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第12章 嵐は東の彼方からくる
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昔、荒ぶる獣ありけり。
人を喰い、土地を喰い、国を荒らしけり。
1人の巫女が現れ、摩訶不思議な祈りを唱えたり。
「鎮まり給え」と。
♦︎
跨る両足で獣の腹を締める。鬣を握りしめ、走れ走れと合図を送る。
走り抜ける木々の間、枝先が頬を掠めてぴりりとした痛みが走る。
風が冷たい。目が乾く。それでも脚を止めるなと、自分の下で牙を剥く獣に叫ぶ。
やがて森を抜け、頂きへ到達するとようやく脚を止めろと獣へ指示を出す。
見上げれば、あるのは満点の星と月だけ。
見下ろすのは、その他全て。
「……獣の牙からは誰であろうと逃れられない」
4本脚の獣に跨り、黒いマントを風にはためかせ、遥か眼下を鋭く睨む。
「裏切りは許されないのだと教えてやろう」
そのまますう、と、4本脚の獣は夜闇に溶けた。
人を喰い、土地を喰い、国を荒らしけり。
1人の巫女が現れ、摩訶不思議な祈りを唱えたり。
「鎮まり給え」と。
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跨る両足で獣の腹を締める。鬣を握りしめ、走れ走れと合図を送る。
走り抜ける木々の間、枝先が頬を掠めてぴりりとした痛みが走る。
風が冷たい。目が乾く。それでも脚を止めるなと、自分の下で牙を剥く獣に叫ぶ。
やがて森を抜け、頂きへ到達するとようやく脚を止めろと獣へ指示を出す。
見上げれば、あるのは満点の星と月だけ。
見下ろすのは、その他全て。
「……獣の牙からは誰であろうと逃れられない」
4本脚の獣に跨り、黒いマントを風にはためかせ、遥か眼下を鋭く睨む。
「裏切りは許されないのだと教えてやろう」
そのまますう、と、4本脚の獣は夜闇に溶けた。
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