捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME

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第7章 寒い夜は一緒にいてあげる

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 従魔術師協会総本山より預かり処へ遥々やって来た5人の長老の内の1人──サイモンをとりあえず応接室へ通してから、ツバキとラーハルトはお茶を淹れてくるという名目で台所へと引っ込み、そして。

 「…ちょっっとぉ!!師匠!師匠師匠師匠!ぁぁぁあれあれあれ!長老!?聞いてないですよ従魔術師協会の長老が来るなんて!?!?トップの中のトップじゃないですか!!」
 「うるっさい!私だってすっごく偉い人が来るとしか聞いてなかったっつーの!!!」
 「偉い人たって、精々支部長レベルくらいかと思って、そんな感じの心構えと近所のお茶請けくらいしか用意してないんですけど!」
 「こっちだってまさか長老が来るなんて思ってなかったから普段着だわ!」

 サイモンの前ではなんとか保っていた平常心はどこか遠くへ飛び去り、2人は小声で収まる範囲内の最大声量で叫んでぜぇはぁと肩で息をした。

 「てか、長老って本当に実在してたんですね…島を引いて新大陸を作ったとか、海を割いて沈んだ古代王国を発見したとか嘘みたいな逸話ばっかりなんで、ほとんど空想上の人達かなんかだと思ってました…」
 「私も話には聞いてたけどまさか対面することになるとは…」
 「…ツバキ師匠でもビビるんですね?」

 心なしか冷や汗を流しているツバキを見てラーハルトは疑問を口にする。出会ってから今まで、冒険者としてのランクはさておき従魔術師としての技術、知識ともに並外れたツバキの姿を見てきただけに意外としか言いようがなかった。

 「当たり前でしょ!?長老ってのは本来一介の従魔術師が直接会えるような相手じゃないんだから!」
 「いや、俺はもし長老が実在するならツバキ師匠みたいな人達かなと思ってたんで…」
 「ばかやろう」

 ラーハルトの言葉にぎょっとしたツバキは眉間にぐわっと力を入れて反射的に返す。

 「いい?従魔術師ギルドの5人居る長老っていうのは、ちょっと人より優れてるとか天才とかそういうレベルじゃないの。化け物よ化け物」
 「ば、化け物ですか?」
 「そう。こっちの常識とか一切通じないからね。従魔術でやることなすこと全てが異常。理解不能。もはややらかすことが超常現象」
 「(…その辺はツバキ師匠にも言えることのような)」

 と、緊迫していた空気の中突如ピー!と甲高い音が鳴る。びくりと大仰に肩を揺らした2人だったが、白い湯気を吐き出すヤカンを見てどきりと跳ね上がった胸をおさえて息を吐く。

 「…とにかく、長老が出張ってきたのを見るとあの不死鳥は私達が思ってるよりもやばい魔獣みたいね。もしもあのサイモンって長老が個人的に不死鳥に興味があるだけなら別だけど」
 「はぁ…」

 台所に立ちお茶を淹れるツバキの横でラーハルトはお茶請けのお菓子を食べやすいように包丁で切っていく。

 「長老相手に失礼のないように。あいつらと敵対しても良いことないから!なるべく早く不死鳥を渡してとっととお帰りいただこう!」
 「ちなみに長老相手にもし、もし失礼とかあったら…」
 「この村ごと消えるわよ」
 「まじですか!?」
 「人格者だなんだ言われてるけど、要するに頭のネジの1本2本3本…ぶっ飛んだイカれ野郎だから至れる境地にいる奴らよ、長老なんてのはね。触らぬ神に祟りなし、よ!」

 ツバキの真剣な表情に、ラーハルトはコクコクと何度も神妙に頷いた。
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