新選組秘録―水鏡―

紫乃森統子

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第2部

第二十二章 理非曲直

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「君は、このまま会津様にお仕えするつもりなのかい?」
 山南は手ずから銚子を差し出し、伊織に杯を勧める。
 明里が座敷に上がる前にも勧められ、一度は断ったのだが、それでも再び杯を勧めるところを見て、伊織は自らの杯を持ち上げた。
 山南にとって今宵は、誰かに付き合ってもらいたい夜なのだろう。遊里へ誘われて来ておきながら、二度三度と酒を断るのも無粋というものだ。
 舐める程度なら、と控え目に酌を受けると、伊織はゆっくりと杯を傾ける。
「沖田君なんかは、もう今か今かと君の帰りを待っているみたいだからねぇ」
 山南はくすくすと笑いを溢して言うが、伊織はその優しげな眼差しを向けられることに躊躇を覚え、思わず視線を移ろわせた。
「それは……、私ではないでしょう。沖田さんが待ち遠しいのは、きっと近藤局長のお帰りです」
「いや。近藤さんの帰りも待ち遠しく思っているだろうけれど、彼は君のことをとても心配しているよ。顔を合わせれば、決まって君の話題ばかりだ」
 先日黒谷を訪ねてきた時の、沖田とのやり取りを思い出す。
 高木小十郎という会津藩士を伴って現れた彼に、つい自分の弱さを見せてしまった。
 家に帰れない、肉親と再び会うことの出来ない寂しさ。それを、沖田は「弱さ」だとは言わなかった。寧ろ、当然のことだと慰めてさえくれた。
 注がれた酒を一口飲み下してから、伊織は漸く山南の問いに答えた。
「新選組には、局長のお戻りと同時に戻りますよ」
「そうか。なら、良いのだけどね」
 山南は柔らかな笑みを浮かべて頷くが、元よりそういう約束の上での黒谷出向であった。
 その約定を気まぐれに反故にして良いはずもない。
 だが、続いて山南の口から出た言葉は、伊織を少なからず動揺させた。
「沖田君だけじゃない。恐らくは土方君も、じりじりしながら君の帰りを待っているのだろう」
 土方――。
 その名を耳にした途端、伊織は頬が凍り付くのを感じた。
 土方が、自分の帰りを待っている。
 伊織の面持ちが険しくなったのを見て取り、山南は困ったように苦笑をこぼす。
「そんな顔をするものじゃないよ。新選組で一番君を心配してくれているのは、恐らく土方君だろうからね」
「……本当に、そうでしょうか」
 自然、憮然とした態度を取ってしまった。
 これではまるで拗ねた子どものようだと、我ながら呆れる思いだったが、山南はそんな伊織を窘めるような大らかさを含んで笑う。
「君にひとつ、訊いてもいいかい?」
「ええ、いいですよ。……土方さんに関することでなければ」
「ははは、まあ彼に関係するかどうかは君次第だろうけれど。どうして急に黒谷へ出仕する気になったのか、少し気になってね」
 相変わらずおっとりとした口調で問われたものだったが、伊織は思わず、ぎくりと肩を縮めた。
「それは、その――」
 まさか、土方のやり方に不信を覚えて、などと言えるはずがない。
 いくら目の前にいるのが山南であっても、それでは先日の永倉や原田が起こした建白書騒動と同じになってしまう。
「………」
「――君は」
「え?」
「君は、何を為したい? 或いは、どこへ行きたがっているのだろう」
 口籠った伊織の返答を待たず、山南は重ねて問うた。
 その問いは、酷く曖昧なものだった。
 だがそれだけに、伊織の迷いを突き刺すような、的確な問いでもある。
 自分は新選組で、何をしたいのか。
 新選組隊士としての自分が目指す未来とは。
 それは少なくとも、元の時代のような平々凡々とした一市民としての営みでは有り得ない。
 だが、近藤のように武士として、幕府と大樹公の為に働く……、といった志を持つわけでもない。
 土方のように近藤を傍らで支え、尽力したいというわけでもなかった。
 また逆に、仮に会津藩への仕官が叶ったとして、そこで何をしようというのか。
「私には、そもそも志というものがないのかもしれません。私の故郷は会津で、会津を守りたいと思う。でも、私個人が佐幕や尊王、攘夷とか開国とか、そんな大それた思想を持っているわけじゃないんです」
 実際、会津出身で新選組に所属しているというだけで、自分が漠然と佐幕派であるような気がしていた。いや、事実、佐幕派であるのかもしれないが、その思想の何たるかを理解しているわけではないように思う。
 佐幕に限らず、勤皇或いは尊皇と言われる思想も、攘夷思想についても、これまで別段掘り下げて考えたことなどないに等しい。
「――なんて、こんなことを言うと、学がないのを暴露しているようで恥ずかしいのですが」
 伊織が決まり悪く笑うと、山南は意表を突かれたように目を丸くする。
 それからややあって、山南は盛大に吹き出した。
「……ぶっ! ぷぁっはははは!」
「!? やっ山南さん、何もそんなに笑うことないじゃないですか」
 吹き出されるほどおかしなことを言ったつもりはないのだが、山南のように学識ある人物から見れば、志すものがないという発言は些か滑稽に聞こえたのかも知れない。
 そう考えると、馬鹿正直に告白してしまったことが尚更恥ずかしく感じた。
「もう、山南さん酷いですよ。いくら自覚してることでも、そんなに笑われちゃあ、さすがに私も参ってしまいます」
「ははは、いやいや違うんだ。笑ったりしてすまないね」
 一頻り笑ったあとで、山南は少々むくれた伊織に詫びる。
「どうやら君は誤解しているようだ。いや、買い被っていると言ったほうがいいかな?」
「買い被る?」
 一体何を、と、伊織は小首を傾げた。
「思想や志とは、君が思うほど難しいものではないんだよ。ただ、こればかりは十人十色で、一筋縄ではいかないものだから、周りが堅苦しいことを論じているように見えるのかも知れないねぇ」
 ふふ、と小さく笑い、山南は僅かに身を乗り出して伊織に言う。
「考え方というのは、人それぞれだろう? たとえ思想や志が同じだとしても、それは根幹で繋がっているというだけの話なんだ。人の数だけ、思想も志も枝分かれする」
 だから、厳密に言えば真実全き「同志」というものは、この世にいようはずもない。
 最後にやや語気を弱めて告げた山南の表情が、伊織の目には寂しげに映った。
「山南さん……」
 思わず山南の表情につられて眉根を下げた伊織だったが、当の山南はといえば、次の瞬間には既にいつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
「志とは、人が抱く単なる望みに過ぎないのだと思う。良く言えば夢、悪く言えば欲――。叶え方や満たし方は人によって千差万別で、時に清廉であり、またある時には非道にもなる。とても我儘な正義なんだろう」
 我儘な正義。
 伊織ははっと顔を上げ、瞠目した。
 眼前の山南が、伊織の顔色の変化に気付いたのか、ゆったりと鷹揚な所作ながらも、怪訝そうに伊織の顔を覗き込む。
「? どうかしたかい?」
「いえ。何だか、正にそうなのかもしれない、と思って――」
 相反する言葉の組み合わせに違いなかったが、それは言い得て妙なものだった。
 いや、もしかすると「正義」というのは元々我儘で独り善がりなものなのかもしれない。
 優面を厳しく顰めた土方の顔が脳裏をよぎる。
 血の隊規で以て同志を纏め、組織を維持せんがためには手段を選ばず。
 苛烈で我儘で、それでも尚、一途が故に清廉な彼の正義がそこにある。
 無論、だからといって全てに納得出来るわけではなかったが。
 それでもほんの少し、伊織は溜飲の下がる気がした。
「高宮君、君は幸い冷静な人間のようだ。君ぐらいの年の子にしては珍しい。そういう君だから言うが、私は君のしたいようにするのが最良の選択だと思う」
 それに、と山南は続ける。
「あまり固定の思想や観念に囚われないほうがよろしい。如何に優れた思想も、度が過ぎればいつか虚妄の執念となり、君の身を滅ぼしかねない」
 これでは何の参考にもならないかな、と山南は苦笑したが、伊織は咄嗟にかぶりを振った。
 寧ろ、胸に閊えた蟠りを溶かす糸口を見つけた。
 そう口を開きかけた矢先、やや聞こえよがしなほどに大仰な吐息がすぐ傍に聞こえた。
 座敷に上がった時の笑顔をすっかり曇らせた、明里だ。
「やっぱり、男はんの話は難しおすなぁ。山南はんに呼んでもろても、うちにはさっぱりついていかれへん」
 それまで山南にくっつくようにしてじっとしていたかと思われた明里だが、その面持ちはほんのり膨れっ面に変化しており、山南はまたぞろ小さく吹き出した。
「やぁ、これは申し訳ない。決して君を蔑ろにしているわけではないんだ」
 ごめんごめん、と微笑みながら、山南は膨れた明里の頬にそっと触れる。
「今もこうして一人の少年が悩みを打ち明けてくれていたわけだからね。私も誠心誠意応えたかったんだ。何しろ複雑なものだからね、話が見えなくて当然だよ」
「そうどすか?」
「そうだよ。浮かない顔をさせてしまってすまないね」
「山南さんの言う通りですよ。すみません、明里さん。今の話はあくまで私個人の悩み相談のようなものですから、あまり気になさらないでください」
 伊織が山南を援護して言うと、明里は一層眉を八の字に下げる。愛嬌のある人だった。
 伊織は思わずくすりと笑みを零し、すっと立ち上がる。
「私はこれで失礼しますね。あまり遅くなっても、黒谷の上役殿にどやされますから」
 山南も明里も一様に「もう少しくらい」と引き留めたが、伊織はそれを再度断って座敷を後にした。

     ***

 伊織の手によって襖がぱたりと閉められ、座敷には山南と明里の二人きりになる。
 あまりにあっさりと帰ってしまった伊織に、些か呆気に取られてしまった感があったが、やがて山南は杯を再び手に取った。
「彼はまだ年若だけど、良い子だろう?」
「へえ、ほんまに。もう少ぅし居てはったら、うちも高宮はんともっと話してみとおした」
 明里が頷くと、山南はちらりと明里を横目で見、苦笑する。
「おや、どうやら私もうかうかしていられないようだね。高宮君を恋敵に回したくはないんだが」
「いやや、なに言わはりますのん。恋敵やなんて」
 くすくすと笑った後で、明里は不意に真顔になる。一旦目を伏せたかと思うと、明里は躊躇いがちに目線を戻した。
「あんお人……高宮はんは、会津のお人どすか?」
「うん? ああ、そうだよ」
 山南は意表を突かれたものの、有り体に答える。何ということはない質問だったが、真顔で問うようなものでもないだろう。
 明里のやや張り詰めた面持ちに僅かな違和感を覚えた山南だったが、逐一気に留めることもあるまいなと思い直した。
 山南が伊織の出自について深く掘り下げて話すつもりがないことを察したのか、明里もそれ以上、高宮伊織という人物について尋ねることはしなかった。

     ***

 時折、冷たい北風が吹きつける。
 黒谷へと帰る道すがら、伊織はふと思い立ち、屯所の近くまで歩いてみることにした。
 広沢からの用は既に済んでおり、さすがに屯所内にまで立ち入ろうとは思わなかったが、伊織自身の出発点とも呼べる新選組の屯所をその目に見ようという気になったのだ。
 幕末という、この時代。
 迷い込み、目覚めた時にはこの屯所の土蔵にいた。
 時代を逆行してきた、その出来事だけでも俄かには信じ難いというのに、伊織がここへ来て最初に出会った人々が土方と沖田であったことは、実に驚異的とも言うべき偶然だろう。
 宵闇の中、遠巻きにして眺める屯所の様子はひっそりと息を潜めるようにして、その門扉を閉ざしていた。市中巡察の隊士たちも既に任務を終えているのだろう。
 恐怖すら覚えるような静寂の中で、伊織の胸中には様々な思いが交錯していた。
 いずれ近く、新選組はこの屯所を後にすることになる。
 新選組が京で初めて身を寄せた、壬生の屯所を出て――。
(そして、それよりも早く、あの人は……)
 つい先刻まで言葉を交わしていた、山南敬助。
 このまま時が流れてゆけばきっと、屯所が新たな場所へ移転するよりも早く――、次の春さえ待たずに、彼の命は失われることになるだろう。
 他でもない、彼自身の手によって。
 少なくとも伊織が現代で得た知識では、そういうことになっている。
 現代にいた頃は、過去の出来事として記されたものを単純に目で追い、それに思いを馳せるだけでよかった。
 けれど、今は。
 その知識は単なる過去の出来事ではなく、これから辿る道行きの標となっているのだ。
 そして、それに抗い、新たな道筋を切り開く術など皆目見当もつかない。
 暗い、この時代の夜の闇のただ中に置き去りにされたような気がしてならなかった。

     ***

 どれほどの間、屯所の様子を眺めていただろうか。
 それまで風と虫の声しかなかった静けさの中に、砂利を踏み締める音が割って入った。
 それは伊織の足元から起こった音ではなかった。
 今も暗い夜陰の中にある、屯所の中から聞こえてくるものだった。
(ああ、まずい。誰か来るな)
 本来、現在も一応は隊士の一員であることを思えば、何もまずいことなどないはずだったが、こんな目も利かぬ夜半にただじっと突っ立っていれば、不審に思われても文句は言えない。
 少し長居をし過ぎたかと、伊織は黒谷の方向へ踵を返した。
 踏み出した伊織の下駄が砂を噛むと、屯所の中から聞こえていた砂利の音が止み、代わりに下駄が敷石を鳴らす、からんという高く渇いた音が響いた。
「おや、帰ってきたのかと思ったら、もう思い直してしまったんですか」
 夜の静けさを破ったその声は、明るく弾んだものだった。
 咄嗟に背後を振り返ったが、屯所の門から出てきた人影が誰のものなのか、瞬時には判別がつかない。
 夜陰の中に、更に深い闇の色をした人影だけが伊織の視界に入る。
「……」
 よくよく凝視するも、かの人が割合に大柄な人物だと知るのがやっとである。
「やだな、私ですよ。そんなに身構えなくても、別に取って食ったりしませんってば」
 人影が朗らかに笑う声を聞き、伊織は漸くその声の主を知った。
「沖田さん……!」
 それがよく見知った相手と分かると、身体は不思議なもので、殆ど反射的にその人の許へと足が向かっていく。
 屯所の門から表へ数歩というところまで、互いに歩み寄っていた。
「こんな時間に、外出ですか?」
「高宮さんこそ、こんな時分にどうしました? ふふ、さては夜這いですね?」
「よ、よば…っ!? 違いますよ! 広沢さんのお遣いの帰りです!」
 斜め上を行く沖田の発言に仰天し、伊織は思わず大きな声で否定する。
 と、沖田は然して悪びれる風もなく、自らの口許に人差し指を立ててそれを制する。
「だめですよ、近所迷惑でしょう」
 近所は主に田畑が広がるばかりなのだが、既に休んでいる隊士もいることだろう。伊織は慌てて声を抑えた。
 よくよく目を凝らせば、沖田の格好は寝巻の単衣を着流した上にどてらを引っかけただけで、とてもこれから外出しようという格好には見えない。
 そんな格好をしていても、しっかりと二本は腰に手挟んでいるところを見ると、就寝していたところを飛び起き、慌てて飛んできた、という風にも思えなかった。
 予期せぬ沖田との遭遇に、伊織は首を傾げる。
「鳥の声がしましてね」
「は?」
 まるで、伊織の内心を見透かしたように、沖田は表へ出てきた理由を語る。
「障子戸の外で、鳥の鳴く声が聞こえたんですよ。夜中に鳴く鳥なんて、もしかして伝説に聞く鵺かなと思って、戸を開けてみたんです」
 そうしたら、すっかり落葉した庭の灌木の枝に、鳥がいたという。
 数拍の間、鳥は沖田を凝視していたが、やがて枝を大きく撓ませて屯所の門を悠々と飛び越えていった。
「結構大きな鳥に見えたのに、羽音も立てずに、すいーっと滑るような飛び方でしてね」
「大きな鳥、ですか」
「ええ、梟には見えなかったから、鷹か鷲か……。いずれにせよ、猛禽類じゃないかな」
 要するに、その鳥を追って出てきたらしい。
 そして門を出たところで、伊織の人影を見つけたのだろう。
「鳥を追いかけて夜な夜な徘徊するなんて……、何だろう、沖田さんて結構夢見がちなんですか……」
「うわ、そんな言い方はないですよ。そのお陰でこうして再会出来たんですから。隊に戻るなら、ね、ほら、私が土方さんのところまで付き合いますよ」
 どうやら、先に述べた「広沢の遣いの帰り」という一言は、沖田の耳には届いていなかったようだ。
 伊織が隊に戻りたくなって門前まで来たものの、帰りづらさを感じてやはり引き返そうとしていたのだと、どうも沖田の目にはそのようにしか映っていないのだろう。
 確かに、新選組に戻りたくないわけではないし、帰りづらさを感じているのも本当だ。
 だが、まだその時ではない。
「さ、行きましょう。あの人ならまだ起きてるはずですから」
 楽しげに言って伊織の手を取り、沖田は門の中へと引いていこうとする。
 咄嗟に、伊織は両の足で踏ん張り、身を退いた。
「……高宮さん?」
「す、すみません。まだ、帰れません」
 手首を掴む沖田の手から、僅かに力が抜ける。
 伊織の手首を一周してもまだ余るほどの大きな手は、それでもまだ離れなかった。
「山南さんにも話したんですが、近藤局長が帰るまでは……。それまでは――」
 新選組の外にあるものを、この目で見、この耳で聞き、この心で知りたいとも思う。
 そしてその間に、土方に感じる蟠りを解すことが出来たら良いと思う。
「きっと私は、この時代を知り過ぎているんです。世の中のことも、新選組のことも、土方さんのことも。そして同時に――、何一つ理解出来ていない」
 その後両者は、暫時沈黙した。
 その、決して短くはない一時も、沖田の手が伊織のそれを離すことはなかった。
 ややあって、漸く伊織の手が放されると、闇に紛れて薄らと映る沖田の面持ちが苦いものを含んだように歪められた。
「どうしても土方さんなんですか?」
「え?」
「土方さんに必要とされていなければ、隊には戻る気になれませんか?」
 沖田の問いは額面通りで、他意はないようだったが、一瞬、ぎくりと心の蔵が縮んだ。
「え、えぇと。確かに、そうかもしれません。隊に居るには、少なくとも土方さんの役に立つだけの実力が不可欠だろうと思いますし…。隊で役立てないのなら、いっそ会津に……」
 柴の葬儀の日以来、土方のあの一言が胸の片隅に蟠ったまま。
 会津に帰れ、と。
 その一言にどんな真意があったのかは知らない。
 けれどそう言い放たれた時の自分は、それでも新選組を離れたいという思いとは無縁だったはずだった。
「やれやれ。私があなたを必要としてるだけじゃ、隊に戻る気にはなれないんですか」
「……はい?」
「いつも思うんですけど、高宮さんは土方さんのことしか見ていないんですか?」
「そ、そんなことは」
「あなたの仲間は、土方さんだけなんですか?」
 ほんの僅かに拗ねたような口振りをする沖田に、伊織はぱっと顔を上げた。
「そんなことはありません!」
 寧ろ、逆だ。
「皆を同志だと、仲間だと思うからこそ! だからこそ……!」
 伊織が咄嗟に撥ねつけるような大きな声を出しても、沖田はもうそれを人差し指で制することはしなかった。
 沖田の反応を見るより早く、伊織は踵を返していたのだった。

     ***

 恐らくは黒谷へ向かったであろう伊織の背が、闇夜に紛れて掻き消されるまでには、そう時間はかからなかった。
 言葉途中で逃げるように去って行った者を追いかけようとは思わない。
 だが、伊織が言いかけていたことが何だったのか、それだけは少々気になった。
(本当にもう……、つくづく頑固な人だなぁ)
 墨を流したような闇を眺め、沖田は嘆息する。
 と、ちょうど沖田の正面に黒い輪郭を落とす木の枝から、何かが大きく羽音を立てて飛び立った。
「あれっ? さっきの――」
 羽ばたいたそれは、伊織のあとを追うかのようにして、暗闇の空に吸い込まれていった。

     ***

 強く、冷たい風の吹く日だった。
 座敷と縁側を繋ぐ障子戸の外には高い蒼穹が広がり、そこを横切る風は既に冬を誘い始めている。
 じきに寒い季節が訪れるだろう。
 冬の寒さは、この江戸よりも京のほうが凌ぎやすいだろうか。
 目の前では近藤と伊東大蔵との会談が行われている真っ最中だったが、尾形はのんびりとそんなことを思っていた。
 火の入った長火鉢を挟んで件の両者が論じ合うのを、ただ見守る。
 性根の真っ直ぐな近藤のこと故に、侃々諤々と議論するのかと思っていたが、現状を見るに然程白熱した様子もなく済んでいる。
 というよりも、恐らくは相手の伊東が一枚も二枚も上手なのだろう。
 伊東大蔵という男は色白でやや細面な優男に見えるが、その整った顔は終始笑顔を絶やさなかった。
 前にのめりそうなほど意気込んだ近藤を、伊東はまるで木の葉が舞うように、実に優雅に受け流している。それでいていつの間にか近藤を丸め込み、自分の掌中で泳がせているような――。
「そこで本日は、伊東殿に折り入ってお頼み申したい事がございましてな」
「おや、何でしょう。新選組の局長殿直々の頼み事とは、これは私も誠心誠意お応えせねばなりませんね」
「ははは、それは有り難い。なれば、良き御返答を頂戴出来ることを願って、単刀直入に御願い申し上げる」
 いよいよ近藤が本題を切り出した。
「是非、伊東殿のお力を我々新選組にお貸し頂きたい。これが叶えられれば、無論相応の厚遇を以てお迎えする所存。何卒、御願い申し上げる」
 この通り、と、近藤は躊躇いもせず頭を下げた。
 それに倣ってか、近藤の供として同席していた藤堂と武田も慌てて首を垂れる。
 年少の藤堂はともかくとして、武田が人に頭を下げるのを目の当たりにするのは妙な面白味があった。
 少なくとも尾形にとっては、だが。
 常日頃、その部下に対しては無駄が出るほど威張る帰来のある奴だからだろう。
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 この場は近藤を立て、尾形も仕方なしに伊東の前に頭を傾けた。
 だが、尾形はその刹那に垣間見た、内兜を見透かしたような伊東のしたり顔を見逃しはしなかった。
「これはこれは。私などで近藤殿のお役に立てるかどうか……」
 遜った言い方をしているものの、時折その目の色が変わる瞬間がある。
 それはほんの一瞬、泡沫の命よりも短い間でしかなかったが、尾形が伊東に疑念を抱くには充分なものだった。
 恐らく、近藤は気付いてはいまい。
(こいつ、何を考えている――?)
 近藤が人知れず懸念していたであろう論破の危機は全くの徒労に終わりそうだったが、尾形の目にはそれとは比較にもならない危機が迫っているように思えた。
「今の我々には、伊東殿のような才知に富んだ御仁のお力添えが必要と考えており申す。伊東殿の広く深い見識を以て、隊士の皆に学問をご教授願えないものかと」
 隊士は皆、武勇に優れたつわもの揃い。なれど、学については今一つ及ばぬところが――。などと、学問云々を中心にして、近藤は近藤なりに口を極める。
 懸命に伊東を称賛しようとしているらしい近藤だが、恐らく仲間に引き入れるための口先三寸、というわけではないだろう。
 物言いは多少堅苦しいが、心底褒めているのだ。
 伊東も何を考えているのか腹の読めない男だが、率直に褒められれば悪い気はしないらしく、幾分か頬を緩めた。
「これは嬉しいことを。ああ、しかし申し訳ないのですが……」
 躊躇とも取れる流れに、近藤の顔が僅かに曇る。
 こう思うのも今更だが、近藤は感情の変化が少々顔に出やすい。
 当人は頑として平静を装っているつもりでも、目の端、口の端に本心がちらりと覗いている。
 尾形の目にも見て取れるくらいだから、伊東などにはこちらの本音など容易く見透かされているはずだ。
「近藤殿のお誘いは有り難いのですが、私も多くの弟子を持つ身。すぐにもお返事申し上げたいところですが、この件は後日改めさせては頂けませんか」
「お……、おお、それは勿論。我々も今暫し滞在する予定にござれば、充分にご検討下されたい」
「そうですか。では御言葉に甘えさせて頂きましょう」
 ふふ、と伊東は口の端を上げて微笑んだ。
 その温和で人好きのする微笑に、尾形はやはり一抹の不安を拭いきれなかった。

     ***

 帰途、近藤は上機嫌だった。
 仲間内には感情を伏せる必要もないと思っているのだろう。俄かに鼻歌まで飛び出す始末だ。
 伊東の返事は後日に延びたものの、あの様子ならきっと彼は申し出を受け入れるだろう。
 それのどこを喜べるのかと、尾形は内心不満を募らせていた。
「ご機嫌ですね、局長」
「おお、尾形君! やはり分かるかね?」
 分からんわけがあるか。
 と、言い返したいのをぐっと堪え、尾形は一つ吐息を以って返す。
「あの伊東という男ですが、あまり気をお許しにならぬほうが宜しいのでは?」
 さっきまでの上機嫌を吹き飛ばす勢いで近藤の顔が険しくなり、その目には矢庭に雷雲のようなものが立ち込めた。
 明らかに不機嫌になっている。
 勿論、尾形としても近藤の機嫌を損ねるのは覚悟の上で言った一言だったのだが。
「急に何を言い出すんだね、尾形君。君らしくもない」
「そうだぞ尾形! 伊東殿に失礼であろう!」
 ここぞとばかりに調子に乗った武田が、鼻息荒く近藤を加勢しにかかる。
 自分が可愛がられたいがために、力のある者に取り入ろうとするのは結構だが、逐一癇に障る取り入り方をする奴だ。
「貴様はあれだろう、自分より優れた者を見るとつい批判したくなる性質《たち》だな! しかし尾形、それは見苦しいぞ! ですよね、局長!」
「あー……、武田君、折角だが君はもういいから」
「んなっ!? 何故です、尾形はこれから隊に加わろうという伊東殿を端から敵視しているのですぞ?! これは由々しき問題ではありませんか!」
「武田君、君本当にちょっと黙っててくれんかね。で、どういうわけでそう思うのか、尾形君の意見を是非聞かせて貰えるだろうか?」
 近藤はややうんざりした顔で武田を押し退け、尾形に向き直る。それが尾形には非常に小気味良かった。
 その小気味よさが尾形の背を押した。
「確かに、伊東大蔵という人物は学に秀でた逸材かもしれません。ですが、彼は基礎から水府の学により育ってきたようなもの。その根底には佐幕に通ずる思想など無きに等しいのでは?」
 今日の対談でも、尊皇や攘夷の点についての話は出た。だが、近藤の側が少しでも佐幕の色を滲ませれば、伊東はゆるりとそれをかわして、近藤が気付かぬよう話の腰を尊攘に傾けていた。
 帝が朝廷が夷狄が、と、さりげなくそういう主語に重きを置いて話していたのを、尾形は漏らさず聞いていたのだった。
「我々新選組は、佐幕を土台に集った組織です。局長もその上で尊皇や攘夷の志を抱いておいででしょう。しかし、彼らの土台は佐幕ではない」
 一度内部に引き入れてしまえば、伊東が新選組を土台から引っ繰り返すことさえも考えられる。優秀な人物であるだけに、決してあり得ぬ話ではないのだ。
「ええっ!? 尾形さん、まさか伊東先生のこと疑ってるんですか? それなら俺が保障しますよ! 伊東先生はそんなことをする人じゃないと思います」
 慌てて間に入り込んできたのは、藤堂平助。嘗ては伊東の門下に納まっていた新選組切っての若年古参隊士である。
「ちょっと変わった人ではあるかもしれないけど、悪い人じゃないのは俺がよく知ってますから」
 嘗ての師を悪者扱いされた気分にでもなったのだろうか。藤堂は頻りに伊東を庇う。
 が、尾形は敢えて言い返さず、げんなりと鼻で吐息した。
「うわ、何だよー! その鼻溜め息! 尾形さん、今のすっげ感じ悪いって!」
「あのなぁ。悪いと思って己の思想を貫こうとする奴なんか、そうそういないものだ」
「けど、伊東先生は大丈夫だって!」
 言い返し方が、実に若い。尾形自身も若いほうだが、藤堂は未だ二十歳そこそこ。無理もないだろう。
 尾形へ懸命に吠え立てる藤堂を宥め制して、近藤が口を開く。
「ははは! まあ君の懸念も分からなくはないのだがね。俺には伊東殿がそんなことを企てるような御仁には見えなかったぞ?」
 それに、と続けて、近藤はその斜め後ろでしょんぼりと肩を窄めている武田に目配せる。
「武田君の言うのにも一理ある。これから仲間になるかもしれない者を、端から疑ってかかるのもどうだろうか。我々が彼らに疑念を抱いていると思われれば、それこそ彼らを敵に回してしまうかもしれん」
「ですが、局長。もし私の所見が当たっていれば、事は大事に――」
「なぁに、そう闇雲に疑ってかかることもあるまい。伊東殿ならばきっと我々の力になって下さるだろう」
 近藤は一笑に付して尾形の肩をぽんぽんと叩いた。
 そんな近藤の背後で、実に良い顔をして笑う武田に腹が立ったのは言うまでもない。


【第二十三章へ続く】
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KASPIAN
歴史・時代
「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。衆目駭然として敢えて正視する者なし、これ我が東行高杉君に非ずや」 明治四十二(一九〇九)年、伊藤博文はこの一文で始まる高杉晋作の碑文を、遂に完成させることに成功した。 晋作のかつての同志である井上馨や山県有朋、そして伊藤博文等が晋作の碑文の作成をすることを決意してから、まる二年の月日が流れていた。 碑文完成の報を聞きつけ、喜びのあまり伊藤の元に駆けつけた井上馨が碑文を全て読み終えると、長年の疑問であった晋作と伊藤の出会いについて尋ねて…… この小説は二十九歳の若さでこの世を去った高杉晋作の短くも濃い人生にスポットライトを当てつつも、久坂玄瑞や吉田松陰、桂小五郎、伊藤博文、吉田稔麿などの長州の志士達、さらには近藤勇や土方歳三といった幕府方の人物の活躍にもスポットをあてた群像劇です!

新選組の漢達

宵月葵
歴史・時代
     オトコマエな新選組の漢たちでお魅せしましょう。 新選組好きさんに贈る、一話完結の短篇集。 別途連載中のジャンル混合型長編小説『碧恋の詠―貴方さえ護れるのなら、許されなくても浅はかに。』から、 歴史小説の要素のみを幾つか抽出したスピンオフ的短篇小説です。もちろん、本編をお読みいただいている必要はありません。 恋愛等の他要素は無くていいから新選組の歴史小説が読みたい、そんな方向けに書き直した短篇集です。 (ちなみに、一話完結ですが流れは作ってあります) 楽しんでいただけますように。       ★ 本小説では…のかわりに・を好んで使用しております ―もその場に応じ個数を変えて並べてます  

風説 戊辰女性剣士中澤琴

澤村圭一郎
歴史・時代
時は幕末。日本を植民地にと企む欧米列強の戦艦が黒光りする大砲を陸地へ向け押し寄せていた。攘夷(異人排斥)では一致していたが、国内では体制を維持し外敵に備えるというそ佐幕派と天皇を中心とする体制を築く尊皇派が厳しい対立をしていた。 将軍家茂が上洛するためのせ先遣隊が募られ二百を超える浪士が参集したが後に新選組を結成する近藤勇や土方歳三もいた。上野国(福島)からやってきたのは中澤貞祇と男装の妹琴。史上初の女性剣士誕生である。 父の孫右衛門は法神流剣道の創始で、琴は竹刀を玩具にして育ってきた。 先遣隊は将軍の一行より一日早くし出発し、奥州街道から中山道へと移動した。道中、富士を見ながら土方は言った。 「富士は大きいが人は努力すれば富士より大きくなれる。」と。 琴はそんな土方に心を魅かれた。 京に着くと隊長の清川が皆を集めて偏列を始めいきなり切り出した。 「我々が目指すのは尊皇攘夷である。江戸に戻り徳川幕府を倒す。」 正体を表したのである。 芹沢鴨や近藤・土方などが席を蹴り退場した。 琴は土方と行動を共にしたかったが兄が動かないので自重した。入隊を誘った佐々木只三郎が言った。 「清川は江戸を火の海にするつもりだ。そうはさせん。我らが江戸を守る。京は近藤さん、土方さんに任せよう。」 夜、宿にやってきた土方が琴に言った。「必ず会える日が来る。」と。 江戸に戻った清川は資金を得るため夜中に商家に押し入り大枚をせしめたが只三郎・中澤兄妹に斬り倒され一派は壊滅した。 琴たち徳川派は江戸を守る新徴組を設立し、昼夜を問わず奮闘した。 天狗党事件など幕府から追われていた相楽総三は薩摩邸に匿われ、鹿児島から送られてくる西郷吉之助(隆盛)の指示に煽られ配下達に火付や暴行を指示していたがそれも露見し新徴組を預かる米沢藩は薩摩邸を急襲した。琴に斬られじ重傷を負った相楽は妻の命乞いで一命を取り留めた。 そうして、戊辰戦争の幕が切って落とされた。 戦いに敗れた新選組が引き上げてきて琴は土方と再開した。土方は夢を語った。 「北の大地で牛や馬を育て、琴を迎えに来る。」 江戸城は無血開城され、琴は故郷の利根村に戻ったが土方が参戦している箱館戦争は終わらない。 琴は再び旅立った。蝦夷には凶暴な獣達が牙を剥いている。

新選組徒然日誌

架月はるか
歴史・時代
時は幕末、動乱の時代。新撰組隊士達の、日常を切り取った短編集。 殺伐とした事件等のお話は、ほぼありません。事件と事件の間にある、何気ない日々がメイン。 基本的に1話完結。時系列はバラバラ。 話毎に主人公が変わります(各話のタイトルに登場人物を記載)。 土方歳三と沖田総司が多め。たまに組外の人物も登場します。 最後までお付き合い下さると嬉しいです。 お気に入り・感想等頂けましたら、励みになります。 よろしくお願い致します。

維新竹取物語〜土方歳三とかぐや姫の物語〜

柳井梁
歴史・時代
月を見つめるお前は、まるでかぐや姫だな。 幼き歳三は、満月に照らされた女を見て呟いた。 会社勤めの東雲薫(しののめ かおる)は突如タイムスリップし幼い”歳三”と出会う。 暫らくの間土方家で世話になることになるが、穏やかな日々は長く続かなかった。 ある日川に流され意識を失うと、目の前に現れたのは大人の”歳三”で…!? 幕末を舞台に繰り広げられるタイムスリップ小説。 新選組だけでなく、長州や薩摩の人たちとも薫は交流を深めます。 歴史に疎い薫は武士の生き様を見て何を思い何を感じたのか、是非読んでいただければ幸いです。

散華の庭

ももちよろづ
歴史・時代
慶応四年、戊辰戦争の最中。 新選組 一番組長・沖田総司は、 患った肺病の療養の為、千駄ヶ谷の植木屋に身を寄せる。 戦線 復帰を望む沖田だが、 刻一刻と迫る死期が、彼の心に、暗い影を落とす。 その頃、副長・土方歳三は、 宇都宮で、新政府軍と戦っていた――。

新選組誕生秘録ー愛しきはお勢ー

工藤かずや
歴史・時代
十八才にして四十人以上を斬った豪志錬太郎は、 土方歳三の生き方に心酔して新選組へ入る。 そこで賄い方のお勢の警護を土方に命じられるが、 彼の非凡な運と身に着けた那智真伝流の真剣術で彼女を護りきる。 お勢は組の最高機密を、粛清された初代局長芹沢 鴨から託されていた。 それを日本の為にとを継承したのは、局長近藤ではなく副長の土方歳三であった。 機密を手に入れようと長州、薩摩、会津、幕府、朝廷、明治新政府、 さらには当事者の新選組までもが、お勢を手に入れようと襲って来る。 機密は新選組のみならず、日本全体に関わるものだったのだ。 豪士は殺到するかつての仲間新選組隊士からお勢を護るべく、血みどろの死闘を展開する。

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