捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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第11章 サザンカの長い一日

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 『た~~~のし~!!』
 『う、ぎゃあああああああ!?』
 謎の穴から続いていたまるで滑り台のような急な坂道を、毛玉猫三匹とサザンカは転がり落ちていく。
 体感的にかなり長い距離を落ち続け、ふいに坂が緩やかになったかも、と思った次の瞬間に下り坂が上り坂になり、毛玉猫達とサザンカの体は空中へ投げ出され、勢いそのままべしゃりと地面に落っこちた。
 『ぶっ!!』
 『みゃあっ!』
 『うわあっ!』
 『みっ!』
 顔面から地面に落ちたサザンカは前脚で自身の鼻を押さえて悶える。
 一方、毛玉猫達はふわふわな毛のお陰か特に落下のダメージはなかったようで、楽しかったーと跳ねている。
 『……お、お前達! わけの分からん場所へ無闇に突っ込んで行くなっ! ……ん?』
 じんじんと痛む鼻を堪え、毛玉猫達を叱る為に顔を上げたサザンカだが、その視界にはふわふわの毛玉の姿はなく。
 サザンカは慌てて立ち上がり周囲を見渡す。
 ごつごつとした岩肌の薄暗い洞窟のような空間。
 どうやらサザンカ達はその洞窟のような空間の、ある程度開けた場所に上から滑り落ちてきたらしい。
 そして奥に続くような一本道、をずんずんと進んで行こうとしている三匹の毛玉。
 『……ぉおお──い!!』
 サザンカは一足飛びで毛玉猫達の前に立ち塞がる。
 『勝手に動き回るな!』
 『ええ~っ! けち!』
 『でもでもだって、ここ、おやつないよぉ。おやつ探しに行きたいよおっ』
 『だからって何故奥に進んで行こうとするっ! 帰るぞ!』
 『みゃあ~っ!!』
 喚く毛玉猫達をサザンカはがぶっ、と口に咥える。
 まあ、ちと骨は折れるだろうが、落ちてきた穴というか坂道をなんとか登るか、と気合を入れるサザンカだったが、キナコの涙交じりの言葉に脚を止めることになった。
 『ぅええ~ん……帰り道どこお……ふえええんっ!』
 『ふぁ?』
 サザンカは毛玉猫達を咥えたまま、勢いよく振り返る。
 振り返ったそこには、落ちてきた穴がある──筈だったが、目に映るのは何の変哲もない岩壁。
 『……はっ?』
 ぽと、ぽと、ぽとっとサザンカの口から毛玉猫達がこぼれ落ちる。
 サザンカが呆然としているのをいいことに、すかさず毛玉猫達は奥へ続いているだろう一本道へ戻ろうと元気良く跳ねて行く。
 『探検だ~っ!!』
 『ねえ~おやつあるかな~?』
 『ふええん……おうち帰りたいよお~』
 『……はっ! こらあっ!! だから待たんかって……んっ!?』
 はっと我に帰ったサザンカが急いで毛玉猫達を追いかけようと顔を向ける。
 と、毛玉猫達の前方にうごめく影。
 『──っ危ねえ!!』
 『みゃっ?』
 突然ナニかが飛び出して毛玉猫達に襲いかかる。
 毛玉猫達に覆う影。
 前方へ跳ねていた小さな体は止まれない。
 ぱっくりと大きく開かれた口が、毛玉猫達を飲み込もうと──
 『……っさ、せるかあ!!』
 『ギイイイイイイッ!』
 遥か後ろから風のように駆け抜けてきたサザンカの鋭い爪が、毛玉猫達に襲いかかろうとしていた影を切り裂いて吹き飛ばす。
 『みゃあ~……びっくりした~!』
 『わっ、これ知ってるー! すらいむだあ!』
 『ふえっ! こここ怖いよおおおお! ツバキー! ラーハルトー!!』
 『……スライム? 魔物っ!?』
 サザンカは自身の爪に僅かに引っ付いて残ったベトベトの液体と、吹っ飛ばされたスライムの残骸を交互に見て真っ青になる。
 『ここダンジョンじゃねえかああああああ!!』
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