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第二話

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 第三王女が血を吐いて倒れた。そばに控えていた侍女によって運ばれるが、バルコニーで他の者の悲鳴があがる。

 小人族の長もまた血を吐いて倒れていた。

頭上で起こる騒動に民衆にも動揺が走る。しかし、その動揺もすぐに狼狽に変わった。民衆の中でも血を吐いて倒れる人が現れ始めたのだ。医療に精通する者が見るが、すでに手遅れであることが知らされると広場は騒然となった。

王が王城の大広間を解放し、倒れた者の手当てにあたらせるが9割方が手遅れであった。
 

 広場にいる民衆の4分の1が倒れたころ、気づけば目の覚めるような青が広がっていたはずの空は不吉な黒雲で覆われていた。ぽつり、ぽつりと降り出した雨はあっという間に暴雨になる。天気を操る魔法を得意とする者らがいつものように豪雨をおさめようとするが一向にやむ気配はない。

次々人が倒れ、やまない豪雨に王は異常事態であることを認識し、原因を探らせるが入ってくる情報は大陸全土がこの王都よりさらに悪い状況になっているという報告だけであった。

海や河川の近くの街はほんの数刻で水没してしまった。山地にある街は土砂により埋まった。まだ残っている街もすでに半数以上の住人が謎の吐血により死に至っている。

 王都も例外ではない。

先ほど死者の数が生存者の数を上回ったと報告が入った。1番最初に倒れた第三王女は一度も目を覚すことなく既に亡くなった。

 そして、王をさらに悩ませているのが魔法を一切使うことができないことであった。

通常であれば魔法の使える混血の地方役人と情報を直接交換する。しかし、魔法が使えない今、人間が開発し魔力のない者も使える情報通信技術を使うべきであるが、それもまたなんらかの通信障害によって1刻ほど前から使えなくなってしまっていた。そのため情報が何も入らず、ただ時だけが過ぎ、人が次々と死んでいくのを黙って見ることしかできずにいた。


 ◇◇◇

 数刻前と同様に北の塔の屋根の上から眼下を見下ろす1人の少女、この大陸の第十三王女。

しかし眼下に広がる状況は一変していた。やむことのない豪雨。王都のすぐそばを流れる河川が氾濫したのか街を濁流が襲い、大陸一の美しい都市はもう見る影もない。小高い丘の上にある王城は被害をうけていないもの、あと数刻もしたらあの濁流の餌食になるであろう。

「濁流にのまれてもそれはそれで構わないわ。わたしがやりたいことはそれまでには終わらせるもの」

地獄絵図となっている王城、王都の状況にもかかわらず、王女の瞳には数刻前とは打って変わって悦楽の色が浮かんでいた。王城の大広間がある王城の中心部を一瞥すると、彼女は軽やかに屋根から飛び降りた。
 
 王女は一切濡れていなかった。

◇◇◇
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