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第1部
第十章 並駕斉駆
しおりを挟む元治元年、六月九日。
伊織は東山にいた。
牡丹の彩りも鮮やかな、女物の着物。
しっかりと髪も結い上げ、美しい玉簪を挿して歩く。
その姿は、丸っきり大店の令嬢である。
「似合いすぎだな」
隣り合って往来をそぞろ歩くのは、同じ監察方の尾形だ。
これもまた町人に扮し、見た目を譬えるならばやはり大店の若旦那風、というところだろう。
隠密行動という割には、少々小奇麗な出で立ちだ。
因みに言うならば、伊織の着付けは土方が行った。
満足に着物など着たこともない伊織にとっては少々気恥ずかしいことではあったが、きちんと着こなしていなければ女子として見るには怪しい者になってしまう。
けれどこの女装も、右腕を痛めている伊織が帯刀せずに済むようにとの、土方なりの心遣いだ。
「尾形さんこそ、すごく似合ってますよ! 若旦那!」
元々女子なのだから、女装は似合って当然。
尾形の目から見れば、妙に女装の似合う少年に映るのだろうが。
池田屋での事件以後、新選組の隊務は長州勢の残党狩りに終始していた。
これもその一環だ。
坂道の続く通りは、諸所に料亭や茶屋が軒を並べ、ちょうど昼時ということもあって多くの人で賑わいを見せていた。
あちらこちらと見て回るのだが、どれもこれも興味深く、自然と胸が躍る。
幕末の京の営みが目の前にあるのだ。
興味はそそられて当たり前。
修学旅行では結局散策することの出来なかった町並みより、今目にする光景のほうが、何倍も魅力である。
隣を歩く尾形も、連れ立って歩くには申し分のない容貌。
仕事ではあるが、ほんの少し楽しい気分にもなる。
表情もついつい浮かれ気味になるのだが、尾形は相変わらずの無表情だ。
「もうちょっとにっこり笑ったらどうですか? 怪しまれますよ?」
「お前はあまり喋らんほうが良いぞ。京弁が出来ない上に、少し会津の訛りがある」
すっぱりと言い切られ、伊織はうっと言葉に詰った。
そう言われれば返す言葉もない。
「でも、尾形さんも普通に話してるじゃないですか。京言葉なんて出来ないんでしょう?」
「俺はいいんだ。喋らないから」
無言で往来を行く男女連れというのも、なかなかに怪しいと思うのだが。
溜飲の下がらない思いで歩き続けるが、ふと伊織の目に珍しい物が留まった。
「あ。あれ何ですか? 変なのー。ちょっと見てみません?」
「なんだ?」
伊織が更なる好奇心をちらつかせると、尾形は一層無表情に返す。
これさえなければ、もう少し取っ付き易いのだが。
伊織が指差した方向を眺めて、尾形は呆れたようにハッと息を吐いた。
「あれは目鬘(めかつら)だ。見たことないのか? よく花見なんかで売ってるだろう」
「目鬘? ……へー、お面に似てるけど、そういう名前なんですね」
現代でも祭礼などでよく見かけるお面という代物に類似しているが、少し形状が異なる。
お面の目の部分だけなのだ。
(仮面舞踏会とかでありそう)
まさに、そんなようなものだ。
種類もいろいろと取り揃えてあるらしく、お侍風からお姫様風、果てはひょっとこ、なんていう物まである。
伊織は露店の前で足を止め、じっと食い入るように品々を見つめた。
「いらっしゃい。どれにしましょか?」
店を広げる女主人が穏やかに声をかけてくる。
伊織は背後の尾形をちらと見遣った。
「……買わないぞ?」
「一個だけ……」
「買わない」
「買って」
「…………」
「買って」
さらに食い下がると、尾形が俄かに口許を弛め、ぷぷっと噴き出した。
やれやれというように肩を落とし、伊織の傍らまで来ると、隣から品物を眺める。
「どれがいいんだ?」
根負けしたらしい。
にんまりと頬を弛めると、伊織はその中の一つを指す。
「これ」
尾形はそこで尚、苦笑した。
指し示したる物は、ひょっとこ。
極限まで垂れた目が最高に良い味を出している。
残念ながらお面とは違い、口まではついていないが、そこは自分でやればいい。
究極の一品。
これが一番面白いと思ったから指したのだが、見事尾形のツボに入ったようだ。
「に、似合ってるかもしれないな……プッ!」
「やったッ!」
渋りながらも懐から財布を取り出す尾形。
こうして見ると、それなりに良い人である。
(いや、買ってもらったから思うわけじゃないけどね……)
「ありがとう、尾形さん」
にっこりと笑って礼を口にすると、尾形は決まり悪そうにこめかみを二、三度掻き、踵を返した。
初めて目にする目鬘なるものを手に入れ、気分はますます物見遊山だ。
鼻歌でも歌いたくなる。
池田屋ではこれでもかというほど緊張と恐怖を味わったのだから、少しくらいこんな時があっても良いではないか。
再び坂道を登りながら、つい足取りも弾む。
「お前、そうしていると本当に女子だな。まあ、変装としては合格、かもしれんが」
後ろをついてゆく伊織に微かに振り向くと、尾形は鋭く指摘した。
同時にぎくりと肩を窄めたが、尾形は特に深い意味合いを込めて言った様子でもない。
それはその声音で分かった。
少しばかり調子が狂った、というか、変に照れたような声だ。
「尾形さん、惚れても無駄ですよ? 私に衆道の気はないですからね」
「俺だってないわ、そんなもの」
その時、きゅるる、と伊織の腹が鳴いた。
「……今度は飯か」
ふうっと厄介そうに溜め息を吐く尾形だったが、昼餉にはちょうど良い頃合だった。
***
二人は産寧坂に入り、しばらくそこから下ったところの料亭へと入った。
「おっちゃーん! うどん二つ!!」
「馬鹿、そんなに目立つ言い方はやめろ!」
伊織が席につくや注文を繰り出すと、尾形はやや焦ったように窘めた。
「なんでですか? そんなこそこそしてたら、余計怪しいですよ」
尤もな返しに尾形は言葉を呑んだが、すぐに平静を取り戻して、周囲に気を配り始める。
こんな食事のときにも気を張っているのは、掛け値なしに尾形の凄いところだと思う。
しかし昼時で、客の込み入った中にいては、長州も何も見分けがつかないのではないか。
「尾形さん、緊張してるの丸分かりですよ? ああ、怪しい怪しい」
眉間が強張る様子も見るに耐えかねて、伊織は気持ちからかうように言った。
ところがそれでも尾形は険しい顔を崩さなかった。
どうかしたのだろうか。
「尾形さん?」
尋ねると、尾形は静かに伊織へと視線を移し、ささやく。
「今、あの隅の客。長州の訛りに聞こえなかったか」
そちらを目や顎で示すでもなく、そう言う。
伊織もそちらには目を向けなかった。
「本当ですか? 気付かなかった……。というか、長州の訛りって、どういう感じなんですか」
大阪や京都、遠くても土佐や薩摩なら訛りの特徴というものも聞き分けられるが、長州に関しては特別な印象もないためか、さっぱりわからない。
「……お前は会津の出だというから、馴染みが無いのも仕方ないだろうな」
「え?」
「俺もそう近しくはないが、肥後の出だ。少しは南の訛りに通じるところがある」
「ああ、そうでしたよね」
肥後、確か九州だったな、と伊織は思う。
長州に近いとも言えないが、まあ自分のような東北の者に比べれば南方の訛りは範疇だろう。
よくよく耳を澄ませば、尾形の言うように京弁の中に混じって聞き慣れぬ語調がある。
それが長州の言葉なのかもしれない。
そこへようやっと注文していたうどんが二人前、差し出された。
「おまっとさんどす」
「あ、どうも」
にこやかに礼を言い、ぱちりと箸を割る。
空腹にこの出汁の香りがまた堪らなく食欲を掻き立てた。
尾形も同様にして箸を手に取るが、その顔はどうにも険しい。
「怪しいな」
「怪しいですね」
「ここは一応、アレだな」
「ええ、うどんが美味しすぎますね」
「…………」
途端に尾形が口の端を引き吊り上げた。
「お前はどうしてそう……」
「駄目ですよー、そんな怖い顔しないで下さい。ほら、うどん、美味しいですよ!」
ずるずると啜りながら尾形にも勧める。
すると、尾形も渋面を作りつつ器に手をつけた。
「……美味しいでしょう?」
「まあな」
素直に美味しいと言えば良いのに、滅多に笑おうとしないのだから。
心中密かに思いやられるが、伊織は一口啜り上げると器の中に視線を落とした。
「そういえば」
「なんだ?」
「土方歳三うどん、一度は食べてみたかったなぁ……」
今より未来、東京は日野の限定で売り出されているらしい、土方歳三うどん。
前々から気になっていたのに、一度も拝むことのないまま幕末へ来てしまった。
ただそれだけが悔やまれた。
「……副長がうどんになるのか」
「ええ。つるつるとした喉越しの、日野にしか売られていないという、幻のうどんです。それが食べられなかったことだけが、もう心残りで……!」
一瞬怪訝そうな眼差しが向けられたが、尾形も妙に感心したように頷いた。
「……そうか、副長は意外と美味いんだな?」
「……そのようですよ」
できればそのたった一袋でもこちらに持ってくることが出来たなら、きっと良い記念になったのに。
しかし、ここで本物の土方の傍にいることを思えば、それは贅沢かもしれない。
再びずるずると昼餉のうどんを掻き込み、尾形と向き合って黙々と食す。
と、暫くして無言の食卓に、ぬっと手が滑り込んだ。
「……?」
目で追うと、手は座席の奥にある辛子入りの瓢箪を掴み、またするすると戻っていく。
「おッ! すまんにゃあ、ちくととんがらし貸してくれんがかぁ?」
「あー、どうぞ」
貸してくれ、と言っても既に持って行っている。
しかもどういうわけか、同じ卓に移り来て、尾形と伊織の間に落ち着いてしまった。
「……あのう?」
「なんじゃ? 別にわしんとこはかまんでええきに」
堂々と割り込んで、豪快にうどんを啜るこの男に、伊織も尾形も釘付けになった。
「と、土佐のお方か」
かまうなと言われても。
苦笑の上にも刺々しく声をかける尾形に、一抹の剣呑さを感じた。
「まあまあ、いいじゃないですか! 店も混んでるようですし、合席というのも、ねえ!」
土佐の人間ならば、特に警戒もする必要はないだろうし、うまくすれば何か話も聞けるかもしれない。
伊織が間を取り持つと、尾形も憮然としながら箸を進め出した。
「あのー。土佐のご家中なんですか?」
「あ? わしかぁ? んま、そんなもんじゃき」
「へー……。こちらにはよくいらっしゃるんで?」
とりあえず、会話のないままでも雰囲気が悪かろうと、努めて話を振る。
男は暫く夢中で食事を取っていたが、やがて器が空になると、徐に伊織と尾形の顔を交互に覗き込んだ。
「おまんら、逢瀬の途中がじゃったか?」
「え、いや、私たちはそういう……」
間柄ではないのだが、この面ではそう見せかけていたほうが無難なのかもしれない。
少なくとも今の二人の容貌からはそういう解釈がごく自然である。
「そ、そうなんですよー! もーう、久し振りに二人で街を歩こうか、なんて俊ちゃんが言うもんだから!」
「し、俊ちゃ……!?」
「おーの! おんしもへらこいのう! わしも混ぜとうせ!」
思わず調子を合わせてしまった伊織だが、横合いから土佐男に突かれる尾形の様子を見て、血の気が引く。
きっと内心で大激怒だ。
変装中とは言えど、師匠をちゃん付け。
「わしゃ、毎日ここに昼飯食いに来ちゅうが、おまんのよーな女子と出逢うたんは初めてじゃあ~。げにわし好みじゃき」
「は、はあ、どうも」
総髪に髷を結ったこの男、食い気の次は色気に走る。
しっかと伊織の手を握り締め、至近距離まで顔を近づける。
女装をすると、こんな災難があるのか。
尾形も何かそれらしくあしらってくれれば良いものを、くすくすと愉快そうに忍び笑っているだけだ。
「すいませんねぇ~、私は一応、連れがいますもんで……」
「んー、はがいたらしいのう! けんど、そこがまたぐっと来ゆうがじゃ~」
「……アハハ。さて、私たちはもう行きましょうかね……」
さりげなく男の手をかわし、伊織は颯爽と席を立つ。
「また会えたら、わしとも二人で街歩いてくれるがじゃろ?」
「もう会いませんって!!」
***
夕暮れも迫りかけた頃、伊織は尾形に引き摺られるように、壬生の界隈まで帰り着いた。
「尾形さん、足が痛いです……」
慣れない格好で一日歩き通しだったため、今ではもう下駄の鼻緒に擦れただけでひりひりする。
寧ろ脱いで裸足になったほうが歩き易いのだが、それだけはこの堅物の師匠が許してくれなかったのだ。
「しっかりしろ、情けない。屯所はすぐそこだ、血が出ようが指が千切れようが歩け」
「ひどい言い方しますね……」
尾形よりも数歩遅れて歩く伊織を振り向き、尾形は腕組みをして心底呆れたように息を吐く。
「お前は佐々木さんに日頃どんな稽古をつけてもらってたんだ。まったく、軟弱な」
「そんなこと言っても、足の指までは鍛えられないですよ~!」
本当にもう、指の間が裂けそうなくらいに痛かった。
屯所はもう目の前なのだが、そこまで歩いていくのも億劫なほどだ。
ついに伊織は足を止め、その場に蹲った。
「我儘言ってもいいですか?」
「駄目だ」
「ちぇっ……」
「まだ戻って副長に報告せねばならんのだ。こんなところでへたり込むな」
「…………」
「…………」
暫時上から見下ろしていた尾形も、やっと蹲る伊織の傍らに屈み込んだ。
「下駄、脱いでもいいですかね?」
「……仕方が無いだろ、脱げ」
やっとお許しが出たことに安堵し、静かに足を下駄から外す。
と、急に浮遊感が襲った。
「あれ?」
「本当に手のかかる……。にしても、お前、本当に男か? 軽すぎる」
自分の位置を確かめて、伊織は驚愕した。
あの尾形に、抱え上げられていた。
「尾形さん!? 何してんですかーーっ!?」
横抱きにされたまま絶叫すると、尾形は鬱陶しそうに首を反らせた。
「仕方がないだろう。屯所に入るまでこうでもしてなけりゃ、俺が薄情な男に見えるだろう」
裸足の女子を気遣いもせずに歩けば、傍目には薄情極まりなく映る。
尤もではあるが、何もこんな抱え方をせずとも、背負うなり出来るではないか。
(……いや、背負われなくて良かったのかも)
かちこちに身体を強張らせつつ、伊織は自らに言い聞かせた。
背負われれば、尾形の背と自分の胸部とが密着する。
となれば、性別も知られてしまうことになるからだ。
どれだけ鈍感な男でも、そうすれば気が付くのに違いない。
……が。
尾形の負担にならないよう、そっと自分の懐に手を忍ばせた。
さっき手に入れた、目鬘。
それを自ら装備する。
「なんでひょっとこになってるんだ、お前……」
「だって、なんかこっぱずかしいから……」
***
夕餉の支度が始まっているのか、屯所に入ると薪を焚く匂いが立ち込めていた。
市中を巡察して廻っていた隊士たちも、ぞろぞろと帰隊してきているようだ。
「尾形君、ひょっとこなんぞ抱えて、どうした」
夕霞のたゆたう副長室で、土方は真っ先にそこを突いた。
言われて漸く、伊織は地に降ろしてもらうことが出来たのだった。
「東山で拾ったひょっとこです。どうも足が痛くて歩けないようでしたので」
「……で、抱えてきたのか」
「そうです。何か特別手当でも頂ければ嬉しいのですが」
「やらねえよ!」
「ひょっとこひょっとこ言わないでくれませんか」
伊織が口を挟めば、土方は冷酷な眼差しを向ける。
「で、どうだった」
すぐにもそれは今日の報告を催促しているのだと見て、伊織は目鬘を外す。
「……ありましたね」
言えば、後は尾形が繋いだ。
「産寧坂を下った、明保野という料亭に立ち寄ったのですが、あの近辺も巡察したほうが良さそうです」
「そうか。東山のほうも入念に見回らせるとしよう」
京の都中に潜伏しているであろう、不逞浪士。
池田屋の一件から都を離れた浪士もあるだろうが、それでも中には潜伏生活を続ける者も多い。
それを取り締まるのだから、骨の折れることだ。
土方の表情には疲弊の色など微塵も浮かんではいなかったが、それでもこの人は誰よりも激務を負っている。
このところは夜も満足に寝ていないようだったし、身近で見る者には少々気掛かりである。
気にはなるが、大丈夫かと問うたところで、疲れたなどと惰弱を吐く人でないことくらい分かりきっている。
だから敢えて尋ねようとも思わなかった。
「時に副長」
一通りの報告も済ませたところで、尾形はやや声音を明るくして言った。
「副長は何時、うどんになられるんですか」
「……ハ?」
「いえ、高宮がつるつるした幻の一品だと言うもので、つい」
途端に土方の形相が恐ろしげに変化し、こちらへぐるりと首を巡らせた。
その眼光の鋭さは、まさに鬼神。
「何の話だ」
「あらららら! 尾形さん! 本人に言っちゃあ駄目じゃないですか!」
ぎょっとして尾形の口を塞ぐが、もはやそれには何の意味もなかった。
言ってしまったものは仕方が無いとしても、まさかうどん一つでこれほど怒りを露にするとは。
伊織がその気迫と威圧に慄いた時、副長室の障子戸の影で、何かが忍び笑った。
「……プスッ!」
決して大きくはないその声。
けれど、それは三人の動きを止めるに充分な気配である。
「プス……?」
「誰だ、盗み聞きなんかしてやがんのは!?」
土方が怒鳴ると、それは嵐のように副長室に飛び込んだ。
「土方!! 貴様がつるつるだとは初耳だぞ!?」
その姿に、一同揃って五、六歩も後方へ飛び退る。
佐々木だ。
何となく嫌な予感はしたものの、いつから潜んでいたのか。
余りの唐突さに、叫びすら出てこない。
「すると何か!? 伊織はすべすべか!? おお、さもありなん! いざ、味見を!!」
意味不明な言動も毎度ながらに好調で、部屋の隅に身を寄せ合った三人の前に立ちはだかる。
無論、その食指は伊織へと延ばされたのだが、こちらとしてももう反射神経には自信があった。
賺さず土方を正面に押し出し、生贄に捧げる。
「ギャア!! てめえ、伊織ッ!! ふざけんじゃねえ!!」
「すいません土方さん! 成仏してください!」
振り向いて抵抗する土方の目は打って変わって恨みに満ちている。
だがこちらも真剣だ。
食われてたまるか。
さらに土方の背を一押しすると、伊織は傍に寄り添う尾形の懐に飛び込んだ。
「逃げましょう、尾形さん!!」
「ああ」
「ま、待て! これは違うのだ、伊織! 私はお前の見舞いにと思って……!!」
尾形と共に手と手を取って逃走しようとする伊織の着物の裾を引っ掴み、佐々木は弁解する。
その引き寄せる力の凄まじいこと。
溺れる者は何たるや。
「ヒイイイ! 稽古は暫く休むって言ったじゃないですかぁあ!!」
「高宮」
手を繋いでいた尾形が、そっとその手を放した。
「成仏しろよ……」
微かに哀れみも籠る眼差しで別れを告げた後、尾形はすっと消えるようにその場を去った。
「は、薄情者め!!」
着物の裾から這い上がるように引き止めている佐々木を足蹴にするが、それでも執拗にしがみ付いてくる。
「見舞いに来てみれば女子に戻っているし、私もつい、つるつるっと! すまぬ! 嫌わんでくれ!!」
幾度も蹴りを入れられながら、捨て犬のような目で訴えかけてくる。
しかし、その目が尚気持ち悪い。
同情の余地、無し。
「池田屋で怪我をしたというし、その上倒れたそうではないか! 稽古に出られぬと文の一通あっただけ……。私がどれほど心を痛めていたか……!」
「要らん世話です! この通りぴんぴんしてますから、ご心配なく!!」
何が何でも放すつもりはないようで、佐々木は着物の裾から這い蹲るように伊織に攀じ登る。
ある意味で、池田屋よりも戦慄の光景。
「ほんの少し話をするぐらい、良いではないかっ! 私が可哀想だろう!?」
「わっかりましたよ、話を聞きゃあいいんでしょう!? 私のほうが可哀想ですよ!!」
土方も既に逃走しており、尾形もその気配すら残していない。
こと佐々木に関しては、誰も助けてはくれないのだ。
(なんでこうなる……)
警戒心は解かずに抵抗の力だけを弛めると、佐々木はぱっと目を煌めかせた。
何度も言うが、気持ち悪い。
その絡みつく手を払い除けてもう一度副長室の中程に座り直すと、その正面に佐々木も落ち着いた。
「で、何の用ですか」
非人道的なまでに冷たい声音で言うが、真向かいの佐々木はほんのりと頬を染めて嬉しそうである。
多分、尻尾が付いていたなら、左右に大きく振っていることだろう。
一体、どちらが弟子なのだか。
「会いたくなって来てしまった。ついでに怪我の具合も気になって……」
「へー。お見舞いは『ついで』でしたか。『ついで』ねえ……」
けっ、とふてぶてしくぼやくと、佐々木の顔色がさっと蒼褪めるのが分かった。
と、次の瞬間にはもう息のかかるほど近い位置に佐々木の顔があった。
「すすす、すまん!」
「オギャア! 近ッ!? 近すぎますよ佐々木さん!」
「だ、大丈夫なのか!? 腕を見せてみよ! 私が擦ってやればすぐに治る――」
「治るか、阿呆!!」
「んなッ!? そんなに邪険にせずとも良かろう? これほど心配しているというのに!!」
ついさっき『ついで』だと言ったくせに、佐々木はなよと泣き崩れた。
「だからそれはもういいですから! 用件を言ってくださいよ、用件を!」
このままでは何時まで経っても悪ふざけが済む様子もない。
これが最後と、伊織はぴしゃりと申し付けた。
すると佐々木もその厳つい体躯にしなを作りながら、やっとのことで話し出した。
「いやなに、お前は人を斬ったのは初めてだっただろう? それが少々気になってな……」
ぴく、と伊織は眉根を引き寄せた。
悔しいが、それは毎晩のように夢に見る。
あの凄惨な光景が毎夜、甦る。
魘されて目を覚ますこともしばしばあった。
土方がそれを宥めてくれる時も一度か二度あったと思うが、基本的に夜中に魘されても放って置かれた。
眠るのが恐ろしいと思うことさえあったが、眠らなければ翌日に支障を来たす。
(きっと誰もが通る道なんだ)
人を斬れば誰しも気に病み、苦渋を味わう。
土方はそれが当たり前と思うから、敢えて放っておくのだろう。
その代わりに、日中はそんなことを考える暇もないくらいに、監察方の仕事を言いつけられる。
だから夜は眠らなければ昼間の身が持たない。
これも、乗り越えねばならないことなのだ。
こればかりは、人の手を借りて乗り越えることは出来ない。
遠巻きに回避することも出来ない。
喉の奥で唸り、伊織は顔を伏せた。
「……辛いのではないのか?」
穏やかだが、しっかりと芯のある声で、佐々木が問いかけた。
辛くないはずがない。
今に斬り捨てた者の亡霊でも見えてきそうなくらいだ。
仕事をしている間はそれも忘れていられるが、就寝が近くなると決まって恐怖は忍び寄ってくる。
土方とは未だに同室だが、この状態ではそれも救いだと言えた。
寝ている間も傍に人がいると思えば、恐怖も幾らか和らぐような気がする。
土方も沖田も、勿論尾形などもそれについては一言も触れては来ない。
「夜は結構、辛いですね」
声に出した唇が、微かに震えた。
今だけは、こうして面と向かって触れてくれる佐々木が、ありがたいと思った。
頭では分かっていても、実際に胸の内を聞いてもらえるのともらえないのとでは、大きな差がある。
「斬った側の私が、それを言ってはいけないのでしょうけど……」
罪無き人を斬ったわけではない。
少なくともそうするだけの理由はあったし、正当化するならいくらでも可能だろう。
けれど。
「たとえ相手が誰であり何をした者であろうと、命を絶つこと以上に罪深いことはないような気がして」
佐々木はただ黙って伊織を見つめる。
誰も灯を燈す者のない副長室は、今や既に夕闇が覆い始めていた。
また、夜になる。
これから明日の夜明けをじっと待つ間が、恐ろしく長いのだろう。
ふとすれば背後から何者かが斬りつけて来るような、そんな気配までを錯覚してしまう。
今もそうだ。
闇があるところは、怖い。
夏の夕暮れの物寂しさが、それに拍車をかけた。
「灯り、つけましょう」
暗さに耐え兼ね、伊織は膝を立てた。
が、佐々木が正面から手振りでそれを遮る。
「良い、私が燈す」
「……すみません」
屋内の何処からともなく、隊士たちの話し声が届く。
それ以外は、至って静かな時が流れていた。
互いが身動きすればその衣服と畳の擦れる音が響く。
ぽつりと明かり取りの灯が燈されると、漸く伊織の心中に静謐さが戻った。
自分がこれほど臆病になるのは、ほんの幼い時分以来だった。
闇が怖いなどと、今はもう子供でもあるまいに。
「伊織」
「はい」
佐々木の表情が深刻に見えるのは、気のせいではない。
先刻あれほど邪険にあしらおうとしたのは、やはり少しやり過ぎだったか。
佐々木が本心で自分を案じてくれているのは、その目を見れば判った。
「今からでも良い。やはりお前はここを出たほうが良いのではないだろうか」
「……は」
新選組にいれば、これから先も数限りなく太刀を振るわねばならない。
また人を殺めることもあるだろう。
女子のお前が背負って行くには、少々荷が重過ぎよう。
そう、佐々木は言った。
「それは出来ません」
静かに、暗い調子になったが、それでも言葉だけは明快に答える。
自らここに残り、女子の道は捨てるのだと、断言した。
如何に今が耐え難い苦難の最中であろうと、否、その渦中にあるからこそ、自らの決断に背くような行動は自戒しなければならない。
敢えて無言を通す土方を見れば、それだけはしてはならないことなのだと、自然と思った。
「意地を張るでない。誰が何と言おうとも、お前は女子なのだ。そもそれを捨てるだとか申すことが無謀だと、分からぬお前ではあるまい?」
「無謀は元から承知の上です。私のような者は、少々無謀でもなければここで生きていくことは出来ませんよ、きっと……」
「お前も頑迷だな」
聞こえよがしな吐息と共に、佐々木は顔を下向けた。
「乗り越えねばならないことです。お気遣いは有難く思いますが、一度決めた以上、私はここを去ろうとは思いません」
「……常に死と隣り合わせの日々だとしても、か? 池田屋の一件で思い知っても尚、それを貫くのか」
再び伊織に視線を向けた佐々木の双眸が、やや哀しげに細められた。
その目を、ずるいと思う。
普段は暗愚者かと思えるほどなのに、何故今、主の土方ではなくこの人が手を差し伸べてくれるのか。
心の内を明かす機会を与えてくれたことは、素直に感謝する。
けれど、これほどに優しい言葉をかけられると、自分という生き物がいやにか弱く感じてしまう。
お陰で、強情な口振りとは裏腹に、どうしようもなく泣きたくなった。
涙腺の奥から込み上げる熱いものを必死に堪える。
気付かれぬようにと俯けば、重力がさらに落涙を誘った。
「……深く考えぬことだ」
そこにかけられた温和な声が、余計に辛い。
我慢も限界を迎えようとしたところで、佐々木の両腕が伊織を包んだ。
ついさっきここで伊織の着物を引っ掴んだ腕とは思えぬ、優しく力強い腕。
抱かれた刹那、驚きで瞠目したが、今は可笑しな行動に出る様子もない。
涙を堪えているのが判ったから、佐々木はこうすることを選んだのだろう。
そういえば、この人も幾人か人を斬っている。
新選組の母体とも呼べる浪士組の発案者、清河八郎を斬ったのも、確か佐々木だったはずだ。
自分と同じ、人を殺めた腕。
それを漠然と思うと、背筋がぞくりと震えた。
しかし佐々木は気付いてか否か、変わらぬ口調で言った。
「人を斬ったら、悔いてはならぬ。無論、命とは本来尊ぶべきものだ。敵であれ味方であれ、その価値は変わらぬ。だが、だからこそ、それを絶って悔やんではならぬぞ」
思わず、伊織は佐々木の顔を見上げた。
悔やむな、という一言が、真っ直ぐに胸を突き抜けたのだ。
池田屋で参戦したことを後悔はしていない。
しかし、人の命を絶った事実を悔やんでいた。
敵味方入り乱れての乱闘、そこで絶命する者はただそれが定めなのである。
斬り付けられれば応戦し、結果敵を殺害するに至っても、それは致し方ない。
とはいえ、人として、それを悔やまずにいられようか。
見上げた先の佐々木は目を合わすことなく、再度伊織の頭を自らの胸にと押さえた。
「殺めた者の命を、その先にあったであろう未来も全て、お前が引き受けるのだ」
(引き受ける……)
心中で繰り返し、伊織はぼんやりと思考を巡らせる。
死とは、何なのだろう。
人ならずとも、生けるもの全てに課せられた、決して避けることの出来ない終着点。
いずれは自分の身にも訪れるであろう、最後の砦。
まだ、己の身にかかる死などとは、予測もつかないが。
押し当てられた胸の奥から微かに聴こえる、鼓動。
池田屋で、この音を幾つ停めたのだったろうか。
引き受けることが、償いになるのだろうか。
それでも、やはり罪の意識は消えないのではないか。
静かに胸の鼓動に耳を澄ます。
規則的なその音が、安堵感を与えてくれた。
ふとそこに混じって、佐々木の声が頭上から降る。
「良いか」
「……はい?」
「引き受けることは、殺めた者に対するお前の責任だ。悔いていては引き受けることも成らぬ」
難しい、と思った。
少なくとも、人を手にかけた後悔の念と罪悪感とに苛まれる今は、佐々木の言う意味も巧く呑み込むことが出来なかった。
「人はすべて、生きるも覚悟、死するも覚悟の上なのだ」
「それはどういう……」
真意が掴めず、問う。
「まずはお前自身が死を超えろ。決して容易くはないが、この先それが出来なければ、土方君についていくことは難しいぞ」
「死を、超える……ですか」
ますますもって理解できない。
死ねばそこで終わりではないか。
それを超えろとは。
「お前自身が死を恐れなくなった時に、自ずと意味も悟る。急いても仕方あるまい」
言い終えた佐々木は、珍しいことに何事もなく伊織を解放した。
語り聞かされた言葉を何度も心中で繰り返してはみるものの、やはり悟るまでには至らない。
暫しその場で思案に暮れる伊織を残し、佐々木は終の一言を呟いて退室していった。
「まったく、私も厄介な女子に惚れたものだ」
***
じっと座り続けて、半刻。
明かり取りの灯火が、油を吸う軸にじっと音を立てた。
「飯は要らねえのか」
副長室の中央に正座する伊織の耳に、土方の声が届いた。
もうとっくに夕餉だ。
「お腹は減ってます。でも、……食べる気になれない」
「なんだ、佐々木に何かされたのかよ」
現場からさっさと逃げておいてよく言うものだ。
心成しか声が笑っている。
内心むっとするのと並行して、ふと懊悩の呪縛が解けた。
「何もされませんでしたよ。かえって、大事なことを教えてもらえたような……と言ってもまだ半信半疑ですけど」
佐々木の言ったことは恐らく非常に大切なことなのだと思う。
目を伏せて、ゆっくりと大きな吐息を吐いた。
すると土方はやや乱暴な足取りで伊織の正面に周り、どっかりと腰を降ろす。
顔を上げれば、そこには大袈裟に顰蹙した土方。
「おめぇ、まさか……!」
「はい?」
「今更佐々木に懸想してんじゃねえだろうな!?」
聞いた途端に、がくりと顎が落下した。
大真面目な顔で何を言うか。
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「馬鹿、てめぇ! 最初に人を餌食にしようとしたのは誰だってんだ!!」
「だって土方さんなら生き延びられると思ったんですよ!」
「冗談じゃねえよ!」
また、いつもの言い合いだ。
佐々木のように気遣ってくれる素振りは全くない。
いや、気遣いが欲しいわけではないのだが、壁に当たっているのは目にも明らかなのに、一言も助言はくれないのだろうか。
「兎に角、早く着替えろ。いつまで女でいるつもりだ」
注意を受けて、まだ着替えすらしていないことを漸く思い出した。
華やかな袖の色柄を見つめて、また少しぼんやりとする。
女子でいることを選んだなら、こういうこういう着物を普段に纏い、刃傷沙汰とは無縁の生活を送ることもあっただろうか。
何となく、それを考えてしまった。
それこそ、今更というものなのに。
慌てて念頭から追い出そうと、首を小さく左右に振った。
「明日も引き続き尾形君に同行しろ、いいな」
「わかりました」
毅然と返答した。
土方もそれを聞き届けると、またふらりと何処かへ出て行った。
その背を見送り、伊織は微かに唇を噛む。
弱音は吐けない。
吐けば、そこで見限られてしまうような気がした。
***
膳を突く蒔田の傍らに、畳に伏して泣き喚く者あり。
蒔田にとっては、もう慣れたものである。
どちらかといえば、この光景が日常のような気さえするくらいだ。
「蒔田ぁーーーッ!!」
「なんだ佐々木」
「私が泣いているのに、貴様は隣で晩ご飯か! ええい、気に食わん!!」
「お主も食えば良かろう……」
平然と鰯を摘もうとする蒔田の腕を、佐々木は斜め下から掴み上げた。
「話を聞かぬか蒔田ぁああああッ!!」
「聞いておる聞いておる。放さぬか無礼者め」
渋々と窘めると、次いで佐々木は蒔田の膝に泣き伏した。
「伊織が女子姿で、しかも落ち込んでたというのにッ! 何故あそこで押し倒さなかったのだ私は!!? これではまるでピエロではないか!!」
「ほうほう、それは大儀であった」
蒔田広孝、初めからまともに聞くつもりはない。
まあ些か気になるのは、ピエロとは何だろう、くらいである。
(……ま、何でもよいか)
それよりも、食卓の鰯が美味かった。
つい箸も進んだ。
「佐々木、お主も一先ず食事を取ってはどうだ? ん?」
「鰯など要らぬわ! ぬおおおんッ!!」
野太い声で喚き散らされるのは煩いが、止めようとすれば一層大声で喚き出すということも、もう承知している。
だからこんな時は放置しておくのが最善策なのだ。
「きちんと食さぬと、勿体ないお化けが出るぞ?」
そうして時々、こうして適当に声をかけてやれば良い。
佐々木はまだまだ落ち着く様子はなく、蒔田の袴で徐に洟を拭いた。
ご丁寧に指で掬って擦りつけている。
「うぬッ!? たわけが! 人の袴で洟をかむ奴があるか!!」
「私の膳には毎晩伊織を載せて出してくれ……そうすれば残さず食してやる」
「ならばしっかり釣って来ぬか! 釣れもせんものを膳に上げられるわけがなかろう!! ……って、貴様、鰯にまで洟をつけるなーーー!!!」
【第十一章へ続く】
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