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3章 お爺ちゃんと古代の導き
198.お爺ちゃん達と[九の試練]①
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「結局あの人なんて言ってたんですか? 僕、気になります」
専用の飛空挺で九の試練へと移動中、スズキさんが私に尋ねてくる。
「ああ、彼はこのゲームの中心的人物。俗に言うゲームマスターではないかとカマをかけた」
「返事は?」
「その通りだと」
つい先ほどアトランティスの穏健派である彼とのやり取りのその内容。
私としてもまだ答えを出すのは早計だと思ったので、全ての鍵を手に入れてから答え合わせをしようと思った。スズキさんに憶測を語ると、探偵さんが話に食いついてくる。
「なるほど、なるほど。ではレムリアのアレはフレーバーだったと?」
「そうとも思えない。演技にしては焦りが見えた。こちらへの対応は上からだったが、得られた回答から察するに、顔合わせするつもりまではなかった気がする」
「では何故こちらの味方になってくれる措置を?」
「まだわからない。向こうの立ち位置が見えない状況だ。プレイヤーにとっての敵か、味方か。何もわからないと言うことだけがはっきりした」
「結局憶測だけで疑ってるんじゃないの。ではどうして答えを出さずに先へ行こうと思ったの? 君らしくない」
「単純な話。彼がもしゲームマスターという立ち位置だとして、役割がそれだけだと思います? 私は思わない。彼は舞台監督であり役者だと思っている。でなければプレイヤーに顔見せする理由がない」
「なるほど、理解した。確かにアレほどの対応を見せる上位NPCがただの案内役で終わるはずがない。お助けキャラにしては妙に胡散臭すぎるしね」
だよね。胡散臭いんだ、あのアトランティス人は。
アトランティス語を巧みに操り、上から目線でものを言っているが、彼がアトランティス人と言う保証はどこにもない。
自称なのだ。そしてこちらが尋ねてただ頷いただけ。
勘違いを逆手に取っているだけとも言える。
「それを言われたら七の試練にいたレムリア人も上位NPCだ。彼はアトランティスの過激派と協力体制をとっていた人物だと仮定する。しかし穏健派である彼の被害に遭わずに生き延びているのはどうしてだと思う?」
「遺跡にはエネミーが徘徊していた。つまり現在進行形で侵攻中だと?」
探偵さんの気付きに私は無言で頷いた。
「天空人がまだ何か隠していると言う可能性は?」
そこで相槌を打つようにジキンさんが入ってくる。
考察が迷宮入りする時にお茶を濁す話題を入れるのが彼なりの優しさなのかもしれない。
「それもあります。そもそもイベントを踏まなければレイド化する赤の禁忌という戦力がどっちの陣営なのかも気になりますし。それが元々のアトランティスの戦力だったのなら良いのですが……」
「ああ、確かにそうだ。もしアレが過激派のものじゃなく、穏健派のものだった場合、彼と敵対するとあの二匹と敵対することになるのか。それは厄介だ」
「耐久10億ですからね。それに背中にはプレイヤーが人質になってますし、味方であることを祈るしかないです」
「でも天空人って何も知らないよね。オババ様ぐらいじゃない? かろうじて知ってるの。ランダさんは何か聞いてたりしない?」
ここで話を第三者であるランダさんへと振る。
完全に油断していたのか、少し驚いた様子を見せながら話に参加してくる。
「アタシかい? 聞かないねぇ。単純にそっちの話に興味ないのもあるけど、オババ様の胃袋掴んでる感じはするからそれなりに聞いてみるよ。アキの方はどうだい?」
あらかた話し終えると、よくコンビを組んでる妻へと話が飛んでいく。
「私? うーん、どうかしら。そういった話題は聞かないわね。オババ様のような上位NPCと関わる機会がないもの。でも通常NPCから要望はいただくことが多いわ。服飾デザインの勉強にもなってるし、ありがたく吸収させてもらってるけど。昔話的な、あまり聞かないお話が聞けて参考にさせてもらってるわ」
それだ!
でも妻からそう言った話聞いたことないんだけど?
それを尋ねたら「だって聞かれなかったもの」だって。
確かに聞かなかったけど、教えてくれてもいいじゃない。
イジけていると更なる追い討ちをかけてくる。
「それにあなた、探索に夢中になってる時に余計な情報入れない方がいいでしょ?」
「あ……うん、むぅ」
彼女達を置いて探検三昧だった私は口を噤まさざるを得なかった。
探偵さんとジキンさんから同時に背中を叩かれ、スズキさんは死んだふりのままビチビチと体を跳ねさせた。
えーとスズキさん、試練にその状態でいくの?
いくら周囲からネタ枠扱いされてるからって流石に……そこまで考えて起きてても寝ててもこたつに座ってても突っ込みどころ満載だったなと思い出し敢えてスルーする方向で好きにさせた。
どうせ一発クリアなんて出来ないんだ。
最初は情報収集で。それまでは試行錯誤を繰り返す。
クリア後は手に入れた情報を持って答え合わせ。
その上で試練を進めるかどうかを考えればいいと考えた。
九の試練は事前に情報が開示されている。
試練の場所は暗黒が広がっており、その中が試練の場所だと言われているからだ。
その場所にエネミー反応はなく、ただ自分がどうなっているかが一切わからない闇が映り込んでいる。
取れる行動は事前にとって進もうと声をかけた。
「九の試練は漆黒だ。みんな、足場がないから気をつけて。私は妻とランダさんに『移送』をかけるから、各自風操作で対応お願い!」
「はーい。ついでに陽光操作★も使っておきますね」
「頼むよ」
明るい声とは裏腹に、ぼんやりと光る仮死状態のスズキさんは軽くホラー演出じみていた。
それを見た妻が「きゃっ」と私に抱きついてきたほどだ。
ナイスですと心の中でサムズアップさせつつも、妙に明滅させてるのが気になる
「スズキ君、わざとでしょ?」
探偵さんが苦笑しながら尋ねる。
スズキさんは死んだ目をしながら淡々と語るが、元気だったらきっと口角が上がっていたことだろう。
子供心持ちすぎじゃないですか、この人?
旦那さんが気の毒で仕方がない。
彼女が母親になる家庭はどんな景色を見せてくれるのか、想像して引き攣った笑みを浮かべてしまう。
ゲームだからこそできるハッチャケ具合というのもあるけど、ハッチャケすぎじゃないですかね?
「バレました? でも皆さん僕にそう言う役割望んでたでしょ?」
「誰も望んでないって」
「えー。うっそだー」
ケラケラと笑いながら、私たちの中の緊張感を和らげてくれる。
本当はこんな周囲どころか足元も見えない暗闇の中、発狂したっておかしくないのに。
だから彼女が体を張って場を緩ませてくれるのはありがたかった。
数分、闇の中を進んだ先、何か妙な匂いがしますと番犬がわんわんと吠えた。
それを合図に恐怖を煽るように明滅し出すスズキさん。
ぼやぁ、と浮かんでスッと消える演出に磨きをかけてるんじゃないよ。
恐怖演出にますます磨きがかかってるじゃないの。
ここにくるまで音もしなければ匂いもなかったのに急に匂いがすれば嫌な予感しかしませんもんね。
「匂い、ですか?」
「ええ、ドブのような、それでいて甘酸っぱい。それと何かキィキィと音も聞こえてきますね」
「不吉ですね」
「ここに来てホラー要素ですか? やめてくださいよ」
「ホラーは身内からので間に合ってますよ」
その言葉で全員が苦笑する。
スズキさんの顔がボヤァと浮かび上がったからだ。
女性陣なんかは何回もやられたものだから、お腹を押さえて笑っていたよ。
カラクリさえわかれば腹筋の試練にしかならないからね。
そのあと何かを訴えるように口をパクパクさせて、結局何も言わずにスッと消えた。
それに探偵さんとジキンさんが吹き出してしまったのだ。
せっかくのサブマスターの思わせぶりな発見も彼女のせいで水の泡だ。でも変に緊張し過ぎるよりは、有り難かった。
思考が上手く回らないと考察も捗らないからね。
──このあと闇の中であんなものを見るとは知らずに、私達は緩い気持ちのまま、闇の奥へと進んでしまった。
専用の飛空挺で九の試練へと移動中、スズキさんが私に尋ねてくる。
「ああ、彼はこのゲームの中心的人物。俗に言うゲームマスターではないかとカマをかけた」
「返事は?」
「その通りだと」
つい先ほどアトランティスの穏健派である彼とのやり取りのその内容。
私としてもまだ答えを出すのは早計だと思ったので、全ての鍵を手に入れてから答え合わせをしようと思った。スズキさんに憶測を語ると、探偵さんが話に食いついてくる。
「なるほど、なるほど。ではレムリアのアレはフレーバーだったと?」
「そうとも思えない。演技にしては焦りが見えた。こちらへの対応は上からだったが、得られた回答から察するに、顔合わせするつもりまではなかった気がする」
「では何故こちらの味方になってくれる措置を?」
「まだわからない。向こうの立ち位置が見えない状況だ。プレイヤーにとっての敵か、味方か。何もわからないと言うことだけがはっきりした」
「結局憶測だけで疑ってるんじゃないの。ではどうして答えを出さずに先へ行こうと思ったの? 君らしくない」
「単純な話。彼がもしゲームマスターという立ち位置だとして、役割がそれだけだと思います? 私は思わない。彼は舞台監督であり役者だと思っている。でなければプレイヤーに顔見せする理由がない」
「なるほど、理解した。確かにアレほどの対応を見せる上位NPCがただの案内役で終わるはずがない。お助けキャラにしては妙に胡散臭すぎるしね」
だよね。胡散臭いんだ、あのアトランティス人は。
アトランティス語を巧みに操り、上から目線でものを言っているが、彼がアトランティス人と言う保証はどこにもない。
自称なのだ。そしてこちらが尋ねてただ頷いただけ。
勘違いを逆手に取っているだけとも言える。
「それを言われたら七の試練にいたレムリア人も上位NPCだ。彼はアトランティスの過激派と協力体制をとっていた人物だと仮定する。しかし穏健派である彼の被害に遭わずに生き延びているのはどうしてだと思う?」
「遺跡にはエネミーが徘徊していた。つまり現在進行形で侵攻中だと?」
探偵さんの気付きに私は無言で頷いた。
「天空人がまだ何か隠していると言う可能性は?」
そこで相槌を打つようにジキンさんが入ってくる。
考察が迷宮入りする時にお茶を濁す話題を入れるのが彼なりの優しさなのかもしれない。
「それもあります。そもそもイベントを踏まなければレイド化する赤の禁忌という戦力がどっちの陣営なのかも気になりますし。それが元々のアトランティスの戦力だったのなら良いのですが……」
「ああ、確かにそうだ。もしアレが過激派のものじゃなく、穏健派のものだった場合、彼と敵対するとあの二匹と敵対することになるのか。それは厄介だ」
「耐久10億ですからね。それに背中にはプレイヤーが人質になってますし、味方であることを祈るしかないです」
「でも天空人って何も知らないよね。オババ様ぐらいじゃない? かろうじて知ってるの。ランダさんは何か聞いてたりしない?」
ここで話を第三者であるランダさんへと振る。
完全に油断していたのか、少し驚いた様子を見せながら話に参加してくる。
「アタシかい? 聞かないねぇ。単純にそっちの話に興味ないのもあるけど、オババ様の胃袋掴んでる感じはするからそれなりに聞いてみるよ。アキの方はどうだい?」
あらかた話し終えると、よくコンビを組んでる妻へと話が飛んでいく。
「私? うーん、どうかしら。そういった話題は聞かないわね。オババ様のような上位NPCと関わる機会がないもの。でも通常NPCから要望はいただくことが多いわ。服飾デザインの勉強にもなってるし、ありがたく吸収させてもらってるけど。昔話的な、あまり聞かないお話が聞けて参考にさせてもらってるわ」
それだ!
でも妻からそう言った話聞いたことないんだけど?
それを尋ねたら「だって聞かれなかったもの」だって。
確かに聞かなかったけど、教えてくれてもいいじゃない。
イジけていると更なる追い討ちをかけてくる。
「それにあなた、探索に夢中になってる時に余計な情報入れない方がいいでしょ?」
「あ……うん、むぅ」
彼女達を置いて探検三昧だった私は口を噤まさざるを得なかった。
探偵さんとジキンさんから同時に背中を叩かれ、スズキさんは死んだふりのままビチビチと体を跳ねさせた。
えーとスズキさん、試練にその状態でいくの?
いくら周囲からネタ枠扱いされてるからって流石に……そこまで考えて起きてても寝ててもこたつに座ってても突っ込みどころ満載だったなと思い出し敢えてスルーする方向で好きにさせた。
どうせ一発クリアなんて出来ないんだ。
最初は情報収集で。それまでは試行錯誤を繰り返す。
クリア後は手に入れた情報を持って答え合わせ。
その上で試練を進めるかどうかを考えればいいと考えた。
九の試練は事前に情報が開示されている。
試練の場所は暗黒が広がっており、その中が試練の場所だと言われているからだ。
その場所にエネミー反応はなく、ただ自分がどうなっているかが一切わからない闇が映り込んでいる。
取れる行動は事前にとって進もうと声をかけた。
「九の試練は漆黒だ。みんな、足場がないから気をつけて。私は妻とランダさんに『移送』をかけるから、各自風操作で対応お願い!」
「はーい。ついでに陽光操作★も使っておきますね」
「頼むよ」
明るい声とは裏腹に、ぼんやりと光る仮死状態のスズキさんは軽くホラー演出じみていた。
それを見た妻が「きゃっ」と私に抱きついてきたほどだ。
ナイスですと心の中でサムズアップさせつつも、妙に明滅させてるのが気になる
「スズキ君、わざとでしょ?」
探偵さんが苦笑しながら尋ねる。
スズキさんは死んだ目をしながら淡々と語るが、元気だったらきっと口角が上がっていたことだろう。
子供心持ちすぎじゃないですか、この人?
旦那さんが気の毒で仕方がない。
彼女が母親になる家庭はどんな景色を見せてくれるのか、想像して引き攣った笑みを浮かべてしまう。
ゲームだからこそできるハッチャケ具合というのもあるけど、ハッチャケすぎじゃないですかね?
「バレました? でも皆さん僕にそう言う役割望んでたでしょ?」
「誰も望んでないって」
「えー。うっそだー」
ケラケラと笑いながら、私たちの中の緊張感を和らげてくれる。
本当はこんな周囲どころか足元も見えない暗闇の中、発狂したっておかしくないのに。
だから彼女が体を張って場を緩ませてくれるのはありがたかった。
数分、闇の中を進んだ先、何か妙な匂いがしますと番犬がわんわんと吠えた。
それを合図に恐怖を煽るように明滅し出すスズキさん。
ぼやぁ、と浮かんでスッと消える演出に磨きをかけてるんじゃないよ。
恐怖演出にますます磨きがかかってるじゃないの。
ここにくるまで音もしなければ匂いもなかったのに急に匂いがすれば嫌な予感しかしませんもんね。
「匂い、ですか?」
「ええ、ドブのような、それでいて甘酸っぱい。それと何かキィキィと音も聞こえてきますね」
「不吉ですね」
「ここに来てホラー要素ですか? やめてくださいよ」
「ホラーは身内からので間に合ってますよ」
その言葉で全員が苦笑する。
スズキさんの顔がボヤァと浮かび上がったからだ。
女性陣なんかは何回もやられたものだから、お腹を押さえて笑っていたよ。
カラクリさえわかれば腹筋の試練にしかならないからね。
そのあと何かを訴えるように口をパクパクさせて、結局何も言わずにスッと消えた。
それに探偵さんとジキンさんが吹き出してしまったのだ。
せっかくのサブマスターの思わせぶりな発見も彼女のせいで水の泡だ。でも変に緊張し過ぎるよりは、有り難かった。
思考が上手く回らないと考察も捗らないからね。
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