みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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56話 仮免探索者みうE《再開》

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 図鑑で調べながら、目的の薬草を探していく。

「お兄たん、もしかしてこれだったりしない?」

 みうが老朽化した本棚に根付いた植物をブチッと引き抜いて手渡してきた。
 いや、そんな雑草とかじゃなくてだな。
 早々に嫌気がさしてしまったか?

 採掘はスライムが見つけてくれる反面、採取の方は手当たり次第だ。
 これだ! とわかるまで時間が非常にかかる。
 戦闘ならそれなりになってきた今のみうに、採取は少し面倒という認識になっているのかもしれない。

「ちょっと待ってくれよ? 花と根っこという話だから」

:俺たちにも協力させてくれ( • ̀ω•́  )✧
:こういう時のリスナーだよ( *˙ω˙*)و グッ!
:採掘の時は何もできなかったからね(*´ω`*)

「あ! そうですね。じゃあお願いしてもいいですか?」

「すまないな。最近みうは採取が面倒になってきたようで」

「普通に採取が好きな人はいませんよ?」

「え?」

「えっ?」

 俺はそんなバカな! という表情で志谷さんと数分にらめっこした。

「つまり、陸君にとって採取は特に苦でもなかったというわけね?」

 理衣さんの問い掛けに頷く。

「概ね? 指示出しすればスライムが勝手に取ってきてくれますから」

「お兄たん! それ! それが今ここで求められてるものだよ!」

 何だ、いいアイディアあるんじゃーんとばかりに食いついてきたみう。

「いや、流石に全部スライム任せじゃみうのランクアップ査定にならないぞ?」

「うっ、それは」

 みうの目が横にそれていく。
 隠し事が下手くそなみうは自然に苦手なことがあるとそういう態度をとってしまいがちだ。
 まだまだこれからいろんなことを覚えような?

「それに、何事も経験だ。ベッドに寝たきりだった頃、こんなふうに何かをするのも楽しかったんじゃなかったか? それがここ最近はどうだ。すっかり楽しむことに優先順位をつけて焼いないか?」

「うん、そうだね。あたしってばこういう単純作業に何か嫌な思い出でもあるのかな?」

「記憶にないと?」

「なんか体が拒否反応起こすんだよね」

 まるでそれは自分ではない、誰かの記憶みたいだとみうは語る。

「とはいえ、今日は四人いるんだ。手分けして探せば早く終わるさ」

「お兄たんも手伝ってくれるの?」

「当たり前だろ? 俺はカメラマン件、パーティメンバーなんだから。手を出すのは俺じゃなくスライムだが」

「全部スライムさん任せには?」

「それは却下で」

「けちー」

:お兄たんのけちー(  ・᷄ὢ・᷅  )
:いや、これはみうちゃんのためでもあるから_(:3 」∠)_
:むしろこっちの取り分まで持ってかれるのはね?( *˙ω˙*)و グッ!
:共同作業たのちいです( • ̀ω•́  )✧
:むしろ積極的に関わっていけ!٩(›´ω`‹ )ﻭ

「調べた結果、みうの持ってきた花がこれに該当するようです」

「本当?」

 我答えを見つけたり、とばかりにみうがぶちぶち作業を始めた。
 わかってしまえば行動は早いのだ。
 暗中模索。闇の中を手探りで探るのは誰だって苦手であるのは仕方ないことだ。

:つまり根っこは違うと?(*´ω`*)
:そもそも、根付いてるこれは根っこに該当されるの?_(:3 」∠)_

「そこなんだよねぇ。どうにもこれは根っこというより茎に該当するっぽくて。入手が比較的簡単かつ、たいした効能もないので捨て置かれてるみたいですね」

「お花もいっぱいあるけど、価値があるのー?」

「その根っこと一緒に煎じると睡眠薬になるらしいんだ。眠れない時に飲むとぐっすり眠れるってあれさ」

「あー、手術するときに打つやつ?」

「それは全身麻酔」

「違うやつかー」

「病院ネタ、わかんない」

「別にわかんなくたって生きていけるわ」

「それもそう」

 志谷さんと理恵さんがなんかお話ししている。
 常に眠気と戦っている理恵さんと、邪神の化身は睡眠に対して興味はなさそうである。

「じゃ、根っこの方はスライムに探させるんで、みうたちは花の採取を頼む」

「はーい」

:こっちは仕分けするでー( • ̀ω•́  )✧
:鑑識眼が火を吹くぜ!( *˙ω˙*)و グッ!

 こうして協力のもと、採取作業は30分もせぬうちに終わった。
 討伐の方は混雑が予想されるのを見越してとってないので早々に撤退した。
 なんだかんだとアクシデントの尽きない配信だった。

 やたら疲れたのが感想と言ってもいいだろう。

「それじゃ、みんな! 今日の配信はここまで! この後明日香お姉ちゃんとお寿司屋さんで食べ比べ配信するからそっちも見てね!」

:おつみうー(  ・᷄ὢ・᷅  )
:おつみうー( • ̀ω•́  )✧
:おつみうー٩(›´ω`‹ )ﻭ
:おつみうー(*´ω`*)
:おつみうー_(:3 」∠)_
:おつみうー( *˙ω˙*)و グッ!
@威高こおり:おつみうー_φ(・_・
@クマおじさん:おつみうー
@勝流軒大将:おつみうー
@瑠璃:おつみうー、姉さんもかっこよかったわよ

収録を切り、みうが何か言いたげに俺に顔を向ける。

「どうした?」

「おつみうーって」

「ああ、どうやらリスナーたちで別れの挨拶を定着させようと考えてくれたみたいだな」

「へへ、そっかぁ」

「そういうの、率先的にしてくれるのって嬉しいよね」

「明日香お姉ちゃんのところは?」

「私は特に、そういう神格化はされてないかなー? いっぱい食べる私を見にきてる感じ。アイドル売りはしてないからねー」

「あたしも特にしてないんだけどね?」

「だったら、それだけ愛されてるってことだよ!」

「愛されてるの? あたしが?」

「少なくともにいちゃんはお前を愛でてるそ?」

「お兄たんはずっとそうだったよね」

「あら、私だってみうちゃんを可愛がってるわ」

「私もー」

 理衣さんと志谷さんが加わる。
 それを一心に受け取りながら、みうはにヘラと笑うのだった。

「さて、だいぶ早く終わったな。お寿司屋さんの収録までまだ時間があるし、どこか買い物でもいくか?」

「その前にシャワーでも浴びたいわ」

「賛成!」

「ちょーっと動きまわったからねぇ」

 女子たちは入浴を済ませたいと言い出した。
 撮影で多少は動き回ることも予想していたため、着替えなんかも持ってきたのが幸いした。
 ダンジョンの近くにある銭湯で人っプロ浴びてから集合する。

 女子風呂からキャイキャイ騒がしい声が聞こえてくる。
 志谷さんと理衣さんがいるから大丈夫とはいえ、少しだけ心配だ。

 そんな心配も杞憂で終わり、俺が念入りに汗を落とすとそこには風呂上がりの三人がそれぞれジュースを口に含んでいる姿があった。

「あ、陸君。随分と長風呂なのね」

「女性の前に臭いを残して出ていく勇気はないので」

「先輩、そういうエチケット持ってたんですねぇ!』

「お兄たん、フルーツ牛乳っていうの初めて飲んだんだけど、これすごく美味しいの!」

「そうか、よかったなー」

「うん!」

 志谷さんはコーヒー牛乳、理衣さんはみうと一緒のフルーツ牛乳を腰に手を当てて飲んでいた。

「何よ?」

 視線に気がついた理衣さんが訝しげな顔で俺を問い詰める。

「いえ、様になっているなと」

「いいでしょ、美味しいんだから。それより次の収録の時間は大丈夫?」

「問題ないです。徒歩で行ける距離ですからね」

「ならいいわ。私は付き添いで行くけど、打ち合わせをしてなかったから気にしていたのよ」

「今から行くのは普通の、値段の安さが売りの回転寿司ですが、それでもいいんですか?」

「あなた、私をなんだと思っているの?」

「味と味覚に偏りのある人だなって」

「正直すぎるのも損をするって覚えておきなさい」

「肝に銘じておきます」

 それを事実と認めておきながら、やっぱり偏りのある食事であることは気にしているようだ。みうの手前、それを強行しようというのではなく、今回くらいは安物のお寿司に挑戦してみようという考えだ。
 それはそれで成長なのかもしれないな。

 志谷さんのおかげで、今も理衣さんは起きていられてる。
 もしこれが志谷さん不在だった場合、もうおねむだった頃あいだ。
 瑠璃さんにいい土産話ができると思いつつ、俺たちは連れ立って某寿司レストランのチェーン店へ。

 そこの入り口で、俺たちは再び再開した。

「秋乃、今日はにいちゃんたちの奢りだから。いっぱい食べていいからな?」

 お人形さんみたいな小さな子供を車椅子に乗せて、ダンジョンで出会った粗暴ななすりつけ野郎とその取り巻きの少女は別人みたいな表情で車椅子の少女へ話しかけていた。

 少女はあまり話すタイプではないのか、ゆっくり話を聞いては頷くのみだ。それでも楽しそうに見えるあたり、好かれているのだろう。

「気づいてた?」

「ああ」

 理衣さんがダンジョンで出会ったなすりつけ野郎だと推測しながらもどう接するかの判断を委ねてくる。
 彼がなぜあんなに直向きにお金を稼ごうとしていたのか。
 今の状況を見れば想像は容易い。

「あの子、きっとそう先は長くないわよ」

 理衣さんは気がついてしまった。彼女の手の甲には、自身やみうと同じコアが封されていることに。
 神格契約者。一体何と契約してしまったのか、それは俺たちには判断できようはずもなく。

 ただ遠巻きに見つめるほかなかった。
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