上 下
17 / 46

17、コトハvsアレシア・ロレーヌ1

しおりを挟む

「貴女がコトハかしら?」

「?、そうですが………何か御用ですか?」

「ご、御用も何も、最近ハルバート様が貴女の話ばっかりしてるの!!!!、私の婚約者に無闇やたらに誘惑しないでいただけないかしら!!!」

………今私には家がないので王宮の空室を貸してもらっている、数少ない休日に思わぬ来客が舞い込んできた、彼女はアレシア・ロレーヌ、五大貴族の一角を担うロレーヌ家の次期当主、まだ流石に年が若すぎるので今すぐ継ぐというのは無理だが、将来的には大貴族の大黒柱となられるお方……ちなみにだがハルバート様とは婚約関係らしい………。

「え、えっと、その、アレシア様?、誤解していらっしゃるようですが、私はハルバート様を誘惑などしておりません」

「何を言っているの!!、じゃあどうして私の誘いを断って、貴女とのトレーニングにうつつを抜かしてばかりなの!!!」

「え、えーーと………」

………トレーニングにうつつを抜かすって特殊な言葉初めて聞いたな…………。

「良いわ、しらばっくれるっていうならここは正々堂々、決闘よ!!、これで貴女が私より上だというのならば納得出来るし、私より下ならばもう二度と私のハルバート様を誘惑しないで!!」

「あ、は、はい、分かりました………」


…………ここでおっ始めるわけにも行かないので、王宮の中では唯一と言っても良いくらい広くて、そこそこ自由に扱って良い空間の中庭へと移動する私達。

「あれ、コトハ?、今日は休みじゃなかったのか?」

「あ、いや、その………そ、そんな事より自主練してたんですか?、偉いですねハルバート様」

「え?\\\、じ、実はそうなんだ\\\………でもちょっとカッコ悪いな………」

「カッコ悪い?」

「………コトハに内緒で、コトハの想像以上に鍛えようと思ったのに……もうバレちゃった……」

「そんな、全然カッコ悪くなんてないですよ、むしろかっこいいですよハルバート様」

「か、カッコイイか?!!\\\、そ、そうか\\\\」

「………でも、あんまり無理して鍛えちゃ駄目ですよ、体が壊れちゃいます」

「わ、わかってる\\\\」

どうやら中庭には先客がいた、セバスチャンさんを護衛にハルバート様が自主トレをしていたようだ、何故休みなのにこんなのところにいるのかと聞かれるが、なんて答えたらいいのかわからず、話を逸らすため私は褒めると………実際に感心はしているが………、ハルバート様は分かりやすく照れる、しかし、すぐに落ち込むハルバート様、なぜか理由を聞くと、どうやら秘密の特訓で私の想像以上に体を仕上げて驚かすつもりだったのに、すぐにバレてしまい、カッコ悪いと思っているようだ、しかしそんな事は全然無い、むしろ自分の意志で辛いトレーニングをしているハルバート様はカッコイイと伝えると、さっきまで落ち込んでいたのにすぐに元気に、嬉しそうに笑顔になるハルバート様………セバスチャンさんがいるから大丈夫だとは思うが一応オーバーワークには注意を一言入れておく。

「ーーッッッッッッッ何遊んでるの!!!、早く構えなさい!!!」

「あ、はい」

ハルバート様と話してて、すっかり忘れてしまっていたアレシア様に怒鳴り散らされて、剣を構える私………どうやらさっきの会話も誘惑のうちに入るのか、彼女は顔をやかんの様に熱く、沸騰させ、私と同じように剣を構える彼女、私たちが話し込んでいる間に中庭に結界を張ったのか、これでこの中でいくら怪我しようが、死んだりしても、結界の外へ吐き出されるだけで済む。

「なんだアレシア?、コトハとやるつもりか?、やめといた方が良いぞ!!、なんせコトハはーーー」

「ーーー絶対勝ちます!!!」

「ーーお、おお??!!」

よく事情をわかっていないが、雰囲気から今から私達二人が戦うとわかったハルバート様はアレシア様に忠告しようとするが、食い気味に勝利宣言をするアレシア、ハルバート様は怒鳴られて一瞬言葉を失う。

(………とりあえず手加減して、勝たせてないとーーー)

「ーーーイキますわよッッッッ!!!!」

「ッッッッ??!!!」

神速の踏み込みで突っ込んできて、突きを繰り出してくる、思わぬ速度につい瞠目してしまう私。

「ーーーおわッッッッと」

「ーーーガハッッッッ??!!」

あまりの剣の腕に手加減などできず、反射神経の赴くまま、命じるままに、彼女の喉に向けての突きを剣で受け流し、空いてる拳で彼女の腹にパンチを決め込もうとするが、彼女は間一髪ギリギリ、手でガードする、しかしそれこそが私の狙いだった、意識を上体へ向かせ、足元の注意を散漫にさせる、そのまま彼女の足を私の足で払い除け、転ばせた後、お返しとばかりに彼女の喉元に剣を添える、ここまで約数秒の出来事だ。

「ーーッッッッ!!?」

「やっぱりコトハの勝ちだ!!」

(…………ヤッベェ~……思った以上にできるから、反射的に体が動いちまった………)

「~ーーーうぅぅ………」

「ーーーえ、あ、だ、大丈夫ですか、アレシア様」

「ぅぅぅ……」

剣を突きつけて静止した私の勝利を喜ぶハルバート様、しかし、その言葉がその場に響いた瞬間、アレシア様は涙目になる、私は慌てて彼女を起こすが、アレシア様はその後も涙目で俯いてしまった。

(や、やっべぇ~………どうしよう)

その場でオロオロするしかない私。

「お、おい、アレシア……どうしたんだ……?」

「だ、だって……私、負けちゃった……………」

アレシア様が泣いているので、ハルバート様は困惑しながら彼女に泣いてる理由を聞く、彼女はシンプルに私に負けたからと返答する。

「だったら勝つまでやれば良いじゃないか」

「え?」

なぜ私たちが試合してるのかもわからないハルバート様は自然に呟いた、困惑するアレシア様。

「俺の中のお前はそういう人間だ、直向きで努力家で負けず嫌い………でも、だからこそ諦めるってことをしない、今日勝てないなら明日、明後日勝てない一週間後、半年勝てないなら一年後………そうやって未来の自分の力になるよう一生懸命今できる努力を積み続ける、そうしていけばきっといつかはコトハにも勝てるさ」

「ほ、ほんとでしょうか?」

「ああ!!、きっと勝てるさ!!、そうだ、俺と一緒にコトハに鍛えて貰えば良いじゃないか?」

「へ?」

ハルバート様の言葉で多少元気を取り戻したアレシア様………そこまでは私にとって都合が良かったが、最後の最後で教え子が増えるという流れ弾が飛んできて、アホみたいな声しかあげられない私。

「コトハに勝つ方法をコトハから聞けば良いんだ!!、本人なら何をされるのが一番嫌かわかるはずだからな!!」

「な、なるほど、さすがハルバート様ですわ!!」

(そ、その発想はありませんでしたわ……ハルバート様がトレーニングにうつつを抜かしているのであれば一緒にやればずっと二人っきりという事ではありませんの!!、トレーニングに飽きたらそのまま二人で遊べるし、どっちに転んでも大丈夫)

「良いよなコトハ?」

「あ、はい、勿論ですよハルバート様」

……ただでさえ、王族のハルバート様の護衛でお腹いっぱいなのに、五大貴族の跡取り娘が攫われたり、万が一にも殺されたりしたら、私の責任問題になるので、正直に言って拒否したかったが、ハルバート様にキラキラした眼で見られたら私には肯定以外の選択肢はなかった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。 ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。 そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。

魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜

まつおいおり
恋愛
毎日毎日、国のトラブル解決に追われるミレイ・ノーザン、水の魔法を失敗して道を浸水させてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して火事を消火してほしいとか、このガルシア国はほぼ全ての事柄に魔法や魔道具を使っている、そっちの方が効率的だからだ、しかしだからこそそういった魔力の揉め事が後を絶たない………彼女は八光聖女の一人、退魔の剣の振るい手、この剣はあらゆる魔力を吸収し、霧散させる、………なので義妹達にあらゆる国の魔力トラブル処理を任せられていた、ある日、彼女は八光聖女をクビにされ、さらに婚約者も取られ、トドメに国外追放………あてもなく彷徨う、ひょんなことからハルバートという男に助けられ、何でも屋『ブレーメンズ』に所属、舞い込む依頼、忙しくもやり甲斐のある日々………一方、義妹達はガルシア国の魔力トラブルを処理が上手く出来ず、今更私を連れ戻そうとするが、はいそうですかと聞くわけがない。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

【完結済】いじめ?そんなこと出来ないわよ

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 なんか、いじめてたとかどうとか言われてますが、私がいじめるのは不可能ですわよ。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ

やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。 素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。 ※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 本編は37話で完結、毎日8時更新です。 お楽しみいただけたらうれしいです。 よろしくお願いいたします。

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

処理中です...