王道わんこの奮闘記(仮)

文字の大きさ
上 下
29 / 30
新入生歓迎会

29

しおりを挟む
彼は、昔のぼくのように無知で、助けを要求することも出来なくて、悪意に鈍感だった。
今回のそれは悪意とはまた違うものなんだろうけれど、おれにはそう思えた。

すぐに駆け出して愛瑠くんの元に向かう。
足が早い訳では無いが、遅い訳でもないのですぐに愛瑠くんの元に到着する。
不思議そうな目でこちらを見上げる愛瑠くん。

「お前誰だ?」

あ、おれの名前知らないのか。
でもどうしよう、今自己紹介するのなんか違くないか…?
それに助けなきゃって思って来たはいいけどどうやって助ければいいんだろう。
こういう時生徒会のみんなならスマートに助けられるんだろうなぁ…
おれにはそんな頭ないからどうすればいいかわかんないや…

突然現れて固まったおれを心底不思議そうに愛瑠くんは見つめている。
周りの人もなんだ?と不思議そうに僕を見ている。

正直自分に視線が集まるだけで気持ち悪くなってくる。
だけど今はそれよりも愛瑠くんを守らなきゃだから。

おれは大丈夫と言い聞かせながら、でもどうしようかと考えていたら、

「春くん!」

いつの間にか舞台から降りていたらしいふゆくんがおれに駆け寄ってきていた。

「ふゆ…く…たすけ…」
「うん、分かるよ。神崎くんを助けたいんだね。ゆっくり、落ち着いて。一緒に助けよっか?」
「う…」
「…神崎くん、とりあえずは舞台に呼ばれてるから舞台に行った方がいいんじゃないかな?1位をとった神崎くんをみんな待ってるよ」
「俺のこと神崎って呼ぶなよ!愛瑠って呼べ!あとお前綺麗な顔してるな!名前教えろよ!」
「僕は眞宮深冬。書記であるこの子、眞中春くんの親衛隊の隊長をしてるよ」
「親衛隊…?ってなんだ?」
「んー…その人を応援して手助けする存在、かな?それよりも、早く行かないと。会長さんが待っているよ」
「あっ、そーだな!行ってくる!」

そう言って舞台に駆け上がっていく愛瑠くん。
まだチラチラとこちらを見る視線があるけど、ふゆくんがそれも察知して前を向くように誘導してくれている。

ほんとにふゆくんには頭が上がらないなぁ…
一丁前に愛瑠くんを守ろうと前に出たけど何も出来なかったや…
しかもサラッとおれの名前まで伝えてくれたみたいだし…本当にふゆくんはすごい。

舞台に愛瑠くんが来たことによって表彰される人が揃った(ふゆくんとおれは居ないけど)ので、表彰式の続きが始まる。

「えー気を取り直して、鬼側の3位から順番に景品を何にするか聞いていきましょか~さて、3位の坂下くん!君はなんの景品にするんや?」
「僕は…お願い券にしましょうかね…これってここで何をお願いするかまで決めなくてはいけませんか?」
「んーそこまで厳密には制限はないんやけどなぁ…まあ願いが決まったら生徒会や教師陣に許可さえ取れればええんちゃう?それでええかー?」
「ああ、後日俺を通してくれればそのまま先生に通しておくからそれで問題ないぞ」
「ということなので、坂下くんは後日お願いを決めるってことで?」
「はい、それでお願いします」

今までで初めてのパターンだ。
とは言ってもそもそも表彰に上がっていないおれみたいな存在もあるからこれも認められるだろうなぁ。
2位の人も順調に景品を決めて、最後に愛瑠くんの番になった。

「最後は映えある1位に輝いた神崎愛瑠くんやな!景品は何にするか決めててん?」
「俺はお願い券ってやつにする!」
「おー!誰に何をお願いするん?」
「俺は…うーんと…えっと」
「…もし決めてないんなら今じゃなくてもええで?坂下くんみたいに決まったらで…」
「俺は逃げたりしないっ!そうだな…じゃあ深冬!!俺とデートしてくれ!」
「!俺ですか…」
「ああ!俺、人の名前覚えられないけど深冬の名前はさっき聞いたばっかだから!」
「それって名前さえ知ってればだれでもよかったってことかいな…見境あらへんなぁ…」

岬くんの小さなツッコミは聞こえていないようで愛瑠くんはよろしくなー!とこちらに手を振っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

王道学園は実に面白い

白鳩 唯斗
BL
BLです。そこまで派手にはしないので、ガッツリは期待しないで下さい。 主人公結構狂ってます。 雷斗くんは主人公じゃないです。 ※R15は保険です。

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

処理中です...