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わたしの気持ち
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ーー全部、私だよ。当主が付け加え、張り巡らせた悪意にわたしは絡め取られる。
「美雪さんにわざと薬を飲ませたんですか? 先生は試薬段階だって言ってました! それを……ひどい!」
「ひどいも何も彼女が望んだんだ。鬼になれば千秋との結婚を認められると勘違いしてね」
「勘違い? はなから認めなる気がないのに? 美雪さんは大丈夫なんですか?」
「柊の恋人も薬を飲んだ後、3日は生死をさまよっていたな。柊が死ぬ気で看病するだろうが、鬼になればそれでよし、ならなければそれまで」
「他人事みたく言わないで下さい! あなたが美雪さんをそそのかしたんでしょう?」
「そそのかしたのが私ならば、追い詰めたのは姫じゃないのか?」
「そ、それは」
当主はまったく悪びれず、そればかりか食後のデザートを要求する。
わたしには四鬼さん等と連絡を取る手段がなく、美雪さんの安否を確認できない。
「姫、桜のシャーベットだそうだ。食べないか?」
「当主!」
はしたなくテーブルを叩き、立ち上がる。
「食事中に騒がしいぞ!」
赤い目でわたしを睨む。わたしも抗い睨み返すが、貧血の影響下で鬼姫の力が扱えない。
こうなるのも計算のうちなのだろう。当主から甘い香りが発せられた。
「そこまで美雪を気の毒に思えば、千秋を譲ってやればいい。その代わり姫は私の物となりなさい」
「美雪さんにわざと薬を飲ませたんですか? 先生は試薬段階だって言ってました! それを……ひどい!」
「ひどいも何も彼女が望んだんだ。鬼になれば千秋との結婚を認められると勘違いしてね」
「勘違い? はなから認めなる気がないのに? 美雪さんは大丈夫なんですか?」
「柊の恋人も薬を飲んだ後、3日は生死をさまよっていたな。柊が死ぬ気で看病するだろうが、鬼になればそれでよし、ならなければそれまで」
「他人事みたく言わないで下さい! あなたが美雪さんをそそのかしたんでしょう?」
「そそのかしたのが私ならば、追い詰めたのは姫じゃないのか?」
「そ、それは」
当主はまったく悪びれず、そればかりか食後のデザートを要求する。
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「姫、桜のシャーベットだそうだ。食べないか?」
「当主!」
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「食事中に騒がしいぞ!」
赤い目でわたしを睨む。わたしも抗い睨み返すが、貧血の影響下で鬼姫の力が扱えない。
こうなるのも計算のうちなのだろう。当主から甘い香りが発せられた。
「そこまで美雪を気の毒に思えば、千秋を譲ってやればいい。その代わり姫は私の物となりなさい」
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