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側にいられない
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「お願い、教えて!」
叫んだ瞬間、なんと目の前の鬼姫が弾けた。温かい光の雨がわたしへ降り注ぐ。
「ーーそうか、四鬼さんの血を飲めばいい?」
光の雨を浴びたら解決策が思い付く。
でも確か、食らい付くす危険があるから駄目だって言われたっけ。
「四鬼さんの血を飲むと上書きされるから大丈夫? 鬼姫は花婿の血しか飲まない」
また解決策が浮かぶ。自問自答をしているが、きっとこれは鬼姫の知識だろう。
上書きという言い方に涼くんと高橋さんのキスがちらつき、複雑だ。だが素直に四鬼さんへ打ち明けてみようと思える。これも鬼姫の経験だろうか。
1人残された空間に横たわる。鬼姫は消えてしまったが、あまり喪失感がない。目を覚まして、またあの苦しみを味わうのなら此処に取り残されてもいいくらい。
此処は約束に縛られた身体がふわふわ軽くかる。
「ーー子」
あぁ、夢の縁で誰かがわたしを呼んでいるけれど目を開けたくないな。
「桜子!」
あぁ、わたしを呼ぶのはーー涼くんか。それにこの匂いはお粥だろうか。せっかく作ってくれたのに悪いけれどお腹は空いてないんだ、どうか、このまま眠らせて欲しい。
「桜子、頼む、起きてくれ! 目を開けてくれ」
ポツン、水滴が頬に落ちてきた。それは強烈に甘く、美味しそうな香りを漂わす。鼻をひくつかせるともう1滴落ちてきて、舌を伸ばしてみる。
「美味しい」
わたしはその味に即座に虜となり、口を大きく開けた。もうひとくち欲しい、もっと沢山欲しいと雛鳥みたいに。
すると、唇に柔らかい何かが押し当てられた。
叫んだ瞬間、なんと目の前の鬼姫が弾けた。温かい光の雨がわたしへ降り注ぐ。
「ーーそうか、四鬼さんの血を飲めばいい?」
光の雨を浴びたら解決策が思い付く。
でも確か、食らい付くす危険があるから駄目だって言われたっけ。
「四鬼さんの血を飲むと上書きされるから大丈夫? 鬼姫は花婿の血しか飲まない」
また解決策が浮かぶ。自問自答をしているが、きっとこれは鬼姫の知識だろう。
上書きという言い方に涼くんと高橋さんのキスがちらつき、複雑だ。だが素直に四鬼さんへ打ち明けてみようと思える。これも鬼姫の経験だろうか。
1人残された空間に横たわる。鬼姫は消えてしまったが、あまり喪失感がない。目を覚まして、またあの苦しみを味わうのなら此処に取り残されてもいいくらい。
此処は約束に縛られた身体がふわふわ軽くかる。
「ーー子」
あぁ、夢の縁で誰かがわたしを呼んでいるけれど目を開けたくないな。
「桜子!」
あぁ、わたしを呼ぶのはーー涼くんか。それにこの匂いはお粥だろうか。せっかく作ってくれたのに悪いけれどお腹は空いてないんだ、どうか、このまま眠らせて欲しい。
「桜子、頼む、起きてくれ! 目を開けてくれ」
ポツン、水滴が頬に落ちてきた。それは強烈に甘く、美味しそうな香りを漂わす。鼻をひくつかせるともう1滴落ちてきて、舌を伸ばしてみる。
「美味しい」
わたしはその味に即座に虜となり、口を大きく開けた。もうひとくち欲しい、もっと沢山欲しいと雛鳥みたいに。
すると、唇に柔らかい何かが押し当てられた。
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