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3章 お爺ちゃんと古代の導き

186.お爺ちゃんの地下ルート散歩①

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 ひさしぶりにどざえもんさんと会って、色々お話しする機会を得たので、さわりだけ私は地下ルートを体験する事になった。
 案内役はどざえもんさん本人だ。
 専用の防護服を纏い、程よく吸水する事が義務付けられる。
 場所はセカンドルナとサードウィルを隔てるように囲む山の一つ。火山口を降りて行き、マグマの流れる横穴に妖精の隠れ里があると言う。
 そこは発見者以外いけないし、天空ルートの契約者は見つけられない仕組みらしい。仲が悪いんだろうか?
 それとも別の理由があるのか?
 どちらでもいいか。そう言うものだと思えば諦めがつく。

 彼曰く、天空ルートは試練と称されているのに対し地下ルートは契りとして契約を前提に進むらしい。
 地下に住む種族は龍神族で、地脈石という空導石の地下版にタッチしてから赴かないとエネミーとして排除されるとこぼしていた。
 そういう意味ではいきなり攻撃されないだけ天空ルートはマシだったか。そもそも赤の禁忌は今でこそ乗り物だったけど、昔は普通にヘイト稼ぐと攻撃してくるボスだったよなと思い出す。
 そう考えれば難易度はどっこいどっこいなのかもしれない。


「ここが地脈石だ」


 どざえもんさんが指し示したのはマグマの海から映える巨大な石の塊だった。
 中央は窪んでおり、炭化したマグマが脈のように張り付いている。赤々としたマグマの熱気で脈打つように光っていた。

 ちなみにこの場所まで橋をかけて安全にたどり着けているが、シェリルが参加するまで、マグマの海しかないと言うのだからその難易度の高さが窺えるだろう。
 よくこんな場所の開拓したよねと褒めたら苦笑された。
 どざえもんさんにとっては天空ルートの方が足場がなくて大変だろうと言われた。確かにあそこは足場がないんだよね。
 苦労したと言われたら苦労はしたけど、大前提が雲の上に乗れることと空を飛べる事だったもんなぁ。
 
 それに比べてこっちは耐熱を鍛えればなんとかなるんだとドワーフスマイルを寄越してくれるどざえもんさん。

 正直に言えば熱の耐性持ってる種族でも耐えられないでしょ、これ。そう思う私は正常だ。
 ちなみに水操作★と氷作成はやるだけ無駄だった。
 焼け石に水という言葉通り無駄にAPを消費するだけだった。


「なんとも幻想的だ。記念に写真を一ついいかな?」

「構わないが、フレーバー含めて表に情報は出てるぞ?」

「ええ、それはどうだっていいんです」

「?」


 どざえもんさんにはわからないかな?
 蓄積してきたフレーバーの数によってルートが分岐すると。
 そして案の定、ナビゲートフェアリーが反応する。
 丁度地脈石を加工用に取り巻き、あまり地脈石に触れないようにしていた。
 空導石の方は契約を取り付けたので安定してるが、もしかしてこっちはイベントを進めてないのだろうか?
 ちょっと聞いてみようか。


「どざえもんさん、この地の妖精と地脈石の定期的な契約をしましたか?」

「いや。天空と違って地脈石は安定してるからな。龍神族が統治していた地域だし、シェリルさんの呼びかけで多くのプレイヤーが入ってきた。だがアキカゼさんはこいつを見て違和感があると言うんだな?」

「そうですねぇ。けど気のせいかもしれないし」

「いや、実際のところ地脈石の力は弱まりつつあるんだ。龍神族の巫女は祈祷を頑張ってくれてるが、一向に回復の兆しを見せないと困り果てている」

「ああ、天空でも同じことあったんですよ」

「じゃああのワールドアナウンスはやはり?」

「はい」

「それに妖精が関係あると?」

「私の時はそうでした。それに地脈石周辺のナビゲートフェアリーの動きが変なんですよね」

「変?」


 私の言葉に流されて、起動したナビゲートフェアリーを見てどざえもんさんも目を丸くした。


「なんだこりゃ! 地脈石に妖精が居着いて無いじゃないか!」

「あ、やっぱりそうなんですね」


 通りで地脈石の力が弱まるわけだよとどざえもんさんは天を仰いだ。
 てっきりこれが普通の状態だと思っていたが、彼の反応を見る限り違う様だ。


「と、俺は早速妖精のところに行ってくるが、アキカゼさんはどうする?」

「そこら辺を探検してるよ」

「調べ尽くしたから新しい発見はないと思うが、だからといって指を咥えて黙ってる性分じゃないか」

「そう言うこと」


 どざえもんと分かれて一人地脈石の周囲を眺める。
 重力操作★で防護服込みの重力を0にし、風操作で浮き上がる。


「て、うわっ!」


 マグマから湧き立つ熱気で上昇気流が発生している。
 勢い余って背中を打ちつけそうになったよ。
 重力操作★で体重を気持ち増やしつつ、私は前進した。

 まずは地脈石の裏側をパシャリ。
 側面をパシャリ。
 天井をパシャリ……ん?

 天井に奇妙な亀裂があった。
 指でその場所に触れようとすると、突如吹き出した風と共に私の体は地脈石へと叩きつけられてしまう。
 私がマグマの海から這い出して、地脈石の近くの端に縋り付くと、別にそこは何事もなかったように元通りになっている。

 
「いったいなんなんだ? あの亀裂は」


 調べ尽くしてたんじゃないの? 内心で愚痴りながら酷い目に遭ったよと嘆息する。

 実際に触れないなら仕方ない。取り出したりまするはレムリアの器。水操作★を乗せて亀裂に向かって何発か打ち込んでみる。
 だが特に何も起こらず、じゃあ氷作成で内側に氷を作ったら変化が起きた。

 ブシュウウウ!!
 まるでガスでも発生したかのように、亀裂から吹き出した気体にマグマが引火する。続いてドォン! という爆発音が亀裂の向こう側からした。

 音は次第に近づいて、耳を塞ごうと両手に耳を置いたときに空間が凍りつき、そしてハンマーで砕け散るように景色が入れ替わった。


「エネミー反応? なんでこんなところで!?」


 今の私は観光気分。まさかこんなところで戦闘に巻き込まれるとは思わず慌てて周囲を見回した。

 視線の先にはどざえもんさんとやたら光ってる妖精を目視。
 そう言えばミーもこんな風によく見えない造形だったなと思い出す。声も直接脳内に聞こえてくる仕様で言語チャンネルが合わずで翻訳ができないのだ。
 それよりも丁度よかった。


「凄い音したけど何かしたのか? 調べ尽くした筈だったんだがな」

「丁度地脈石の真上に亀裂があるでしょう?」

「ああ、あるな。でもあれはただのそれっぽい窪みだろう?」

「あの穴に水いっぱい入れて凍らせたら突然爆発したんです」

「何やってんだ? 本当に何やってるんだ、あんた!?」


 普通気になったからって穴に水を入れたり凍らせたりなんてしないぞ!? と呆れた言葉を頂いた。出来ることからやっただけですよ。私は一般的な攻撃手段を持ちませんから。
 威張れる事じゃありませんが。


「爆発の原因はわからんが、さっき戦闘フィールドに入ったのはなんだ?」

「それがよくわからないんですよ。爆発がこっちに近づいてきたと思ったらエネミー反応があったんですが、姿が見えずで」

「姿が見えない……妖精か?」

「どうもそれっぽいですね。あの穴に迷い込んで迷子になってたんでしょうか?」

「そんな場所に迷い込んだ妖精もバカだが、どこかの誰かさんもバカな真似をしたものだ」


 どざえもんさんは私が一方的に決め付けてるが、解せない。 
 私はただ興味が向いた方に全力で取り組んで居るだけだよ。


「妖精を連れてきて正解だな。俺の相棒は敵の姿が見えてるようだ」

「それでは相手が何を求めてるか交渉と行きますか」

「だな」
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