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覚醒☓因果
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翌朝、わたしが撒いた嘘の種は好奇心という花を咲かせていた。HRを終えた教室を様々な生徒が覗き込んで、ひそひそ噂する。
「見て見て、あの子よ。四鬼様と付き合ってるんだって」
「鬼月学園の王子様と付き合えるなんて一体何したんだろうね」
「まぁまぁキレイな子だけど四鬼様と釣り合う?」
遠巻きで言われるだけ、直接投げ掛ける生徒はいない。
「面と向かって文句言ったら、四鬼千秋にチクられるかもしれねぇからな」
涼くんが支度しつつ、鼻で笑う。
「告げ口なんてしないよ。厳密には出来ないんだけど」
「いいんじゃねぇ? 牽制にはなってるんだ。ただ四鬼千秋と付き合ってるなんてなれば、他の男は寄り付かないな」
次の授業の体育は男女別れて行う。男子はサッカーをするらしく、涼くんの機嫌がいい。
わたしはというと欠席するので、ここに残り読書する。医者から運動を控えるよう言われ、体育の授業はほぼ参加できない。
そのため単位を取得するにはスポーツに関わるレポートの提出が条件とされていた。
「そうだ! 雑誌、ありがとう」
机にスケジュール帳とサッカー関連の資料を並べる。色々と立て込んで揃えられなかったのを見兼ねた涼くんが貸してくれたのだ。
「お前でも分かりやすいのを選んでやった。これを機会にルールぐらい覚えろよ。覚えたら一緒にサッカー観ようぜ」
言うと涼くんは教室を出ていく。周囲の注目を全く気にしていない。
「夏目君って優しいよね」
涼くんと入れ違いで高橋さんが席へやってくる。
「昨日はごめんなさい。まさか四鬼さんと知り合いとは思わなくて。浅見さんって顔が広いのね? 他に有名人の知り合いはいるの?」
反省を伴っていないにしろ、先に謝られてしまえば会話に応じるしかないか。
「こちらこそ、ごめん。有名人の知り合いなんていない。それより授業始まるよ? 行かなくていいの?」
予鈴が鳴るも高橋さんに移動する気配はなく、それどころか前の席へ腰掛け、窓の向こうを眺めた。
「あたしもサボるの。生理痛がひどくて体育なんかやりたくない。ここで男子のサッカー見てようかなって」
「わたしはサボってる訳じゃない」
「聞いた。身体が弱いんでしょ? 浅見さん、顔がいっつも白いもんね。華奢でお人形みたい。いかにも男子が好きそうなタイプ」
高橋さんは運動場を見たまま、棘のある言い方をする。
そして、教室内にはわたし達だけとなった。
「ねぇ、浅見さん。協力してくれない?」
「協力?」
友好的な態度にはとても思えず、繰り返してしまう。
「今度の土曜日、夏目君に告白するって決めたんだ。協力と言っても浅見さんは邪魔しないでくれるだけでいいの」
簡単でしょ、そんな顔でわたしを伺う。頬杖をつき鼻を鳴らす高橋さん。
「邪魔ってーー」
「にぶいなぁ、練習試合の応援には来ないでって意味。夏目君に頼まれていたレモンのはちみつ漬けはあたしが作る。浅見さんより美味しく仕上げる自信あるから」
あまりの言われようにムッとして、こぶしを握る。その隙きをつかれ高橋さんにスケジュール帳を奪われた。
「ここのブランドの手帳って高くない? もしかして四鬼様に買ってもらったの?」
「違うよ! 返して!」
「ふふっ、これじゃあ、おしゃれな手帳がもったいないね」
パラパラ捲り、埋まらない予定をバカにされている。けれど唯一の書き込みが彼女を喜ばすだ。
「土曜日は病院に行ったら家で大人しく休んでて。はい、どうぞ」
悪びれる様子なく返却されて、高橋さんを睨む。
翌朝、わたしが撒いた嘘の種は好奇心という花を咲かせていた。HRを終えた教室を様々な生徒が覗き込んで、ひそひそ噂する。
「見て見て、あの子よ。四鬼様と付き合ってるんだって」
「鬼月学園の王子様と付き合えるなんて一体何したんだろうね」
「まぁまぁキレイな子だけど四鬼様と釣り合う?」
遠巻きで言われるだけ、直接投げ掛ける生徒はいない。
「面と向かって文句言ったら、四鬼千秋にチクられるかもしれねぇからな」
涼くんが支度しつつ、鼻で笑う。
「告げ口なんてしないよ。厳密には出来ないんだけど」
「いいんじゃねぇ? 牽制にはなってるんだ。ただ四鬼千秋と付き合ってるなんてなれば、他の男は寄り付かないな」
次の授業の体育は男女別れて行う。男子はサッカーをするらしく、涼くんの機嫌がいい。
わたしはというと欠席するので、ここに残り読書する。医者から運動を控えるよう言われ、体育の授業はほぼ参加できない。
そのため単位を取得するにはスポーツに関わるレポートの提出が条件とされていた。
「そうだ! 雑誌、ありがとう」
机にスケジュール帳とサッカー関連の資料を並べる。色々と立て込んで揃えられなかったのを見兼ねた涼くんが貸してくれたのだ。
「お前でも分かりやすいのを選んでやった。これを機会にルールぐらい覚えろよ。覚えたら一緒にサッカー観ようぜ」
言うと涼くんは教室を出ていく。周囲の注目を全く気にしていない。
「夏目君って優しいよね」
涼くんと入れ違いで高橋さんが席へやってくる。
「昨日はごめんなさい。まさか四鬼さんと知り合いとは思わなくて。浅見さんって顔が広いのね? 他に有名人の知り合いはいるの?」
反省を伴っていないにしろ、先に謝られてしまえば会話に応じるしかないか。
「こちらこそ、ごめん。有名人の知り合いなんていない。それより授業始まるよ? 行かなくていいの?」
予鈴が鳴るも高橋さんに移動する気配はなく、それどころか前の席へ腰掛け、窓の向こうを眺めた。
「あたしもサボるの。生理痛がひどくて体育なんかやりたくない。ここで男子のサッカー見てようかなって」
「わたしはサボってる訳じゃない」
「聞いた。身体が弱いんでしょ? 浅見さん、顔がいっつも白いもんね。華奢でお人形みたい。いかにも男子が好きそうなタイプ」
高橋さんは運動場を見たまま、棘のある言い方をする。
そして、教室内にはわたし達だけとなった。
「ねぇ、浅見さん。協力してくれない?」
「協力?」
友好的な態度にはとても思えず、繰り返してしまう。
「今度の土曜日、夏目君に告白するって決めたんだ。協力と言っても浅見さんは邪魔しないでくれるだけでいいの」
簡単でしょ、そんな顔でわたしを伺う。頬杖をつき鼻を鳴らす高橋さん。
「邪魔ってーー」
「にぶいなぁ、練習試合の応援には来ないでって意味。夏目君に頼まれていたレモンのはちみつ漬けはあたしが作る。浅見さんより美味しく仕上げる自信あるから」
あまりの言われようにムッとして、こぶしを握る。その隙きをつかれ高橋さんにスケジュール帳を奪われた。
「ここのブランドの手帳って高くない? もしかして四鬼様に買ってもらったの?」
「違うよ! 返して!」
「ふふっ、これじゃあ、おしゃれな手帳がもったいないね」
パラパラ捲り、埋まらない予定をバカにされている。けれど唯一の書き込みが彼女を喜ばすだ。
「土曜日は病院に行ったら家で大人しく休んでて。はい、どうぞ」
悪びれる様子なく返却されて、高橋さんを睨む。
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