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1、プロローグ
しおりを挟む「リフィル、お前はクビだ」
「はい?」
私、リフィル・ロレーヌはいつも通り気性の荒い魔物達の世話をした後、珍しく王子アンゼル・ガルシアに呼び出され、着くなり彼の第一声は一方的な解雇通告。
一瞬頭が真っ白になった、否、理解することを拒んだ。
しかし感情なんてものは時間が経てばたやすく冷やされ、冷静にさせられる。
冷静になってしまえば必然、相手の言うことを論理的かつ合理的に受け止めれてしまう、それが人間というものだ。
事実、私は王子の言葉の意味を把握した。
だが、理解するのと解決するのはわけが違う、
理解したところで打開策がなければ破滅的未来しかない。
しかしそんな都合のいいもの用意できてるわけもなく、額に脂汗をかきながら必死に頭を回転させるが時すでに遅い。
「だから宮廷調教師をクビだって言ってんの」
私の都合などどうでもいいのだろう、容赦なく追い討ちをかけてくる王子、もちろん納得できるはずもなく猛抗議する。
「い、意味がわからないです!!なんでいきなり………」
さも面倒そうに眉を寄せる王子。
(……だがこちらも人生がかかっているので説明ぐらいされなきゃ辞めるに辞められない)
「だってお前、動物とか魔物に餌をあげてるだけじゃないか」
王子の言葉を聞いた瞬間、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
(……そんな風に思われていとは、いやそう考えてるやつもいるだろうなと思っていたがまさか王子までそうだったとは)
「「長年働いてきましたぁ~」って言ってもお前雑用以外なんかしたっけ?誰でもできることやってただけだろ?」
(…….そうだな、そうだよな、誰でもできることを長年やってただけの私なんてただのサボリ魔だと思われていたのだろう)
完全に心が折れたリフィルは投げやりに返答した。
「…………わかりました」
「よしお前にしては物分かりがいいな、ほら、最後の給料だ」
「………はい、ありがとうございます…………」
何も感情を挟まず返事をした。
「陛下、一つお聞きしても良いでしょうか?」
「なんだ?」
「私の後任は決まっているのでしょうか」
「決まっておらんが?」
「失礼を承知で申し上げますが、自分がいなくなったら魔物や動物達はいうことを聞かなくなります………ですから後任は早めに決めたほうがよろしいかと」
「は、なんだそれは、苦し紛れにしてももっと良い言い訳は思いつかなかったのか?、もう良い、下がれ、今日中にここから出ていけ」
「~ーー承知いたしました、今晩荷物をまとめて出ていきます」
長年お世話になっていたの事実なので、最後に忠告だけして、小さな袋を持って部屋を退室する私。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、 すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません」
「謝れば済む問題ではないのよ!!」
「アウッッッーーー!!!??」
実の母に謝罪を嵐のようにぶつけるが、許されない、許されるわけがない、顔を殴られる。
「ロレーヌ家始まって以来ッッッーー、一番の出世頭が聞いてッッッーーあきれッッーーるわッッッーー!!」
「ごめッッッーーなさッッッいーーすいまッッッせんッッッーーガハッッ」
「ふざけないでよッッッーー!!」
「ガハッッーーゴフッッーースッッみッッまッッガハッッーー」
言葉で責められ、罵倒の言葉尻の最後は言葉だけでは済まず顔を殴られる、何度も……何度も何度も何度も何度も何度も、私は謝罪することすらできず、謝罪は短い悲鳴へと変換される……
宮廷調教師をクビになったその瞬間世界は一変した、全員手のひらを返すように罵倒、嘲笑、蔑称、私の最後の希望は婚約者だけだ、彼だけは態度をかえなかった、会いたい、早く彼に会いたい。
「ハァッッーーハァッッーーーハァッーー、あんたの顔を見てるとむかつくわ!!!、とっとと消えなさい!!」
「ッッッーーガハッッーーー??!!!!」
母は私を殴っても少しも機嫌は治らず、むしろイライラが増しているような気さえしてくる、トドメとして床に這いつくばっている私の腹に蹴りを入れてそのまま二階の窓から叩き落とされる、瞬時に受け身をとるも衝撃を吸収できるわけもなく、短い悲鳴をあげて、その場に蹲る。
「……………うぅぅぅぅぅッッッーーーー」
体というのは正直なもので母という脅威から遠かったと思ったら、気が抜けて涙が流れ始める………嗚咽を漏らしながら泣き続ける私。
「何をそんなに悲しんでいるのかな」
「ディ、ディラン!!、来てくれたのね……あれ?、マーガレット……何で一緒にいるの?」
私の妹、マーガレットが何故かディランの近くにいた。
「僕の新しい婚約者さ」
「ーーーえッッッッ?」
「いつ見てもボロボロですっごく醜い~」
「………え?、私……との……婚約……は?」
「そんなもの破棄に決まってるだろう」
「ダメです、ディラン様♡、こんな所でッッッ♡、ブスも見ておられます♡」
「見せつけてやればいいじゃないか、君は気持ちよくなることだけを考えていればいいんだよ……」
「…………そっか……ここが地獄か……」
ディランとマーガレットの男女の愛し合いが目の前で始まる、ねっとりとした触れ合いを見せつけられ、私は真実にたどり着いた。
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