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4、成り行きで
しおりを挟む「コボルト10体っと……はい、合格です、これで今日からリフィルさんは冒険者です、おめでとうございます」
「よし、ありがとうございます」
冒険者ギルドに着いた私はコボルトの魔石を提出し、受付嬢さんに鑑定してもらい、無事に試験を突破できたようだ、これで私も冒険者の仲間入りだ。
「こちらをどうぞ」
「これは?」
受付嬢さんから金属板のようなものをもらう。
「冒険者カードです、冒険者の身分証ですね、これを持っていれば冒険者しか入れないような施設の利用も可能になりますし、ランクが上がるたびに特典も増えていきます、再発行は可能ですが、最低でも二、三日はかかりますし、度重なる紛失は資格剥奪となりますのでご了承お願いします」
事務的な説明を受け、冒険者としてのマナーや心構えなどを一通り指導された後、詳しいことはこのマニュアル本を見てくれと言われ、受け取る私。
「最後にこちらがコボルトの魔石10個分の報酬になります」
銅貨30枚を受け取る。
「……ありがとうございます……」
Fランクの魔物なので、報酬は少ないが、それでも今は懐事情が厳しいので報酬はありがたい。
「……あ、その、試験とは別なんだけどに倒した魔物の素材を鑑定して欲しいんだけど、いいですか?」
「おお、そうですか、大丈夫ですよ」
「そう、それじゃあ、これなんだけど………」
リュックの中から回収していた、オーガの素材でも一番貴重なツノの部分と、魔石を手渡した。
「~ーーこ、これは、オーガのツノですか??!!」
「あ、はい………その、偶然出くわしてしまって…………もしかして資格取得前に狩っちゃったんで無効でしょうか?」
驚愕に目を向く受付嬢さん………その狼狽ぶりに不安を覚えてしまった私は再度、確認をとる。
「い、いえ、その、大丈夫ですよ、ただ、まさかまだ試験中の新人がD +ランク相当の魔物を倒すなんて前代未聞でして……その、この素材が本当にオーガのツノと魔石なのか、一日二日、入念に調べてもよろしいでしょうか?、もしこれが本物ならFランクからEやDランクへと昇格も視野に入ってくる事なので………」
………なるほど、確かになりたてホヤホヤの新人が持ってきたものをそう簡単に認めてしまって、後々、鑑定ミスでしたとか、偽物でしたとか、だった場合、色々問題が起きそうだし、しっかり調べなければならないのだろう。
「……わかりました、しっかり調べてくだーー」
「おいテメェ!!、何俺たちの獲物を横取りしてくれたんだ??!!」
「ーーーさい?」
不意に筋骨隆々の大男が喧嘩腰で話しかけてきた。
「………なんですか?」
「だから、俺達が弱らせた獲物を横取りするなって言ってんだよ」
「………弱らせた?」
「ああ、近くに人狼の死体が転がってなかったか?」
「多分その人狼、私が助けたけど………」
「は、悪運が強いやつだな」
「…………」
…………少し話しただけだが、どうやらコイツは人を不愉快にする天才のようだ………。
「お、おい、何やってんだカスト!!」
「おお、ルーガス、せっかくテメェに見せ場を与えてやったのに、こんな女に横取りされやがって情けねぇ男だぜお前は、ビーストテイマーなんていう弱い奴をお情けでパーティーに入れてやったってのによ」
「………言っとくけど、さっき俺のことを見捨てたの、まだ許してねぇからな」
「は、ならどうするんってんだ?、小動物との仮契約しかできない、契約者のいないビーストテイマーに一体何ができるってんだ?」
「ーーー!!」
「そもそも、炎狼族のくせに炎の魔法が使えなくて、実家から追い出されたお前なんかと契約してくれるやつなんかいねぇか!!、こりゃ失礼、ダハハハハッハ!!」
「…………」
その嘲笑に俯いて、悔しそうに歯を噛み締めるルーガス………周りの人間も、遠くから憐れむような顔をして見ている………実家でも蔑まされ、ようやく希望が見えてきた居場所の勇者パーティーからも追放されている自分と自然、重ねてしまった。
「カストさん、ギルド内でそれ以上の揉め事を起こすなら厳罰対象ですよ?」
「チッッ」
受付嬢さんの忠告に舌打ちをするカストとやら。
「その辺にしておいてやりましょうよボス」
「おおう、そうだな」
………なるほど、あらかたの事情が見えてきた………よく観察してみると、この男、さっきオーガから逃げていた男だ、取り巻き達も見た顔ぶれ…………大方このカストとかいう男と取り巻き達が自分の実力を理解せず、無謀にもオーガ討伐に挑み、逃げるためにパーティーに参加してたルーガスを囮に逃げた……といったところだろう。
「おい、待てよ」
「うん?、なんだよ………よくみりゃ綺麗な顔と良い体してんじゃねぇか、気に入ったぜ、今日アンタが世話してくれりゃオーガの件は見逃してやるよ」
「………寝ぼけてんの?、誰に契約者がいないって?」
「あん?、寝ぼけてんのはそっちだろ?、誰が好き好んで炎の出せない炎狼族と契約してくれるってんだ?、是非紹介してくれよ?ーーーーいるんならな!!!、ギャハハハハハハハ」
………我慢できなくなった私はガストを呼び止める………自分と重ねてしまったせいだろう………助けられるなら手を伸ばしたくなってしまった。
相手の下品な言葉を無視して私は喋るが、カストは無視されてもどこ吹く風、むしろもっと嘲笑してくる。
「………ルーガス、私決めたよ、貴方と契約する」
「え?」
………自分と似たような境遇の彼にシンパシーを感じてしまった、ルーガスの手を握る私。
「おいおいおい、アンタ、そいつの無能さをわかってんのか??!!」
「で、でも……俺なんかと………」
「何、さっきの告白って嘘だったの?」
「ーー!!……わかった………」
私の言葉に腹をきめたルーガスは小さいナイフを手渡してくる。
「?」
「そのナイフに、少しお前の血をつけてくれ」
「わかった」
私は言われた通り、小さいナイフで指の先を少し切って、血をつけて彼に返す。
「我契る、つがいの誓い、婚姻契約!!!」
ナイフを受け取ったルーガスは血を自身の指に垂らした後、歯で自分の指を噛みちぎり、私と彼の血を混ぜ合わせる………その後、その血を床に垂らしながら、詠唱を紡ぎ始める。
「おお、なんか不思議な感じするなぁ……」
契約が成立した瞬間、握った手から何か不思議な感覚が全身に走る…………終わった後……床に落ちた血が徐々に、お互いの手の甲に獣を模した紋章が浮かび上がる。
「………で?、誰に契約者がいないって?」
「~ーー!!、こ、後悔するぞ、そんな雑魚と契約なんかしやがって!!」
私が不敵な笑みで、手の甲の紋章を見せびらかしながら、カストに話しかけると、悔しそうな声色で捨て台詞を吐き、立ち去っていった。
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