脅迫で地元の警察官すら意のままに操っていた。 また、彼は逆らう人間には自身か部下の強力な魔法で次々と街から人を消していく。 そんな中ビッグ・トーキョーの連邦捜査局から一人の女性が派遣された。 彼女の名前は折原絵里子。警察庁の連邦捜査官であり、彼女は刈谷に負けないくらいの強力な魔法を有していたが、何せ暑苦しい正義感のために派遣された地元の警察官からは、疎まれていた。 そんな時に彼女は一人の若い警官と出会った。彼女は若い警官との出会いをキッカケに刈谷の逮捕へと走っていく。 そして、魔法による凶悪事件を防ぐために、日夜白籠市のアンタッチャブルは奔走して行く……。 お気に入り登録と感想を書いていただければ、作者はとても幸せな気分になります! もし、この作品を楽しんでいただけたのならば、どちらを。或いは両方をしていただければ、作者はとても幸せな気分になります!

処理中です...