22 / 92
第7章 寒い夜は一緒にいてあげる
5
しおりを挟む
従魔術師協会総本山より預かり処へ遥々やって来た5人の長老の内の1人──サイモンをとりあえず応接室へ通してから、ツバキとラーハルトはお茶を淹れてくるという名目で台所へと引っ込み、そして。
「…ちょっっとぉ!!師匠!師匠師匠師匠!ぁぁぁあれあれあれ!長老!?聞いてないですよ従魔術師協会の長老が来るなんて!?!?トップの中のトップじゃないですか!!」
「うるっさい!私だってすっごく偉い人が来るとしか聞いてなかったっつーの!!!」
「偉い人たって、精々支部長レベルくらいかと思って、そんな感じの心構えと近所のお茶請けくらいしか用意してないんですけど!」
「こっちだってまさか長老が来るなんて思ってなかったから普段着だわ!」
サイモンの前ではなんとか保っていた平常心はどこか遠くへ飛び去り、2人は小声で収まる範囲内の最大声量で叫んでぜぇはぁと肩で息をした。
「てか、長老って本当に実在してたんですね…島を引いて新大陸を作ったとか、海を割いて沈んだ古代王国を発見したとか嘘みたいな逸話ばっかりなんで、ほとんど空想上の人達かなんかだと思ってました…」
「私も話には聞いてたけどまさか対面することになるとは…」
「…ツバキ師匠でもビビるんですね?」
心なしか冷や汗を流しているツバキを見てラーハルトは疑問を口にする。出会ってから今まで、冒険者としてのランクはさておき従魔術師としての技術、知識ともに並外れたツバキの姿を見てきただけに意外としか言いようがなかった。
「当たり前でしょ!?長老ってのは本来一介の従魔術師が直接会えるような相手じゃないんだから!」
「いや、俺はもし長老が実在するならツバキ師匠みたいな人達かなと思ってたんで…」
「ばかやろう」
ラーハルトの言葉にぎょっとしたツバキは眉間にぐわっと力を入れて反射的に返す。
「いい?従魔術師ギルドの5人居る長老っていうのは、ちょっと人より優れてるとか天才とかそういうレベルじゃないの。化け物よ化け物」
「ば、化け物ですか?」
「そう。こっちの常識とか一切通じないからね。従魔術でやることなすこと全てが異常。理解不能。もはややらかすことが超常現象」
「(…その辺はツバキ師匠にも言えることのような)」
と、緊迫していた空気の中突如ピー!と甲高い音が鳴る。びくりと大仰に肩を揺らした2人だったが、白い湯気を吐き出すヤカンを見てどきりと跳ね上がった胸をおさえて息を吐く。
「…とにかく、長老が出張ってきたのを見るとあの不死鳥は私達が思ってるよりもやばい魔獣みたいね。もしもあのサイモンって長老が個人的に不死鳥に興味があるだけなら別だけど」
「はぁ…」
台所に立ちお茶を淹れるツバキの横でラーハルトはお茶請けのお菓子を食べやすいように包丁で切っていく。
「長老相手に失礼のないように。あいつらと敵対しても良いことないから!なるべく早く不死鳥を渡してとっととお帰りいただこう!」
「ちなみに長老相手にもし、もし失礼とかあったら…」
「この村ごと消えるわよ」
「まじですか!?」
「人格者だなんだ言われてるけど、要するに頭のネジの1本2本3本…ぶっ飛んだイカれ野郎だから至れる境地にいる奴らよ、長老なんてのはね。触らぬ神に祟りなし、よ!」
ツバキの真剣な表情に、ラーハルトはコクコクと何度も神妙に頷いた。
「…ちょっっとぉ!!師匠!師匠師匠師匠!ぁぁぁあれあれあれ!長老!?聞いてないですよ従魔術師協会の長老が来るなんて!?!?トップの中のトップじゃないですか!!」
「うるっさい!私だってすっごく偉い人が来るとしか聞いてなかったっつーの!!!」
「偉い人たって、精々支部長レベルくらいかと思って、そんな感じの心構えと近所のお茶請けくらいしか用意してないんですけど!」
「こっちだってまさか長老が来るなんて思ってなかったから普段着だわ!」
サイモンの前ではなんとか保っていた平常心はどこか遠くへ飛び去り、2人は小声で収まる範囲内の最大声量で叫んでぜぇはぁと肩で息をした。
「てか、長老って本当に実在してたんですね…島を引いて新大陸を作ったとか、海を割いて沈んだ古代王国を発見したとか嘘みたいな逸話ばっかりなんで、ほとんど空想上の人達かなんかだと思ってました…」
「私も話には聞いてたけどまさか対面することになるとは…」
「…ツバキ師匠でもビビるんですね?」
心なしか冷や汗を流しているツバキを見てラーハルトは疑問を口にする。出会ってから今まで、冒険者としてのランクはさておき従魔術師としての技術、知識ともに並外れたツバキの姿を見てきただけに意外としか言いようがなかった。
「当たり前でしょ!?長老ってのは本来一介の従魔術師が直接会えるような相手じゃないんだから!」
「いや、俺はもし長老が実在するならツバキ師匠みたいな人達かなと思ってたんで…」
「ばかやろう」
ラーハルトの言葉にぎょっとしたツバキは眉間にぐわっと力を入れて反射的に返す。
「いい?従魔術師ギルドの5人居る長老っていうのは、ちょっと人より優れてるとか天才とかそういうレベルじゃないの。化け物よ化け物」
「ば、化け物ですか?」
「そう。こっちの常識とか一切通じないからね。従魔術でやることなすこと全てが異常。理解不能。もはややらかすことが超常現象」
「(…その辺はツバキ師匠にも言えることのような)」
と、緊迫していた空気の中突如ピー!と甲高い音が鳴る。びくりと大仰に肩を揺らした2人だったが、白い湯気を吐き出すヤカンを見てどきりと跳ね上がった胸をおさえて息を吐く。
「…とにかく、長老が出張ってきたのを見るとあの不死鳥は私達が思ってるよりもやばい魔獣みたいね。もしもあのサイモンって長老が個人的に不死鳥に興味があるだけなら別だけど」
「はぁ…」
台所に立ちお茶を淹れるツバキの横でラーハルトはお茶請けのお菓子を食べやすいように包丁で切っていく。
「長老相手に失礼のないように。あいつらと敵対しても良いことないから!なるべく早く不死鳥を渡してとっととお帰りいただこう!」
「ちなみに長老相手にもし、もし失礼とかあったら…」
「この村ごと消えるわよ」
「まじですか!?」
「人格者だなんだ言われてるけど、要するに頭のネジの1本2本3本…ぶっ飛んだイカれ野郎だから至れる境地にいる奴らよ、長老なんてのはね。触らぬ神に祟りなし、よ!」
ツバキの真剣な表情に、ラーハルトはコクコクと何度も神妙に頷いた。
115
お気に入りに追加
2,737
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
【完結】ごめんなさい?もうしません?はあ?許すわけないでしょう?
kana
恋愛
17歳までにある人物によって何度も殺されては、人生を繰り返しているフィオナ・フォーライト公爵令嬢に憑依した私。
心が壊れてしまったフィオナの魂を自称神様が連れて行くことに。
その代わりに私が自由に動けることになると言われたけれどこのままでは今度は私が殺されるんじゃないの?
そんなのイ~ヤ~!
じゃあ殺されない為に何をする?
そんなの自分が強くなるしかないじゃん!
ある人物に出会う学院に入学するまでに強くなって返り討ちにしてやる!
☆設定ゆるゆるのご都合主義です。
☆誤字脱字の多い作者です。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。