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第一章
43、国王の吐露
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「ユーリアシェ様、お待ちください。」
カーティスは後ろからユーリアシェの手を取る。
マドルクはカーティスの行動に彼を睨みつける。
「王命に逆らえばいくら東伯の息子といえど只ではすまんぞ。」
脅すようにカーティスを睨むが、カーティスは意に介さず肩をすくめる。
「いえ、王家の醜態を外国にまで晒さない為に止めたのですよ。我等は王家の忠臣ですから。」
飄々と言い返す。国王もユーリアシェも意味がわからなかった。
「なに?」
「実は先程の除籍届と今回の顛末の手紙をスードに送り、隣国の叔母上の養女にする手続きをお願いしました。叔母の方でも既に準備していたので、手紙が届き次第、処理されるでしょう。」
「何故·····」
「ユーリアシェ様を娶れる機会を逃したくなかったので、急いでしまったのです。
まさかもう一度王族に戻すなど思ってもいませんでしたから。」
先程から初めて聞く話ばかりでユーリアシェの心は大型台風並みに荒れていた。
(待って待って!!娶るって誰が誰を?!ティス兄様って、私を妹の様に思ってたんじゃないの?!)
「計ったのか?!」
マドルクはテーブルを叩きカーティスに殺気を向ける。
部屋にいる護衛騎士も動こうとしたがカーティスが牽制するように告げる。
「何を計ると?
婚約者入替えも王太女を外したのも陛下です。
我等は国境を守る東伯です。
何通りも予測し、それに備えるのは当たり前ではありませんか。」
その言葉にマドルクは殺気を消し耐えるように目を瞑ったが、軈て手を振って人払いをした。
侍従長を残し退室した後、独り言のように呟いた。
「リーシェでは駄目だ。国が滅ぶ。」
いったいどんな心境の変化があったのか?
「陛下。いったい何があったのですか?
数刻前迄は自信を持ってリーシェを跡継ぎにすると言っていたではありませんか?」
マドルクの豹変についていけず困惑して聞く。
「ユーリアシェ、そなたを遠ざけたのは銀の髪だったからだ。」
今更何を言っているのか?
まさかユーリアシェが知らなかったと思っているのか?
「知っていたか。そうだな。なら理由も知っていよう。」
「はい」
「そなたが母上に見えて仕方なかった。だが母上に似ていたのはリーシェだ。
怠惰な所も、男を取る所も、涙で同情を買う所も!」
拳を震わせ、声を荒らげる。
「リーシェが国主となってもイルヴァンの傀儡となるだけだ。あれはリーシェを愛しているのではない。
王配になればハスターバルが放っておくまい。」
(皆解ってるよ!あんた本当に国王?!)
カーティスは呆れを隠さず諭すように言う。
「そうは言ってもあれだけ大勢の前で、国王自ら布告されたのです。
私達を捕らえでもしない限りスードに帰るのを止めるのは無理ですよ。
まあ、捕らえても先程の件で冤罪と思われますけどね。」
「わかっておる。悪足掻きだ。
·····ユーリアシェ、済まなかった。」
その声は老人のように嗄れていた。
カーティスは後ろからユーリアシェの手を取る。
マドルクはカーティスの行動に彼を睨みつける。
「王命に逆らえばいくら東伯の息子といえど只ではすまんぞ。」
脅すようにカーティスを睨むが、カーティスは意に介さず肩をすくめる。
「いえ、王家の醜態を外国にまで晒さない為に止めたのですよ。我等は王家の忠臣ですから。」
飄々と言い返す。国王もユーリアシェも意味がわからなかった。
「なに?」
「実は先程の除籍届と今回の顛末の手紙をスードに送り、隣国の叔母上の養女にする手続きをお願いしました。叔母の方でも既に準備していたので、手紙が届き次第、処理されるでしょう。」
「何故·····」
「ユーリアシェ様を娶れる機会を逃したくなかったので、急いでしまったのです。
まさかもう一度王族に戻すなど思ってもいませんでしたから。」
先程から初めて聞く話ばかりでユーリアシェの心は大型台風並みに荒れていた。
(待って待って!!娶るって誰が誰を?!ティス兄様って、私を妹の様に思ってたんじゃないの?!)
「計ったのか?!」
マドルクはテーブルを叩きカーティスに殺気を向ける。
部屋にいる護衛騎士も動こうとしたがカーティスが牽制するように告げる。
「何を計ると?
婚約者入替えも王太女を外したのも陛下です。
我等は国境を守る東伯です。
何通りも予測し、それに備えるのは当たり前ではありませんか。」
その言葉にマドルクは殺気を消し耐えるように目を瞑ったが、軈て手を振って人払いをした。
侍従長を残し退室した後、独り言のように呟いた。
「リーシェでは駄目だ。国が滅ぶ。」
いったいどんな心境の変化があったのか?
「陛下。いったい何があったのですか?
数刻前迄は自信を持ってリーシェを跡継ぎにすると言っていたではありませんか?」
マドルクの豹変についていけず困惑して聞く。
「ユーリアシェ、そなたを遠ざけたのは銀の髪だったからだ。」
今更何を言っているのか?
まさかユーリアシェが知らなかったと思っているのか?
「知っていたか。そうだな。なら理由も知っていよう。」
「はい」
「そなたが母上に見えて仕方なかった。だが母上に似ていたのはリーシェだ。
怠惰な所も、男を取る所も、涙で同情を買う所も!」
拳を震わせ、声を荒らげる。
「リーシェが国主となってもイルヴァンの傀儡となるだけだ。あれはリーシェを愛しているのではない。
王配になればハスターバルが放っておくまい。」
(皆解ってるよ!あんた本当に国王?!)
カーティスは呆れを隠さず諭すように言う。
「そうは言ってもあれだけ大勢の前で、国王自ら布告されたのです。
私達を捕らえでもしない限りスードに帰るのを止めるのは無理ですよ。
まあ、捕らえても先程の件で冤罪と思われますけどね。」
「わかっておる。悪足掻きだ。
·····ユーリアシェ、済まなかった。」
その声は老人のように嗄れていた。
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