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第7章 寒い夜は一緒にいてあげる
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『お主の魂は妾が掴んでおる。たとえ何度その魂を持つ者が死んでも、何度新しく生まれ変わろうとも』
「…で、でも、俺はそんな前世?とか、全然、覚えてないのに」
不死鳥の言葉にラーハルトは狼狽える。
「不死鳥のテイムって、いろんな従魔術師が望む…それこそ協会の長老レベルの凄い人が相応しいことですよね?それを、ただ前の契約者の生まれ変わりだからって理由だけで…」
今まで努力を重ねて重ねて、それでも1度の成功もなかったラーハルトだからこそ無条件とも思える不死鳥との契約を“受け入れられない”と唇を噛む。
『…妾はお主の能力をかったわけじゃないぞ』
「え?」
『妾はずっとひとりで生きてきた。お主の魂に出会う前からずっとじゃ。それはひとりで生きていく能力も力も妾は既に持っておったからじゃ。それでも妾は生まれ変わる度にお主の魂を探す』
「どうして?」
『ずっと一緒にいてやると、約束したからじゃ。楽しい時も、それから…寂しい夜も必ず』
不死鳥が頭を近づけると嘴をラーハルトの頬へと擦り付け、クルクルと喉を鳴らす。
そんな寄り添う1人と1匹を静かに見守っていたツバキとサイモンだったが、どちらともなく唐突に「あ」と声を漏らす。
「あれ?そういえば…」
「おや、ツバキさんも気がつかれました?」
「うーん…あ、もしかして、そういうこと?」
「私も初めて遭遇するパターンですねぇ、これ。いや、ほんと、論文とか書く気ありません?」
2対の瞳がじぃーっとラーハルトと不死鳥を食い入るように見つめる。何がなんだか分からず「なんすか!?これ以上なにかあります!?」と怯えるラーハルトに、本日何度目が分からない爆弾が再び落とされる。
「あんた達ふたりが揃ってるの見て今気づいたんだけど…ラーハルト、あんたってその不死鳥の魔力にほんのり覆われてるね?」
「え?」
「通常の従魔契約だと、従魔術師の魔力が術師と従魔を繋いでいるものですが…ラーハルト君。君と不死鳥の場合はまるで真逆のようだ」
「は?」
「なんだか…うう~ん…うん…あんたを覆ってる不死鳥の魔力が、他の魔獣との従魔契約に干渉してるっぽい…?」
「…はあああ!?!?」
聞き捨てならない言葉に思わず叫び声を上げて、不死鳥からツバキ達へと視線を向け、そして再び不死鳥へ、いやしかしやはりツバキ達へ──
ぐるぐるぐるぐる回るラーハルトの首を流石に心配したツバキが立ち上がりラーハルトのすぐ近くに座り直すと落ち着けとばかりにガシリとその頭を掴んで固定する。
「あんたの従魔術師としての資質は問題ないし、知識も能力もある。でも1度も従魔契約が成功しないのはなんでなんだろうって私もずっと不思議だったけど…」
ツバキは話しながら視線を目を白黒させているラーハルトから不死鳥へと移す。
「既にとんでもないのに好かれちゃってたわけね」
「えっ、で、でも従魔1匹としか契約出来ない、とかそんなルールなかったですよね!?」
「えー、あー…それは…この世の魔獣すべてと契約交わしたわけじゃないからなんとも…」
「まじっすか!?そんな特殊な魔獣がこの世にいるんすか!?ていうか、俺自身は従魔術使って契約してないのに、契約成功って言っていい状態なんですかこれ!?」
「…」
流石のツバキもよく分からない状態なのだろう。先ほどから眉間に皺を寄せてはあ~だのう~だの唸ったかと思えば開きかけた口を1度閉じ、そして。
「いーじゃん、もう契約で。これであんたは従魔術の新たな歴史を刻んだよ。ぶっちゃけ、私もよく分からない状況だわこれ」
「師匠!?師匠やめて!諦めないでください!!」
「わあ。不死鳥との現在の契約法とは違う契約といい、ラーハルト君には是非1度首都の協会総本山までお越しいただきたいですね。そこで様々な検証を…」
「なんか怖いから嫌だ!!!」
サイモンの興味と興奮と好奇心の混ざったなんとも言えない視線に見つめられたラーハルトはひっ!と肩を震わせて不死鳥へ詰め寄る。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!契約解除して!!!」
『無理じゃ』
「なんで!?」
『そのお主達がごちゃごちゃ言ってる契約うんちゃらじゃが、昔のこと過ぎて妾もよく覚えとらん!何回も甦った前だしの!解除とやらもどうすればよいのかもはや妾も知らん!わはははー!』
「ええええ!?!?じゃ、じゃあせめて俺を覆ってるっていうお前の魔力をどうにかしてくれ!!!」
『なんでじゃ?妾がおるのに、他の従魔なんかおらんで良いじゃろ?』
「ええええ…」
ぽん、ぽん、とラーハルトの両肩にそれぞれ手が置かれる。
「これが伝説級の魔獣ですよ。伝説級って、ぶっちゃけ現在の従魔術では100%支配下に置くことって出来ていないんですよね。生態も未だに謎な部分も多いですし…あっ、これ正式にはアナウンスしてないんですけど」
「えっ」
「ラーハルト…不死鳥の従魔契約に挑戦するなってアドバイスしたけど、まさかもう契約しちゃってたなんて…。ご愁傷様」
「えっ」
『妾が甦り続ける限り、お主の魂と交わした約束もまた不滅じゃっ!』
「えっ」
訳も分からぬ内に、ラーハルト初めての、そして恐らく最後の従魔を(どうやら)獲得。
「…で、でも、俺はそんな前世?とか、全然、覚えてないのに」
不死鳥の言葉にラーハルトは狼狽える。
「不死鳥のテイムって、いろんな従魔術師が望む…それこそ協会の長老レベルの凄い人が相応しいことですよね?それを、ただ前の契約者の生まれ変わりだからって理由だけで…」
今まで努力を重ねて重ねて、それでも1度の成功もなかったラーハルトだからこそ無条件とも思える不死鳥との契約を“受け入れられない”と唇を噛む。
『…妾はお主の能力をかったわけじゃないぞ』
「え?」
『妾はずっとひとりで生きてきた。お主の魂に出会う前からずっとじゃ。それはひとりで生きていく能力も力も妾は既に持っておったからじゃ。それでも妾は生まれ変わる度にお主の魂を探す』
「どうして?」
『ずっと一緒にいてやると、約束したからじゃ。楽しい時も、それから…寂しい夜も必ず』
不死鳥が頭を近づけると嘴をラーハルトの頬へと擦り付け、クルクルと喉を鳴らす。
そんな寄り添う1人と1匹を静かに見守っていたツバキとサイモンだったが、どちらともなく唐突に「あ」と声を漏らす。
「あれ?そういえば…」
「おや、ツバキさんも気がつかれました?」
「うーん…あ、もしかして、そういうこと?」
「私も初めて遭遇するパターンですねぇ、これ。いや、ほんと、論文とか書く気ありません?」
2対の瞳がじぃーっとラーハルトと不死鳥を食い入るように見つめる。何がなんだか分からず「なんすか!?これ以上なにかあります!?」と怯えるラーハルトに、本日何度目が分からない爆弾が再び落とされる。
「あんた達ふたりが揃ってるの見て今気づいたんだけど…ラーハルト、あんたってその不死鳥の魔力にほんのり覆われてるね?」
「え?」
「通常の従魔契約だと、従魔術師の魔力が術師と従魔を繋いでいるものですが…ラーハルト君。君と不死鳥の場合はまるで真逆のようだ」
「は?」
「なんだか…うう~ん…うん…あんたを覆ってる不死鳥の魔力が、他の魔獣との従魔契約に干渉してるっぽい…?」
「…はあああ!?!?」
聞き捨てならない言葉に思わず叫び声を上げて、不死鳥からツバキ達へと視線を向け、そして再び不死鳥へ、いやしかしやはりツバキ達へ──
ぐるぐるぐるぐる回るラーハルトの首を流石に心配したツバキが立ち上がりラーハルトのすぐ近くに座り直すと落ち着けとばかりにガシリとその頭を掴んで固定する。
「あんたの従魔術師としての資質は問題ないし、知識も能力もある。でも1度も従魔契約が成功しないのはなんでなんだろうって私もずっと不思議だったけど…」
ツバキは話しながら視線を目を白黒させているラーハルトから不死鳥へと移す。
「既にとんでもないのに好かれちゃってたわけね」
「えっ、で、でも従魔1匹としか契約出来ない、とかそんなルールなかったですよね!?」
「えー、あー…それは…この世の魔獣すべてと契約交わしたわけじゃないからなんとも…」
「まじっすか!?そんな特殊な魔獣がこの世にいるんすか!?ていうか、俺自身は従魔術使って契約してないのに、契約成功って言っていい状態なんですかこれ!?」
「…」
流石のツバキもよく分からない状態なのだろう。先ほどから眉間に皺を寄せてはあ~だのう~だの唸ったかと思えば開きかけた口を1度閉じ、そして。
「いーじゃん、もう契約で。これであんたは従魔術の新たな歴史を刻んだよ。ぶっちゃけ、私もよく分からない状況だわこれ」
「師匠!?師匠やめて!諦めないでください!!」
「わあ。不死鳥との現在の契約法とは違う契約といい、ラーハルト君には是非1度首都の協会総本山までお越しいただきたいですね。そこで様々な検証を…」
「なんか怖いから嫌だ!!!」
サイモンの興味と興奮と好奇心の混ざったなんとも言えない視線に見つめられたラーハルトはひっ!と肩を震わせて不死鳥へ詰め寄る。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!契約解除して!!!」
『無理じゃ』
「なんで!?」
『そのお主達がごちゃごちゃ言ってる契約うんちゃらじゃが、昔のこと過ぎて妾もよく覚えとらん!何回も甦った前だしの!解除とやらもどうすればよいのかもはや妾も知らん!わはははー!』
「ええええ!?!?じゃ、じゃあせめて俺を覆ってるっていうお前の魔力をどうにかしてくれ!!!」
『なんでじゃ?妾がおるのに、他の従魔なんかおらんで良いじゃろ?』
「ええええ…」
ぽん、ぽん、とラーハルトの両肩にそれぞれ手が置かれる。
「これが伝説級の魔獣ですよ。伝説級って、ぶっちゃけ現在の従魔術では100%支配下に置くことって出来ていないんですよね。生態も未だに謎な部分も多いですし…あっ、これ正式にはアナウンスしてないんですけど」
「えっ」
「ラーハルト…不死鳥の従魔契約に挑戦するなってアドバイスしたけど、まさかもう契約しちゃってたなんて…。ご愁傷様」
「えっ」
『妾が甦り続ける限り、お主の魂と交わした約束もまた不滅じゃっ!』
「えっ」
訳も分からぬ内に、ラーハルト初めての、そして恐らく最後の従魔を(どうやら)獲得。
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