上 下
3 / 48

2、第八王子アルバート・ノーザン

しおりを挟む

「……………」


『主人よ……大丈夫か』

「………大丈夫、心配してくれてありがとう」

……婚約破棄され、家を追い出され、式神『十二天将・白虎』が私を心配して、小さい状態で出てくる、肩に乗せて移動中、白虎の毛並みを撫でることであの鬼畜共に対するストレスを軽減させる。

「さて、どうしたもんか」

「おい貴様!!、コヨミ・ヴァーミリオンか!!!」

「はい?そうですけど」


胸糞悪い事情のせいで急遽帰る家を無くしてしまった私、一応、近くに実家があるので今日はそこで泊めてもらう気だった、最悪、父さん母さんまでも豹変していたら宿に泊まろう、それぐらいの金は持っている、適当に街中を歩いていると、後ろから声をかけられる、良い服着ている男の子だ、どこかの貴族の子だろうか?。

「『黒猫』と名高いお前がどれだけ強いか興味がある!!」

「はぁ…………」

どこで私の事を知ったのかわからんが、今は子供のおままごとに付き合う気分ではない、なんとか適当に誤魔化せないものか。

「ーーーー正々堂々勝負!!」

「ーーーおわっと!!」

突然斬りかかってくる少年、横薙ぎに振るわれる剣を私はなんとか後ろに飛んで避ける、しかし避けたのは良いが無理にバックステップをした代償に体勢を崩してしまい、後ろにずっこけてしまう。

「ーー痛ッッッ」

ズッコケた際に後頭部を地面に打ち付けてしまう私。

「さすが!!!!、俺の剣を避けるとはやるな!!!」

「………良い加減しろ」

「え?」

…………次から次へと訳のわからん事態と後頭部に加わった衝撃………私の何かがプツンと切れた音が聞こえた。

「お望み通り、厄日にしてやるよ」

「やっとやる気になったか!!、よし勝負はこれからーーー痛ッッッッッ??!!!」

「………遅いんだよ」

キレた私は高速で少年の後ろに回り込み、一応残っている理性が殺したらまずいと言っているので、手加減した蹴りで空中へと吹っ飛ばす、なんせこっちは戦場帰りだ、そこら辺の餓鬼がこっちの動きについてこれるわけがない。

「『式神召喚、十二天将、勾陳 』………潰せ」

「ーーーウギャッッッ??!!!」


私が呟くと、牛ベースの巨人が現れ、空中にいる子供を手ではたき落す………もちろん手加減させた、手をどかさせると、うつ伏せの大の字で気絶している子供。

「さてと、勢いでやっちゃったけど、誰なのこの子………なんか見たことあるような…………」

「ーーーぼ、ぼっちゃま!!!、大丈夫ですか!!!!」

「ああ、保護者か、んじゃあとよろしく………」

「ま、待ちなさい!!!!」

「何?、その子がいきなり斬りかかって来たんだから正当防衛だよ」

「こ、このお方は次期皇帝陛下候補、第八王子アルバート・ノーザン様ですぞ!!!」

「はい?」


いきなりの言葉に素っ頓狂な声をあげてしまった私。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(私ってとことんツイてないな)

「ハッッッッ??!!!、俺は一体」

「おお、目覚めましたか坊っちゃま、爺は心配しましたぞ」

取り敢えず、王子様をのしちゃったわけだからそのまま帰るわけにもいかず、でかい馬車で王宮へと連行される私。

「ーーーあ!!、お、お前は」

「あ、その、さっきは失礼しまーーー」

「さっきのもう一回やってくれ!!!」

「「「「はい?」」」」

「さっきの召喚獣だ!!!誰であろうと決闘では手を抜かない!!尊敬に値する戦士だお前は!!!」

アルバート様が私に気づく、取り敢えず誠心誠意謝罪をしようとすると、アルバート様が興奮した様子で私をキラキラした目で見てくる、その場の全員が素っ頓狂な声を異口同音で呟く。

「………お、お褒めに預かり光栄です………」

どうやら怒ってはいないようなので一安心する私、無難な返答をする。

「なぁ!!!、もう一度見せてくれよ~」

「す、すいません、馬車の中で出すのは危険なので………」

「そっ………か」

どうやらアルバート様は私の式神が気に入ったらしい、興奮した様子で出してくれと言ってくるが………小型で出すならいざ知らず、馬車の中でさっきのデカさで出そうものなら、馬車は一瞬で木屑に早変わりする、はいそうですかと頷く訳には行かない、丁重に断る私。

「……………え、えっと………ひ、広いとこなら………良いですよ」

「ほんとか?!!」

断った瞬間、王子様の様子に、さっきまで尻尾をぶんぶん振っていた犬が尻尾をダランと垂らすのを幻視する…………居た堪れなくなった私はつい口が滑ってしまう………そうこうしている間に王宮へと着く私達。


「ここならば良いだろう!!!」

「は、はい、『勾陳』 」

「おおおおお!!!!!」

馬車から降りた瞬間に催促してくる王子様、広さは十分なので式神を再度召喚、すると目を輝かせるアルバート様。

「あそこをちょっと壊してくれ!!!」

「ちょ、ちょっとはそれは危ないかと」

召喚した後、なんか王宮をミニチュアみたいなノリで破壊してくれと要求してくるアルバート様、流石に王宮をぶっ壊すとかテロリストみたいな事はしたくない。

「ええ、つまんない~」

「あまりレディーを困らせてはいけないよ、アルバート」

「あ、ロイ兄さん!!」

またまたなんか高貴そうなお方が登場してアルバート様を諌める。

「あ~、そろそろ私はお暇します」

「失礼ですが、もう少しだけお付き合いいただけませんか、弟の件も謝罪したいので……」

「わ、わかりました………」

約束も果たしたので、こんな場違いな所とっとと退散しようとするも、アルバート様の兄に引き止められる、兄と言う事は必然的に彼も王子ということで、王子様の意見を無碍にできることもできず、王宮の中へと案内される私。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧
恋愛
 声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。  婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。  待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。 新しい風を吹かせてみたくなりました。 なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

処理中です...