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3章 お爺ちゃんと古代の導き

142.お爺ちゃん達と[四の試練]②

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 少し進んだところで向こう側から連絡が来た。


「少年、こちらはここから先、氷の塊が壁の様に積まれていて前に進むことができない」


 そんな連絡だ。
 私はジキンさんと顔を見合わせて肩を竦める。


「こっちには何もありませんよね?」

「はい」


 氷の下から見る世界は、天井に氷の薄い面が見えるだけである。そこでジキンさんから提案が上がる。


「もし何かに反応して割れるのであれば、その足元を崩せば後はその氷も下に落ちて行くんじゃないですか? こっちからみた風景だと、何にもないですし」

「ふむ、それもそうか。スズキ君、氷と氷の間に水操作で水を染み込ませ、足場に氷を囃してくれないか?」

「はーい」

 
 スズキさんの軽ーい返事の後、こちら側の天井に異変があった。水操作で操った水が氷の天井から漏れ出て、そして足場が砕け散り、氷の塊が私たちの目の前をすごい勢いで落下していった。


「びっくりした。まさかこんなにいっぱい降ってくるとは!」

「だから避けてた方がいいんじゃないですかって言ったじゃないですか」


 聞いてないですよ? 
 本人は目視で示したでしょうと肩を竦めてため息ひとつ。
 ちゃっかり安全圏に避難してたジキンさん。
 野次馬の如く前に出てた貴方が悪いんですよと嗜めて来た。
 少しの間言い争いをしましたが、上の方で進展があった様で中断。
 
 上のルートは基本的に砕ける足場を利用して進め前提の難易度である様だ。砕ける足場と同様に、通行を阻む壁も時間経過と共に張り巡らせられる様だ。そこで探偵さんは門を象るようにして水操作をその場に置く。それが功を奏して突破出来るようだった。

 正解ルートの道を切り開けとはそう言うことか。
 今回はみそっかすの気分だけかと思ったが、意外とこちらでも知れる情報が多いと知る。




 ただ迷宮と言うだけありここからが本格的にトラップが探偵さんを追い詰めて行った。
 それをどこか外野で見守るように私達は応援している。

 特殊スキルのミラージュの出番が早速来たと身体を張り合って一進一退を繰り返していたようですが、探偵さんとスズキさんはあと頼みますねと言ってLPを全損。強制ログアウトしてしまったようです。


「ここからどうしますか?」

「見える範囲でトラップの解明をしていきましょう。はっきりと見えないとは言え、形として目に収めるだけでも次にきたとき対応できますし」

「ですね」


 ポジティブ思考のジキンさんに言われ、それもそうだなと観察していく。途中で浮いたまま食事などを行い、APとSPを回復させ、探検を続けていく。
 そして……ポーン、と頭の中にどこかで聞いたことのある電子音が鳴り響いた。


 <四の試練をクリアしました>


「えぇ……」

「これは予想外でしたね」


 まさに棚からぼたもちと言ったところか。まさか上のルートが全部まやかしだなんて誰が思うだろうか。
 せっかく探偵さんとスズキさんが頑張ってくれてたのに。


 <称号:真偽の支配者>

 特殊スキル:フェイク★
 自分とそっくりに動く分身体を任意に置くことができる。
 一日3回まで。


「これ、ヘイト的なものまで持ってくれるんでしょうか?」


 ジキンさんが訝しみながら訪ねてくる。


「だと良いですね。どちらにせよ、暗号の入手がまだです。それが上のルートにある限り、どちらにせよ使っていくしかありません。その時は頼みましたよ?」
 
「はいはい。面倒ごとは全部僕に回ってくるんだから」

「失礼な。手持ち無沙汰にしてたから役割を割り振ってあげたんですよ?」

「物は言いようですね。でも、ここってエネミー現れた感じしなかったですねー」

「エネミーよりエグいトラップが待ち受けてる感じじゃないですか?」

「確かにそれはありそうだ」


 そのあと、AP切れで仕方なく地上に降りる事に。
 なーに、慣れたものだよ。街にさえ着けば噴水で登録してワープでき……



 降りた場所は木々が鬱蒼と生茂るジャングルだった。
 ここどこぉ?

 這いずり回るエネミーがどれもみたことのない形をしている。


「ここは撤退した方がよさそうですね」

「流石にシャドウの獣型は厄介です。確かこいつらENとか吸ってくるんですよ?」

「私が一番出逢いたくない相手じゃないですか!」

「だから逃げるんですよ!」


 もちろん、多勢に無勢であっという間に追い込まれ、私とジキンさんは強制ログアウトした。

 すぐにログインし直すとそこでは探偵さんとスズキさんがニコニコしながら待っていた。若干目が怖いけどきっと気のせいだろう。
 

「やぁ、少年。称号獲得おめでとう」

「まさか下ルートが当たりだったなんて。いーなーいーなー、どんなスキル貰えたんです?」

「あ、ああ、ありがとう。しかし奇遇だね、こんなところで出会うなんて」

「こっちこそびっくりしたよ。合流しようとしたら突然フレンド欄がグレーになっただろう?」


 探偵さんは何があったか聞きたそうにしていた。
 少し遅れてジキンさんがやってくる。


「お疲れ様です、皆さん。マスター、さっきは散々でしたね」

「本当ですよ、逃げおおせた先がシャドウ型の巣窟の様なジャングルで」


 ジキンさんの話に合わせる様に私も頷く。


「シャドウ型の巣窟? 知らないな。しかもジャングルなんて解放された情報には載ってないぞ?」


 探偵さんは掲示板巡りをやめると、うーんと唸り、そして私の目を真っ直ぐ見据えて来た。


「そこは、なんて名前のエリアだった?」

「残念ながら名前を見てる余裕なんてなかったよ」

「気になるな。もしかしたらどこかに隠された遺跡の一部かもしれない」

「どこかって?」

「それこそ陸路じゃいけない場所。例えば船に乗る必要がある場所だとか、飛空挺に乗っていかないといけない場所だったり」

「ふーん。結局私達は袋叩きにされて死んだ訳だけど、そこってそんなに重要な場所だったんだ?」

「逆にエネミーがそんなに巣食ってる場所なんてプレイヤーの手が入ってないって言ってる様なものじゃないか。次は僕も向かわせてくれ」

「えぇー」


 無駄死にする様なところに二度と行きたくないなと思いつつ、言い出したら聞かない親友に丸め込まれる様にして、私は首を縦に振るしかなかった。
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