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【ソルベ村】村に人が集まってきた
村で生活をする上で知っておくこと3
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洋一は趣味の話でスラム民を軽くリラックスさせてから、今日過ごす仮住まいの場所まで案内した。
「今日皆さんにはここで住んでもらいます。自分の要望を通したい場合は何日か住んで畑なり趣味なりで成果を上げて村での信頼を稼ぎ、マイホームの建築なりしてってくださいね。ほんと、土地だけは有り余ってますんで。ここは僻地で魔の森も近いので、所有権などは王国側が勝手に言ってるだけです。守ってくれないのに権利を主張する相手の言うことに耳を傾ける必要はありません」
洋一はスッパリと言い切った。
騎士たちはあまり面白くなさそうな顔をしている。
あくまで駐在騎士は、貴族が無理を通そうとした時の最終手段でしかない。
彼らに暴力的な解決は特に求めてないのである。
王国に拠点があり、ここは彼らの訓練場。
そう言った側面を出せば彼らの権力が通じておとなしくお帰りいただけるかもしれない。
通じなかったらそれ以上の暴力で訴えるだけだ。
街から出た以上、ルールは全て弱肉強食に置き換わる。
命のやりとりをする場において話し合いなんて解決手段は存在しないのである。
モンスター相手にそれが通じた試しはない。
「ここに、俺たちが暮らせる?」
「嘘、夢みたい」
「みんな来てみろ、ここに風呂があるぞ!」
「信じられない、川で水浴びくらいは覚悟してたぞ」
「トイレまである!」
「まるでお貴族様の暮らしみたいだ!」
「替えのお洋服はここに置いてありますので。仕事着とは別に普段着もご用意してます。汚れたと思ったら裏の井戸から水を汲んで洗濯なり何なりしてくださいね。ちょっと部屋のスペースが手狭になって寝る場所はほとんど確保できませんでしたが……」
感動するスラム民たちに、ルディが申し訳なさそうに告げた。
ルディとてそこでの暮らしがどういうものなのかは知っている。
だが、自分たちの暮らしに比べてあまりにも稚拙な作りに申し訳なさを感じているのだ。
すっかり贅沢な暮らしに慣れたが故の発言であった。
「着替えまであって、食事が出る。ここは楽園だ!」
「そう思わない方も多くいらっしゃいます」
「そんな奴は贅沢に慣れすぎたクソッタレばかりだ!」
「そうよそうよ!」
「でもこれだって、十分贅沢じゃないか?
「そ、そうだよな? 本当に俺たちが使っちゃってもいいのか? あとで文句は言わないか?」
未だ自分たちの暮らしが改善されてるのだと信じきれないスラム民たち。
これは受け入れるまで相当に時間がかかりそうだとルディはため息をつく。
自身が体験してきたあれこれを思い出しながら、家の中での暮らし方の案内を務めたルディは言葉を選んで説明した。
「そこは問題ありません。これからは皆さんが協力して、ここで暮らします。今までのように誰かの目を気にしなくてもいいし、自分の仕事に誇りを持ってください。先ほどお師匠様が言った通り、村で施される食事はお昼に一回のみとなります。それ以外にも食べたい場合は、自分で自分の収穫物を調理するか、物々交換で手に入れた調理器具で何とかしてください」
「そこまで許可してくれるの?」
「許可というか、自由には責任がつきまといます。今まで街という壁の中で住む上でルールが発生したように、ここにもまた街とは異なる暗黙の了解があるとだけ覚えてください」
やっぱり暗黙の了解はあるのか、と納得するスラム民たち。
「まず、勝手に子供は作らない。作りたいなら自分で家を持ってからにしてください。ここには子供も含めて働こうと願うものが集う場です。お互いに同意の上でなら仕方ありませんが、誰かに養われているうちからそういうことをしないでください」
そりゃそうだろう、という顔。
しかし一部には全部面倒を見てもらおうという腹づもりの顔もあった。
図星という顔でルディから目を背ける数名を見逃さない。
当然、そういう他責主義者も混ざってる事は理解していた。
スラム民からしたらここは楽園に見えるのだろう。
この村の歴史を知らず、努力の果てに成し遂げた成果を知らず、結果だけをみて自分達の方が可哀想だ。だから余裕があるのなら施すべきだ! と訴えるものが出てくるのも仕方のない事だ。
それを許すかどうかは別問題だが、どう思おうかはその人の自由である。
「他には?」
「人の成果物を盗んで自分のものに計上するのも禁止です。盗みを許せば、楽を覚えます。あんまりこれが目立つようなら、僕のテイムモンスターが黙ってません」
『ゴルルル』
「ヒッ」
怯えるスラム民達。
根源的恐怖の前に抗う術もない。
暴力を飼い慣らすテイマーという存在が、ここにきてどれほどの脅威か。身をもって知りたい者はいないだろう。
「あんまり脅すな、ルディ」
「すいません」
「まぁ、誰だって自分が頑張って仕上げたものを奪われたらムカっ腹が立ものさ。それが疑心暗鬼を招く。村に対しての疑念が大きくなった時、人は結構大胆な真似をする。村の情報を国に売ったりなどの裏切り行為だ。流石にその件について俺たちは寛容になれない。ただここでひっそり暮らしたいだけなのに、一部の自分勝手な連中の自爆に巻き込まれるのは非常に不愉快だ。そういう時は村人も然るべき対処をするので、みなさんも気に留めておくようにしてください」
洋一はこの村のルールについて今一度強く言葉を結ぶ。
村を裏切ったら容赦をしないという言葉だ。
一部に反感の目がいくつも湧き出る。
そんな可哀想な人たちに対してルディから軽く注釈が入った。
「みんな、勘違いしてるけどこの村で一番敵に回しちゃいけない相手は僕でもキアラでもヨルダでもなく、お師匠様だからね?」
一番の戦力を持つベア吉を従えるルディ
レジェンダリー使いのキアラ。
魔法使いのヨルダの他にまだ上がいるのか?
スラム民は理解が追いつかないという顔を晒す。
「何だかそういうことになっている。俺はこの村の調理を担ってる。もちろん、趣味でパン屋をやってるロバートさんなんかもいるが、彼の扱う小麦粉はうちが作ってるので俺を敵に回すと彼は趣味のパン屋を続けられなくなるというわけだ。というわけで飯が食えるだけラッキーと思って、あまり勝手な真似はしないようにしていただければこちらも相応の態度で皆を迎えるつもりだ」
洋一の説明にスラム民達は「そういう理屈か!」と納得。
確かに食べ物の提供がなくなれば困るのは自分たちだ、やたら無闇に反発するのは何も生み出さないと学んだ。
スラム民を仮住まい場所に置いて帰る道中。
ルディだけが「実力でも上なのにー」とどこか悔しそうな顔をしていた。
洋一だって戦う事になったら手加減はしないつもりだが、力で押さえ込む真似だけはしたくないとルディを促した。
「お師匠様はああいう人達に甘すぎます。もっと厳しくしないと舐められちゃいますよ?」
「俺が手を出すまでもないって事だよ」
「僕達がそういう事をするのはよく思ってないじゃないですか」
「別にルディが何かをするなんて思ってないさ。ただ、ギルバートさんが本性を見せずに引き受けた時点でもう裏で動いてくれてると思ってさ」
「あ」
マチルダも今回裏方に回ってる。
バーバラもシータも出てきていない。
物理的な暴力装置であるヨルダ、ルディ、キアラに意識を向けさせたのだ。
この村にはまだまだ敵に回しちゃいけない人があまりにも多すぎる事をスラム民は知る由もないのだ。
「なんだかんだ、人が増える事でトラブルに見舞われるのを警戒してるのは俺たちだけに限らないってことさ。あんまりそっちに気を取られすぎて、仕事を疎かにするなよ? 揚げ足を取られるぞ?」
「あぅ」
ルディは洋一が何も言わないのは黙認していると、自分ばかりが気を逸らせていた事に気づいて小さく呻いた。
洋一はただのお人よしではない。こう見えて多くの修羅場を乗り越えてきてる。
まだまだその事実を飲み込めないルディは洋一の大きすぎる背中に目眩を覚えるのだった。
「今日皆さんにはここで住んでもらいます。自分の要望を通したい場合は何日か住んで畑なり趣味なりで成果を上げて村での信頼を稼ぎ、マイホームの建築なりしてってくださいね。ほんと、土地だけは有り余ってますんで。ここは僻地で魔の森も近いので、所有権などは王国側が勝手に言ってるだけです。守ってくれないのに権利を主張する相手の言うことに耳を傾ける必要はありません」
洋一はスッパリと言い切った。
騎士たちはあまり面白くなさそうな顔をしている。
あくまで駐在騎士は、貴族が無理を通そうとした時の最終手段でしかない。
彼らに暴力的な解決は特に求めてないのである。
王国に拠点があり、ここは彼らの訓練場。
そう言った側面を出せば彼らの権力が通じておとなしくお帰りいただけるかもしれない。
通じなかったらそれ以上の暴力で訴えるだけだ。
街から出た以上、ルールは全て弱肉強食に置き換わる。
命のやりとりをする場において話し合いなんて解決手段は存在しないのである。
モンスター相手にそれが通じた試しはない。
「ここに、俺たちが暮らせる?」
「嘘、夢みたい」
「みんな来てみろ、ここに風呂があるぞ!」
「信じられない、川で水浴びくらいは覚悟してたぞ」
「トイレまである!」
「まるでお貴族様の暮らしみたいだ!」
「替えのお洋服はここに置いてありますので。仕事着とは別に普段着もご用意してます。汚れたと思ったら裏の井戸から水を汲んで洗濯なり何なりしてくださいね。ちょっと部屋のスペースが手狭になって寝る場所はほとんど確保できませんでしたが……」
感動するスラム民たちに、ルディが申し訳なさそうに告げた。
ルディとてそこでの暮らしがどういうものなのかは知っている。
だが、自分たちの暮らしに比べてあまりにも稚拙な作りに申し訳なさを感じているのだ。
すっかり贅沢な暮らしに慣れたが故の発言であった。
「着替えまであって、食事が出る。ここは楽園だ!」
「そう思わない方も多くいらっしゃいます」
「そんな奴は贅沢に慣れすぎたクソッタレばかりだ!」
「そうよそうよ!」
「でもこれだって、十分贅沢じゃないか?
「そ、そうだよな? 本当に俺たちが使っちゃってもいいのか? あとで文句は言わないか?」
未だ自分たちの暮らしが改善されてるのだと信じきれないスラム民たち。
これは受け入れるまで相当に時間がかかりそうだとルディはため息をつく。
自身が体験してきたあれこれを思い出しながら、家の中での暮らし方の案内を務めたルディは言葉を選んで説明した。
「そこは問題ありません。これからは皆さんが協力して、ここで暮らします。今までのように誰かの目を気にしなくてもいいし、自分の仕事に誇りを持ってください。先ほどお師匠様が言った通り、村で施される食事はお昼に一回のみとなります。それ以外にも食べたい場合は、自分で自分の収穫物を調理するか、物々交換で手に入れた調理器具で何とかしてください」
「そこまで許可してくれるの?」
「許可というか、自由には責任がつきまといます。今まで街という壁の中で住む上でルールが発生したように、ここにもまた街とは異なる暗黙の了解があるとだけ覚えてください」
やっぱり暗黙の了解はあるのか、と納得するスラム民たち。
「まず、勝手に子供は作らない。作りたいなら自分で家を持ってからにしてください。ここには子供も含めて働こうと願うものが集う場です。お互いに同意の上でなら仕方ありませんが、誰かに養われているうちからそういうことをしないでください」
そりゃそうだろう、という顔。
しかし一部には全部面倒を見てもらおうという腹づもりの顔もあった。
図星という顔でルディから目を背ける数名を見逃さない。
当然、そういう他責主義者も混ざってる事は理解していた。
スラム民からしたらここは楽園に見えるのだろう。
この村の歴史を知らず、努力の果てに成し遂げた成果を知らず、結果だけをみて自分達の方が可哀想だ。だから余裕があるのなら施すべきだ! と訴えるものが出てくるのも仕方のない事だ。
それを許すかどうかは別問題だが、どう思おうかはその人の自由である。
「他には?」
「人の成果物を盗んで自分のものに計上するのも禁止です。盗みを許せば、楽を覚えます。あんまりこれが目立つようなら、僕のテイムモンスターが黙ってません」
『ゴルルル』
「ヒッ」
怯えるスラム民達。
根源的恐怖の前に抗う術もない。
暴力を飼い慣らすテイマーという存在が、ここにきてどれほどの脅威か。身をもって知りたい者はいないだろう。
「あんまり脅すな、ルディ」
「すいません」
「まぁ、誰だって自分が頑張って仕上げたものを奪われたらムカっ腹が立ものさ。それが疑心暗鬼を招く。村に対しての疑念が大きくなった時、人は結構大胆な真似をする。村の情報を国に売ったりなどの裏切り行為だ。流石にその件について俺たちは寛容になれない。ただここでひっそり暮らしたいだけなのに、一部の自分勝手な連中の自爆に巻き込まれるのは非常に不愉快だ。そういう時は村人も然るべき対処をするので、みなさんも気に留めておくようにしてください」
洋一はこの村のルールについて今一度強く言葉を結ぶ。
村を裏切ったら容赦をしないという言葉だ。
一部に反感の目がいくつも湧き出る。
そんな可哀想な人たちに対してルディから軽く注釈が入った。
「みんな、勘違いしてるけどこの村で一番敵に回しちゃいけない相手は僕でもキアラでもヨルダでもなく、お師匠様だからね?」
一番の戦力を持つベア吉を従えるルディ
レジェンダリー使いのキアラ。
魔法使いのヨルダの他にまだ上がいるのか?
スラム民は理解が追いつかないという顔を晒す。
「何だかそういうことになっている。俺はこの村の調理を担ってる。もちろん、趣味でパン屋をやってるロバートさんなんかもいるが、彼の扱う小麦粉はうちが作ってるので俺を敵に回すと彼は趣味のパン屋を続けられなくなるというわけだ。というわけで飯が食えるだけラッキーと思って、あまり勝手な真似はしないようにしていただければこちらも相応の態度で皆を迎えるつもりだ」
洋一の説明にスラム民達は「そういう理屈か!」と納得。
確かに食べ物の提供がなくなれば困るのは自分たちだ、やたら無闇に反発するのは何も生み出さないと学んだ。
スラム民を仮住まい場所に置いて帰る道中。
ルディだけが「実力でも上なのにー」とどこか悔しそうな顔をしていた。
洋一だって戦う事になったら手加減はしないつもりだが、力で押さえ込む真似だけはしたくないとルディを促した。
「お師匠様はああいう人達に甘すぎます。もっと厳しくしないと舐められちゃいますよ?」
「俺が手を出すまでもないって事だよ」
「僕達がそういう事をするのはよく思ってないじゃないですか」
「別にルディが何かをするなんて思ってないさ。ただ、ギルバートさんが本性を見せずに引き受けた時点でもう裏で動いてくれてると思ってさ」
「あ」
マチルダも今回裏方に回ってる。
バーバラもシータも出てきていない。
物理的な暴力装置であるヨルダ、ルディ、キアラに意識を向けさせたのだ。
この村にはまだまだ敵に回しちゃいけない人があまりにも多すぎる事をスラム民は知る由もないのだ。
「なんだかんだ、人が増える事でトラブルに見舞われるのを警戒してるのは俺たちだけに限らないってことさ。あんまりそっちに気を取られすぎて、仕事を疎かにするなよ? 揚げ足を取られるぞ?」
「あぅ」
ルディは洋一が何も言わないのは黙認していると、自分ばかりが気を逸らせていた事に気づいて小さく呻いた。
洋一はただのお人よしではない。こう見えて多くの修羅場を乗り越えてきてる。
まだまだその事実を飲み込めないルディは洋一の大きすぎる背中に目眩を覚えるのだった。
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