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3章 お爺ちゃんと古代の導き

148.お爺ちゃん達と[四の試練]④

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 四の試練に赴き、私達はボートを二台用意して連結させて足場を強固にしながら水操作で少しづつ前進した。
 各自で空を飛んだり浮いたりした方が良いのだろうけど、コスト的な意味合いでは移動で一人、トラップ対応に三人に動いてもらった方がお得なのだ。

 ジキンさんは借りパクした探偵七つ道具のおもちゃの銃を右腰に装備し、反対側には弾丸替わりの巻き物を装備している。戦闘ではなくトラップ対処なのにこの人ったらそんな銃で何するつもりなんだろう。そう言えば、ここに来る時にオクト君のところで何か買い込んでいたみたいだけど。


「さて、少年、そろそろ氷の壁だ。水操作の勢を弱めてくれ」

「分かりました」

「壁を落とすのは僕の水操作で行いますね」

「なら氷が張り直さないように囲うのは僕がやろう!」


 私がボートを停止する様に水操作の速度を緩めると、スズキさんが氷の床を一旦割って下へ次々と氷の壁を落としていく。
 再度貼り直す氷の壁に先立って、探偵さんの操る水操作がボート二台分の通路を確保した。
 これぞ連携プレイと言うやつですね。
 危なげなく渡りきり、スズキさんと探偵さんが再びフリーになる。

 次のトラップは氷でできた鎌が交差する場所。当たれば勿論ダメージは免れないが、それ以前にその勢いにぶつかればコントロールを失ってしまうだろう。
 

「前回はすんなり渡れたんですか?」

「すんなりではないですね」

「ミラージュ鬼ごっこですよ。残機減らしながらダッシュです」

「うわぁ」


 無茶苦茶やるな、この人達。でもそれってつまり当たったら即死って事ですね? ほんと仕掛けがえぐいなぁ。


「それよりあの氷の鎌、何を力点にして交差してるんでしょう?」


 そこでジキンさんが別の論点を上げた。


「あ、そう言えばそうですね。渡ることに精一杯すぎて忘れてました」

「さっきの氷の壁だって、きっと正しい方法じゃなかったはずです。もしかしたら上の方にも氷の天井があるかもしれませんよ?」


 それは確かに、と思う。


「じゃあ確かめてみますか!」


 スズキさんが真上に向けて水操作を放ち、しばらくするとカシャン! と音がして交差していた鎌が仕掛けごと落下した。
 ついでに床も抜けてトラップは地上に落ちていく。あーあ。
 大丈夫だよね? 下に街とかないよね? 


「ビンゴですね。さ、マスター前進ですよ」

「はいはい。前進しますよー」


 第二の関門もジキンさんの思いつきですんなり進行。
 もしかしなくても、一見屈強な作りのトラップでも、床同様に支えてる起点は弱いものだったりするのだろうか?
 そんなふうに考える私達の前に現れたトラップは狭い通路に、氷の丸のこが縦横無尽に走るものだった。
 さて、ここはどう進むのかと思えばジキンさんが勝手に号令を出す。


「はい、足場破壊」

「えいや!」


 阿吽の呼吸でスズキさんが水操作で床を割る。
 パキン、と弱々しい音を立ててトラップが土台ごと真下に落下していく。あーあ。ズルイんだ。絶対これ制作者今頃青筋たててますよ。
 しーらない。とどこ吹く風で前進。
 しかしそんなズルは通じないぞと次の仕掛けは意思を持っていた。

 氷のゴーレムと言ってしまえばいいのか、それらは個を認識して左右の壁を自由に移動する。残念なことに上の天井を壊そうにも分厚い氷の壁が邪魔をして簡単に割ることは出来そうにない。


「困りましたね」

「天井吊り下げ式なのは分かってるんですか、肝心なことに床にはくっついてないんですよねー」

「じゃあ水操作でくっつけたらどうかな?」

「それって水のゴーレムが床にまで来ません? 移動範囲増やしてどうすんですか!」

「いや、どうだろう。ゴーレムって重いよね? 床に乗ったら流石に床は抜けないだろうか?」

「そうですね、じゃあやってみましょう。えいっ」


 だからスズキさん、早いって!
 こっちがまだ決定する前に動かないで!

 スズキさんの放った水操作が氷の壁に触れると、徐々に触れた場所から凍っていく。そして氷のゴーレム真っ直ぐにこちらに向かってきて、三体床に乗ったところで床が崩れ落ちた。
 目の前には本来もっと苦戦するはずだった氷のエリアにゴーレム不在の行き止まりもある普通の通路が残るばかりである。
 

「あっぶな、これ、ゴーレム落ちてなかったら私達残機減らしてましたよ?」

「成功してよかったですね!」

「成功したからよかったものの、スズキ君はもっと慎重に動こうよ?」

「てへぺろー」

「魚人のテヘペロ初めて見たけどなかなか様になってるね。練習した?」

「はい!」


 探偵さんの質問にスズキさんはハキハキ答える。
 仲がいいね、君たち。こっちはいまだにドキドキしてると言うのに。


「これ、案外ゴリ押しで進めるんじゃないですかね?」

「だったらいいんですが、少し休憩入れながら進みましょうか」

「ですね。次に進む前にランチにしましょう」

「もう夕方ですけど?」


 そうだった。時間的ロスは少ないとは言え、寄り道してるからね。そそくさと調理アイテムを消費して私達は進む。
 結局人間は目の前の事がより脅威と思うかどうかで逃げる事を優先する事をその日学ぶことになる。

 目の前には下り坂。坂のてっぺんにはボール状の氷塊がエントリーしており、それが自重で坂を転がり落ちて私たちに迫った時、やっぱりその場から逃げ出す事を選択してしまった。

 で、見事氷塊に押しつぶされてボート毎落ちた。

 落ちた場所が丁度街だったから良かったものの、あの場所はボートをしててでも残機を減らして行くべきだったと反省した。

 うん、まあ人は予測できない事が目の前には現れると冷静で居られなくなると言ういい教材だな。


 ◇


 翌日、再度挑戦しようと足を向ける私達の前にはやり切った顔の師父氏が居た。みやれば四の試練クリア者に師父氏と門下生の名が連ねられていた。
 
 初めて同じタイミングで競って出し抜かれた瞬間だった。
 勝ち負けではないけど、やっぱり悔しいなぁ。
 
 でも、同時に誘って良かったと思う。
 私達なんかに負けっぱなしじゃ誘った意味がないもの。


「次は僕達の名前をそこに刻めばいいんですよ」

「ええ。次こそはクリアしてみせますよ!」


 同じ思いを抱いたのか、私の肩を叩きながらジキンさんがワンワンと吠える。探偵さんもスズキさんもやる気を漲らせていた。
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