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帰りの馬車

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セルシュ先生とアルマエル様の対決を終了させ、エジエル様に捜査の協力を無理矢理約束させられやっと教会を出れた時は夕方近かった。

馬車の中には昼寝しているアヤナとリッツヘルム。

主が体力も神経もゴリゴリ削られてるってのに優雅に昼寝とな?

私は思いっきり馬車の扉を開けて「戻ったわよ!」と大声をだした。

アヤナは後ろに仰け反り、リッツヘルムは反射で立ち上がってどちらも頭を打って悶えてる。

ちょっとスッキリ。



「お嬢様、問題無く・・・・尋問は終了したんですか?」

帰路を走る馬車の中でアヤナが後頭部を擦りながら聞いてきた。

「まあ、問題無かったんじゃない?」

·····何で疑わしい目で見てくるのよ。

「問題大有りだよ。枢機卿に喧嘩売ったんだから。」

「「えーーー?!」」

先生が私の言葉を否定したらアヤナとリッツヘルムが声を揃えて叫んだ。

「あっちが先に喧嘩売ってきたのを買っただけですわ。」

先生だってアルマエル様とバチバチやってたでしょ。

「やっぱりやると思ってました。」
「教会には逆らえないなんて殊勝さは初めだけだったんだ·····」
「殊勝なお嬢様なんておかしいと思ってたんです。」
「何かしでかすと心配しましたが、まさか枢機卿に喧嘩を売るとは·····次の就職先を見つけないと!」
「お嬢様、わ、私はお嬢様に何処までもついて行きます!」

ちょっと待て!

リッツヘルム、公爵家うちが没落決定みたいに言うな。

アヤナ、そんな覚悟はまだせんでいい!

「2人とも落ち着いて。不敬罪にも冒涜罪にもなってないから。
エジエル様は許して下さったし。」

2人はホッとして笑顔に戻った。

「よかったです。教会が寛大で」
「お嬢様の毒舌を許して下さるとは。神ノーダムに感謝を」

凄い言われようだ。
何度も言うが喧嘩売ってきたのは向こうからです。

不満が顔に出てたのか、先生が嘆息して私を見た。

「君の不満もわかるが枢機卿にまでなるとああなるんだよ。」

なぜに?

「それは神に近づくからとかですか?」

久々にアホの子を見るような目をされた。

「枢機卿から上の位は聖玉を扱う。
神判者や神義者に同情や共感で尋問の手を緩めない為に、人の感情に左右されないよう上に行くにつれて訓練されるんだ。
そうすれば心の機微にも疎くなる。
君の答えは間違ってはいないが100点の内の10点だ。」

10点。いやいや、0点でなかっただけいい。

「それにエジエル枢機卿は聖職者にしてはかなり柔軟な対応だった。
ああいう輩は自分の正義の為なら人の気持ちを踏みにじるのに全く躊躇わない者が多い。
神を持ち出した時点で君を冒涜罪で断頭台送りにもできたんだ。」

はい、すみません。ブリザード吹かせないでください。
ギリギリセーフだったのは充分にわかりました。
(先生が聞いてたらギリギリでなくアウトだと断言するのを知らなかった)

「先生もアルマエル様とやり合ってたのに。」

「相手を理解している事と、無神経さを許容出来るかは違うんだよ。」

君もそうだろって目で見ないでよ。
そうだけど。



邸に帰ってベッドで寝ようとしてたら思い出した。

屑たちの保護、頼むの忘れてた·····










    
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