上 下
252 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

220.お爺ちゃんと配信②

しおりを挟む
 私個人の準備は特に必要ないので、孫達が何を買い足すのか非常に興味をそそられながら買い物を見守る。


「マリン、それは何を買ってるの?」


 マリンが緑色の瓶を買い足していたので尋ねてみる。


「これ? LPポーション。私のスタイルはLPも消費するからすぐ危険域に入っちゃうんだ。そんな時によくお世話になってるの」

「ふぅん。私はお世話になった事ないなぁ」

【えっ】
【いや、流石にそれは……】
【普通に冒険してればLPゲージに気をつけるものでは?】

「私は紙装甲だからね。当たれば終わりなんだ。そもそも積極的に戦闘しないしね」

【ピーキーな生き様すぎる】
【そら(パッシヴ極なら)そうよ】
【戦闘以前の問題だった】
【まず攻撃できないからね】

「だから戦闘特化がどれぐらい戦えるか今からとても楽しみなんだ」

「えっ? 爺ちゃんて親父の戦闘見たことなかったっけ?」


 ニコニコしながらコメント蘭に語りかけていると、ここでずっとダンマリだったケンタ君が聞き捨てならないと口を開く。
 ジキンさんの家族と一緒にダンジョンアタックした時だよね?


「あるよ。でもあの時は別行動だったじゃない? それに金狼君も本気だとは言えなかった。こう、レムリアの民みたいに相対したら死ぬような緊張感はなかったよね?」

「そりゃ、親父にとってセカンドルナにダンジョンとか序盤すぎて本気を出すまでもねーけど」


 そこなのだ。
 私が見たいのは本気の戦闘である。
 別になぁなぁでもいいのだけど、私のジョブがどこまで通用するかを確かめてみたいんだよ。
 接待に興味はないんだ。


「お爺ちゃん、一応私も戦闘特化なんだけど?」


 知らなかったっけ? と不満そうにマリンが答える。


「そうだね。でも君は私の前だといい所を見せようとしすぎて変に緊張してしまうところがあるだろう? だからいつものようなカッコイイ姿だけじゃなく、そこそこピンチな状況に私がどれくらいサポート出来るかも必要だと思ってるんだ。それに余裕なダンジョンじゃ配信的にもつまらないしね」

「そっか」

「どちらにせよファイべリオンには最近到着したばかりなのでフルパーティじゃないと厳しいのは確かです。マリンちゃん、たまにはアキカゼさんに頼るのもありだよ?」

「うん。そうする」


 マリンはユーノ君に言いくるめられて素直に頷いた。
 流石相棒と名乗るだけある。
 普通の友達じゃここまで気遣えないもの。


「あ、あたしは今回記録係としてきてますので」

「記録係?」

「はい。お爺ちゃんが言ってました。どうせまた何か発見するだろうから、お前が記録しなさいって」

「えー、信用ないなー」

【仲間から信用されてなくて草】
【逆に言えば信用されてるんだよなぁ】
【これは名推理】
【だがフルパ推奨ダンジョンに戦力外宣言はきつくね?】
【普通ならキックされてもおかしくないけど……】

「しないよ。自分が一番足手纏いの自覚があるからね。それに探偵さんのメモには今まで世話になってる、逆に心強いと思うけどね」

【知ってた】
【アキカゼさんの前のパーティーも言うて戦闘特化居たか? って話】
【逆に丁度いいハンデかもしれん】
【テイマーだけで過剰戦力だしな】
【言えてる】

「それを調べるために来てるんだけどね。他に苦手分野の宣言がある人は居る?」

「ん。私も素材回収特化で戦闘は苦手」


 ルリが申し訳なさそうに手を挙げる。


「ルリちゃんは回避盾だからね。お爺ちゃんをさらに速度に特化させたタイプだよ」

「マリンちゃん、大袈裟」

「忍者みたいですよね、目で追うのがやっとです」

「照れる」


 ふむふむ。私とはまた違うパッシヴ寄りなのだろう。
 口数の少ないところと、無表情なところも忍者っぽい。


【アイエエエ、なんで、ニンジャなんで!?】
【ニンジャ殺すべし、慈悲はない】
【ニンジャプレイは毒殺が基本だからな。そりゃ火力ないわ】

「俺の獲物はツヴァイハンダーだ。みんなと違って威力こそあるが、モーションが遅いのが難点だ。隙も多いからダメージも受けやすい。なのでここぞと言う時は任せてくれ!」

【ツヴァイハンダーとかまたニッチな武器を】
【チビッコが扱うにはピーキー過ぎんか?】
【金狼の息子とは思えない浅慮さ】
【言うて金狼も脳筋だぞ? 魔法特化なだけで。あれは血筋だと思う】
【女の子の前でいいカッコしたがるのは男の子の特権】
【気持ちはわかる】
【がんばれー】


 最初こそはどこかダメ出しが多いコメントだったが、それでもデメリットを正直に話したりハキハキとしゃべる姿勢に応援するコメントも増えていた。
 真に受けたのか、ちょっと得意げになってるのは確かに血筋だね。すぐ調子に乗るのは金狼君よりもジキンさんの方に似てると思った。


「私は短剣デバッファー。手数と状態異常で戦場を撹乱するのが得意かな?」

【短剣ならそのスタイルが普通よね】
【なお、ワープも実装してるので実質アサシン】
【Wニンジャ編成とは恐れ入った】
【回避盾二枚とか事故る危険性多そう】

「そうならないためにもルリちゃんと打ち合わせしてるから平気だよ。前衛は私、後衛はルリちゃんが護ります」

【ポジション分けがしっかりしてるのなら安心】
【初見でここまで息ぴったりなのもすごいけどね】
【身内パーティーの強みはそこよね】
【謎の安心感】

「ん、マリンちゃんは攻撃担当。私は迎撃担当」

「心強いです。私は基本的にバッファーですが、中位魔法も扱います。選択魔法は火、水、風。詠唱中は無防備になるのでルリさん頼みになると思います」

「分かった。ユーノは私が守る」

「ケンタ君は私と一緒に攻撃だね」

「おう」

【なんやかんや噛み合ってるのがすごい】
【銀姫ちゃんコミュ強だからな】
【見習いたいわ】

「そうかなぁ? 私は普通だよ。なんだったらお爺ちゃんの方が色んな人とお話し合わせられるし」

【この祖父にしてこの孫あり】
【元凶はアキカゼさんだった!】
【アキカゼさん、お孫さんはこう言ってますが?】

「はっはっは。全くなんのことやら見当もつかないなぁ」

【安定のスルー能力】
【これ照れてるだけやぞ】
【偏屈者のAWO飛行部を言い負かした時点でコミュ強なのは確か】
【普通はあの圧に負けるもんな】


「それであたしはクランマスターの動向調査と」

「なんだか私だけ扱い違くない?」

【草】
【自業自得なんだよなぁ】
【アキカゼさん、もっと自覚して!】
【正直視聴者はそこら辺を楽しみに見てるんやで】

「こういうのは時の運もあるからね。まぁなるようになるさ」


 会話を打ち切り、目的のダンジョンに向かう。
 場所は深海回廊の奥にある海底ダンジョン。

 既に検証班の手垢まみれで新発見も特にないまま一行は順調に階層を降りていく。

 しかしB3で私は違和感を感じた。


「ここは随分と妖精が騒がしいね」

「ナビゲートフェアリーですか?」

「うん。私のは称号特典で最高のパフォーマンスを見せるからね。多分グレードによって見え方が違うんだろう」

【ナビゲートフェアリーって正直謎が多いよな】
【隠し通路の発見とかに便利やぞ】
【なお要求グレードは最低でもⅣ以上必須だが】
【購入にはランクも関わってくるからアキカゼさんのグレード仕入れるのに最低でもランクAA必須な件】


 へぇ、それは知らなかった。
 あとシグレ君、無言でメモ書き込まないで。
 その早速やらかしたなんて目で見るのはやめてよね。


「案外既存情報に反応しただけかもだけどね。少し探索してみようか。みんなはそのまま戦闘で。シグレ君は私と一緒に来るかい?」

「そうですね」

「重力操作は出来たよね? 風操作は私が制御する」

「0まで下げちゃう感じです?」

「うん、お願い」

「なんかちゃんと重力切れてるのか実感湧かないもんですね?」

「こういうのは慣れだからね」


 彼女にとっては初めての称号スキルの操作。
 しかし実感は湧かないのか戸惑いの方が多そうだ。
 風操作で浮き上がると、手足をバタバタさせてその場で慌てだす。うまい具合に浮き上がるまで少し時間がかかりそうだった。


【この子ちゃっかり五の試練超えてるのか】
【クラン特権エグくない?】
【あやかりたいわー】

「お爺ちゃん、私まだ持ってないよ?」

「私もまだです」

【銀姫ちゃん達可哀想】
【アキカゼさん、贔屓は良くないですよ?】

「これはうちのお爺ちゃんが独断でしでかした事です。例の機関車にあたしを乗せたかったらしく……マスターの意思とかじゃないですので責めないであげてください」

【把握】
【機関車の人ならやりかねない】
【まぁ身内だしな】
【自慢も兼ねて乗せるだろう】
【納得】
【俺だってロボ作ったら身内に自慢するしな】


 コメント欄に見守られながら探索は続く。
 配信用のカメラは私の方についてくるらしく、地上で戦闘をしているマリン達を写すことはなかった。
 そこはちょっと残念だけど、配信を通じてマリン達にも私の見る景色を拝ませることができるのでよしとする。


「少し暗いね。陽光操作を使うよ」

【うおっまぶしっ】
【うおっまぶしっ】
【うおっまぶしっ】
【うおっまぶしっ】
【うおっまぶしっ】
【うおっまぶしっ】

「大袈裟だね。でも嫌いじゃないよそういうの」


 ピカッと体を発光させて、恒例行事で騒ぐコメント欄にレスバしながらナビゲートフェアリーを明るくなった天井に向ける。
 天井付近では一段と妖精達が輝いている。
 それこそ目も眩むような眩しさだ。


「シグレ君。この上、何かあると思う。過去のデータではどう?」

「該当はありませんね。そもそも天井を調べようという発想があたし達にはないです」

【正論で草】
【ファイべリオン在中組はナビゲートフェアリーで探知できなかったの?】
【ランクAAクラスは大体ナインテイル辺りにいるだろ?】
【察し】
【単純に精度が悪くて感知しなかった系か】
【安心と信頼の探知能力やな】
【探知できても普通は天井まで登れないんだが】
【どっちみち無理ゲーやんけ!】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

いや、一応苦労してますけども。

GURA
ファンタジー
「ここどこ?」 仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。 気がつくと見知らぬ草原にポツリ。 レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。 オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!? しかも男キャラって...。 何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか? なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。 お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。 ※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。 ※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。

余暇人のVRMMO誌〜就活前にハマっていたマイナーゲームにログインしなくなって五年、久しぶりにインしたら伝説になってた〜

双葉 鳴|◉〻◉)
SF
向井明斗25歳。通院中、会社からかかってきた要件は、これ以上業務を休むならもう来なくていいと言う実質上の首切り宣言だった。 就職難で漸く拾ってくれた会社にそれこそ身を粉にして働き、その結果が通院処分。精神と肉体を磨耗した明斗は、通院帰りに立ち寄ったゲームショップで懐かしいタイトルを発見する。 「New Arkadia Frontier」 プレイヤーを楽しませる要素を徹底的に廃し、しかしながらその細かすぎるくらいのリアルさに一部のマニアが絶賛するクソゲー。 明斗もまたそのゲームの虜になった一人だった。 懐かしさにそのタイトルをレジに持っていこうとして立ち止まる。あれ、これって確かPCゲームじゃなかったっけ? と。 PCゲームは基本、公式ホームページからのダウンロード。パッケージ販売などしていない筈だ。 おかしいぞとパッケージを見返してみれば、そこに記されていたのはVR規格。 たった五年、ゲームから離れてるうちにあのゲームは自分でも知らない場所に羽ばたいてしまっていた。 そもそも、NAFは言わずと知れたクソゲーだ。 5年前ですらサービス終了をいつ迎えるのかとヒヤヒヤしていた覚えがある明斗。一体どんなマジックを使えばこのゲームが全世界に向けてネット配信され、多くのプレイヤーから賞賛を受けることになるのか? もはや仕事をクビになったことよりもそっちの方が気になり、明斗は当時のネーム『ムーンライト』でログインする事に。 そこでムーンライトは思いがけずそのゲームの根幹を築いたのが自分であることを知る。 そこで彼が見たものは一体なんなのか? ──これはニッチな需要を満たし続けた男が、知らず知らずのうちに大物から賞賛され、大成する物語である。 ※この作品には過度な俺TUEEEE、無双要素は設けておりません。 一見して不遇そうな主人公がニッチな要素で優遇されて、なんだかんだ美味い空気吸ってるだけのお話です。 なお、多少の鈍感要素を含む。 主人公含めて変人多めの日常風景をお楽しみください。 ※カクヨムさんで先行公開されてます。 NAF運営編完結につき毎日更新に変更。 序章:New Arkadia Frontierへようこそ【9.11〜9.30】19話 一章:NAF運営編【10.2〜10.23】23話 二章:未定 【お知らせ】 ※10/10予約分がミスで11/10になってたのを10/11に確認しましたので公開にしておきました。一話分飛んでしまって申し訳ありません。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

処理中です...