上 下
3 / 5

3、王宮

しおりを挟む

「さぁようこそ我が王宮へ」

「………なんで金持ちって何でもかんでも無駄にデカくするのかねぇ…………」

………成り行きで王宮に連行される私達、ハルバートのプライベートスペースにゴミ山ごと流し込まれる。

「さて……と、遅めのティータイムでも楽しむとしますか」

「ーー!!」

「………フィー姉、僕もお菓子食べたい」

「我慢しなさい、鉄屑を食べれば私達は生きられるでしょう」

「……でも……」

「そ、そんな目で見られても無い袖は振れないの」

「……………ごめん」

「あ、いや、別に怒っているわけじゃーーー」

私達の目の前で高級そうなお菓子をダージリンティーで飲み干していく………鉄竜人の私や鋼狼人のルーガスは鉄屑さえあれば別に死ぬ事は無い………しかし、最初からこういう体だったわけじゃなく、突然変異でいきなり出来た副作用ゆえの偏食だ、常人の時の食事が恋しく無いといえば嘘になる………今でも固く冷たい金属や鉱石の味はぶっちゃけ不味い………だが、金がない私達にはどうしようもない、我慢できるものがあるならそれで耐えるしかないのだ…………。

「………なんのつもりよ、貧乏人の目の前で見せびらかしながら食うなんて………流石に悪趣味がすぎるんじゃない?」

「おやおや、見せびらかすなんてそんなつもりは微塵も無いよ、君たちも食べたければ好きに食べれば良い」

「「ーー!!!」」

「じゃ、じゃあ」

「待ってルーガス!!」

「?、どうしたのフィー姉?」

あまりの趣味の悪さに悪態をつく私、ハルバートは飄々とした調子で、私達をお茶に誘ってくる、ルーガスはなんの疑いもなくお菓子や紅茶に手を伸ばそうとするが、私はそれを制する。

「………それ食わせて、パートナーの件を断りづらくするって魂胆か?」

「………おや、バレてしまったか………流石、元ヴァーミリオン家きっての神童、お腹が減ってても腹の探り合いが上手いな………けど、バレたところで関係ないさ」

「…………?」

狙いがバレたというのになおも余裕の態度を崩さないハルバートに首を捻る私………だが、すぐその疑問は氷解した。

「食べちゃダメなの?」

「ーーー!!、あ、いや、その….…」

「お兄ちゃんが食べて良いって言ってたのに?」

「………………」

「な?、関係ないだろ?」

「こ、このぉぉ………悪魔めぇぇぇ………」

………さっきまで目を輝かせて尻尾をブンブン振ってたのに、ダラーンと垂れ下がった尻尾とウルウルと上目遣いで見つめてくるルーガス…………この天使に辛い現実を躊躇いなく教えることができるなら、ソイツは鬼だと断言できるだろう………言葉を失っていると、悪魔の笑みを浮かべたハルバートに肩を叩かれる、私は苦し紛れに呟く……。

「美味しい♪」

「だろう?、好きに食べてくれ………おや?、リフィルは食べないのかい?」

「いらない」

「そうか………こんなに甘いのに…………」

………結局、普段食べられないお菓子を目の前にしているルーガスに食べちゃダメなんて言えるわけもなく………食わせてしまっている………せめてもの抵抗として私は食べない事にする、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーーーー夏休みまで」

「?」

お菓子でお腹が膨れ、ルーガスが私の膝で寝こけてしまった………狼特有の硬くも柔らかくもある毛が生えている狼耳を撫でながら、ハルバートに交渉を持ちかける。

「夏休みまでの仮契約、それでどう?」

「…………良いのか?、別に食べたら契約しろなんて約束はしてないだろ?」

契約には仮契約と本契約というものがある、一時的に組み、容易に契約を切れるのが仮契約、したら最後、一生切れない契約が本契約、その分、仮契約よりパートナーへの魔力の伝導率が高い………らしい、仮契約ならそこまで手間をかけず、契約を切れるので、借りを返したら後は適当に契約を解けばいい。

「…………どうせ、交渉材料にはする気なんでしょ?、それに恩を仇で返すようなことだけはしたくない、それをしたら………心まで醜い化け物になっちゃう気がする…………」

「本契約じゃないのが少し不満だが…………レディーにこれ以上譲歩させる訳にはいかないな、よし乗った!!」

「私は良いから、契約中、できればルーガスの衣食住も補償してほしい……」

「何を当たり前な事を、勿論、我がパートナーもエスコートさせて貰うよ」


下心ありでされた事だが、それでもルーガスの腹を満たしてくれたのは事実だ、その分はちゃんと返したい………とりあえず夏休みまでは付き合うことに決めた私。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜

御用改
恋愛
毎日毎日、国のトラブル解決に追われるミレイ・ノーザン、水の魔法を失敗して道を浸水させてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して火事を消火してほしいとか、このガルシア国はほぼ全ての事柄に魔法や魔道具を使っている、そっちの方が効率的だからだ、しかしだからこそそういった魔力の揉め事が後を絶たない………彼女は八光聖女の一人、退魔の剣の振るい手、この剣はあらゆる魔力を吸収し、霧散させる、………なので義妹達にあらゆる国の魔力トラブル処理を任せられていた、ある日、彼女は八光聖女をクビにされ、さらに婚約者も取られ、トドメに国外追放………あてもなく彷徨う、ひょんなことからハルバートという男に助けられ、何でも屋『ブレーメンズ』に所属、舞い込む依頼、忙しくもやり甲斐のある日々………一方、義妹達はガルシア国の魔力トラブルを処理が上手く出来ず、今更私を連れ戻そうとするが、はいそうですかと聞くわけがない。

カウンターカーテシー〜ずっと陰で支え続けてきた義妹に婚約者を取られ家も職も失った、戻ってこい?鬼畜な貴様らに慈悲は無い〜

御用改
恋愛
義父母が死んだ、葬式が終わって義妹と一緒に家に帰ると、義妹の態度が豹変、呆気に取られていると婚約者に婚約破棄までされ、挙句の果てに職すら失う………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、主人公コトハ・サンセットは呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまでの鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。 待ってましたッ! 喜んで! なんなら物理的な距離でも良いですよ? 乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。  あれ? どうしてこうなった?  頑張って断罪劇から逃げたつもりだったけど、先に待ち構えていた隣りの家のお兄さんにあっさり捕まってでろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。 ××× 取扱説明事項〜▲▲▲ 作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想、動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+ 皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。 9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ⁠(⁠*゚⁠ー゚⁠*⁠)⁠ノ

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

【完結】前世で私を殺したのは、婚約者様ですか?

花見 有
恋愛
アヴィリアス帝国が2つの小国を併合してから500年。アヴィリアス帝国では、大転生時代と言われる程、多くの転生者が現れ始めた。 そんな中、公爵令嬢のエリーナも前世の記憶が蘇り、転生者だという事が判明する。 ただ、エリーナの思い出した前世の記憶は、自身の胸に短剣が刺さり、死にゆく場面。さらにそこに一緒にいる人物は、現世の婚約者ルドルフ皇太子殿下の前世の姿であった。 ※『【番外編】前世で私を殺したのは、婚約者様ですか?〜転生者達のその後〜』 を投稿しました。

処理中です...