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3章 お爺ちゃんと古代の導き

130.お爺ちゃん達と[三の試練]③

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「迷った。ここ何処?」


 最初の一本道の拍子抜け感から一転。
 T字路を抜けた先は明らかに作りが一変した。
 取り敢えず進めば分かると突き進むこと一時間。
 私達は完全に迷っていた。


「ほら~、マッピングしてないのが仇になった。だから言ったじゃないですか。こんな壁もないところでダンジョンのお決まりが通用するわけないって」


 私のぼやきにそれ見たことかとジキンさんが揚げ足を取る。
 ダンジョンの定番“左手を壁に沿って歩いていけば入り口に戻る法則”はここでは通用しないと言われてしまう。
 分かってますけど、それを補うのがあなたの務めでしょ?
 私は撮影が忙しかったんです!


「だからってここで私達が言い合いをしていても仕方がないです。もっと前向きに考えましょうよ」

「そうは言いますけど、何か解決策はあるんですか?」

「そう言えばアキエさん、君達が拾い始めたその果実。どこら辺から変化があった?」


 ホクホク顔で木苺にしてはやたらと空色の実をつけてた草花を採取していた妻を見やり、話しかける。
 彼女達は迷宮攻略で頭を悩ませてる私たちを他所に、宣言通り食材採取しかしていなかった。


「そうね、どこからだったかしら? ランダさんは分かる?」

「確かこの水色の果実を手に入れ始めたのは道が4つに分かれてからね」

「そうだったかしら? 拾うのに夢中で覚えてないわ」

「嫌だわアキ、もうボケが来た?」

「酷いわ、ランダさんなんか嫌い!」

「冗談よ、冗談。そんな拗ねないで」

「拗ねてません!」


 頬を膨らませて怒る妻をドウドウと押さえ込むランダさん。見た目の若さもあって非常に微笑ましい。
 

「つまり分かれ道が減っていけばスタート地点に戻れるってことか?」

「多分ね。空という空間で、雲という道の関係上、私達は見通しの良すぎるこの道を下へ、下へとショートカットしすぎた」

「完全に敗因がそれなんですよね。じゃあ登ればいいという発想で上に上がってきたら際限なく上にも迷路が広がってた。一体どう落とし前をつけてくれるんですか?」


 探偵さんの言葉に頷くと、ジキンさんが苦虫を噛み潰して悪態をつく。どうしてもこの人は私に責任を取らせるつもりだ。
 感情が顔に張り付いて醜いですよ?


「ハヤテさーん。あっちになんか光ってる雲がありました。絶対怪しいですよアレ」

「ナイスですスズキさん! ほら、ジキンさんも揚げ足ばかり取ってないで行きますよ」


 偵察に行っていたスズキさんが、水操作の発生源頼りに泳いで戻ってきた。流しっぱなしにしているメリットは意外にこういうところにありそうだ。デメリットはAPをバカ食いするところにある。普通は論外だけど、やり方次第だな。

 だけどスズキさんの泳法が背泳ぎだったものだから、あまりに珍妙なものを見たとばかりに探偵さんが腹を抱えて笑っていた。
 受けたのが嬉しかったのかご本人はガッツポーズだ。
 
 スズキさんの案内通り進めば確かに雲が光っていた。
 それは近づかなければわからず、そもそも雲の道の先につながっていない。盲点といえば盲点か。
 迷路だからって馬鹿正直に雲の道を歩けば辿り着くものでもないか。


「どーれ、スクリーンショットに何か反応はあるかなー……おっと発見。どうやらここ、方角を示す場所らしいです。北北東と書いてあります」

「その表記的に後7種類くらいは似たような場所ありそうですね」

「取り敢えず位置情報のチェックはしときましょうか。それとフルーツ入手の情報もね」

 
 一応は素材入手も兼ねて、と名目を打っておく。
 奥様達の機嫌をとりながら自分の趣味を推し進めるのだ。


「んじゃ、ここからまっすぐ行って見て、南南西を目指します?」

「それこそ無駄な行動じゃないですか?」

「ジキンさんは今回限りで攻略できると思い込んでるでしょうが、この広さです。もう少し余裕を持ちましょうよ」

「はいはい、これでは僕は悪者だ。マスターの指示に従いますよ」

「すいません。ジキンさんは最悪を想定して助言してくれてるのは分かってますが、あまりに言い合ってますと、ほら、奥様方が怪訝な顔をされるので」

「そうですね、男同士の馴れ合いを女性に解れというのは酷でした。これからは控えましょう」

「さすがサブマスター」

「概ね突っかかってるのは少年の方だけどね」


 いい感じにまとまりかかった話に探偵さんが横槍を入れてぐちゃぐちゃにした。どうしてくれるんですか、この空気。
 

「そんな事より戻るか進むか決めませんか? 僕のAPもそろそろ厳しくなってきましたし」

「ならば一度戻ろうか。素材は手に入った。ダンジョン攻略の方針も決まった。クリアには程遠いけど、来たことが無駄にならないように帰る方向で話をまとめるよ。みんないいかな?」


 スズキさんの提案に私が乗っかると、みんなが頷く。
 女性陣はもとより素材の調理法をどうするか夢中になっている。そして調理アイテムのストック的に探索を続行するのも怪しいとなれば引き返すのは妥当だった。
 最悪ログアウトして出戻りするという手もあるが、それだと情報だけが手に入って入手素材がパアだ。
 女性陣はそれを許さないだろう。
 なので何がなんでも帰る必要があるのだ。


 それから三十分経過して、


「ここ何処ー?」


 相変わらず私達は迷っていた。
 おかしいな。来た時よりも明らかに雲の道が複雑に入り組み始めたぞ?
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