晩夏の蝉

紫乃森統子

文字の大きさ
上 下
8 / 8

あとがき

しおりを挟む
 
 
 最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございます。
 カッとなって書きました。
 
 本当は才次郎メインで書こうと思っていたものが、才次郎書くなら良輔もいなきゃ駄目だろ……! けど良輔も書くなら丈太郎も……! となって、結局良輔さん主軸で書くことにしました。
 昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を元に創作したものですが、いつものように作者の想像の産物ですので、ご了承下さい。
 判明している史実は極力盛り込みたいなと思っていつも書き始めるのですが、これがまあなかなか難しい。

 そして、二本松少年隊って言ったら大壇口じゃん!! 若先生じゃん!! と思われる方も多いかと思いますが、その辺めっちゃ端折ってすみません。
 や、ほら、良輔さん主軸だから……(言い訳)
 大壇口は篤次郎主役の「散華─二本松少年隊・岡山篤次郎─」でがっつり書いたので、そちらをどうぞです。
 
 堀良輔(後に通名)さんは、作中に書いたように戊辰戦争時は大壇口組ではなく、竹田門付近で銃撃戦に加わっており、その後退却、城に火を付けるとなって塩沢口から藩主一行の御国落ちを追いかけて水原へと落ち延びていきました。
 城を出てすぐ搦手を守備していた大谷鳴海隊に遭遇し、鳴海隊長に「(足手纏いだから)早く行け!」って叱られたとか、その後立派な馬を引いた別当と出くわして、「丹波さま(家老座上)の馬なんだけど、こいつ人乗ってないとちゃんと歩かないからちょっと乗ってくんない?」って頼まれて仕方なく乗ったらいつの間にか別当さんにトンズラされて結果的に無駄に立派な馬押し付けられたとか、偉い人の馬だけどまあこの際どうでもいいや! ってそのまま水原まで馬を駆る良輔さんとか、ちょっとこの辺のエピソード個人的に大好きなんですけど、外しました。シリアスを壊さずに書ける気がしない。特に馬。

 才次郎のくだりはわりと史実そのまま書いた、かな。
 真面目で優しくて素直で、且つ勇敢なイメージのある子です。
 才次郎父の外記右衛門さんははじめ「げきえもん」と読んだのを、後に藩主の一族に「外記(げき)」という人が現れたために、「ときえもん」と読みを改めたそうにございます。

 主役良輔さんで、準主役才次郎。の、つもりで書きました。
 一番困ったの丈太郎さんです。なんも詳しいこと分からん。めっちゃ創作でコテコテにしても良いかなって思ったりもしたんですが、メインでないのに脚色で塗り固めるまでもないか、と自重。
 
 良輔さん、すごく御長寿で戦後も明治10年頃に工部美術学校(日本最初の美術学校)で彫刻を学び芸術の道を進まれましたが、前述の書籍を読みながら、あちらで戦友二人と再会出来ているといいなぁって思わず願っちゃったのが、この話を書くきっかけでした。
 
 ご本人の晩年のお写真から、おおらかで明るくてあんまり細かいことに拘らなさそうで、でも繊細で周囲の変化に敏感で人一倍色んなことを感じ取っていそう……っていう勝手なイメージを抱いたために、こんな感じに。
 当たり前ですが良輔さんはじめ、皆さんのお人柄の本当のところは存じ上げませんので、良輔さんが遅刻魔だったという事実はありません(きっと)。
 
 名前しか出てない人とかも多いし、冒頭で話したとおりカッとなった勢いで書いたので、後々加筆修正の可能性大いに有りですが、ひとまずはこの辺で。
 
 
 2022年10月8日  紫乃森 統子 
 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

松前、燃ゆ

澤田慎梧
歴史・時代
【函館戦争のはじまり、松前攻防戦の前後に繰り広げられた一人の武士の苦闘】 鳥羽伏見の戦いに端を発した戊辰戦争。東北の諸大名家が次々に新政府軍に恭順する中、徳川につくか新政府軍につくか、頭を悩ます大名家があった。蝦夷地唯一の大名・松前家である。 これは、一人の武士の目を通して幕末における松前藩の顛末を描いた、歴史のこぼれ話――。 ※本作品は史実を基にしたフィクションです。 ※拙作「夜明けの空を探して」とは別視点による同時期を描いた作品となります。 ※村田小藤太氏は実在する松前の剣客ですが、作者の脚色による部分が大きいものとご理解ください。 ※参考文献:「福島町史」「北海道の口碑伝説」など、多数。

商い幼女と猫侍

和紗かをる
歴史・時代
黒船来航から少しの時代。動物狂いでお家断絶になった侍、渡会正嗣と伊勢屋の次女ふたみはあるきっかけから協力して犬、猫、鶏と一緒になって世を守る。世直しドタバタ活劇。綺羅星の様な偉人ひしめく幕末の日本で、二人がひっそりと織り成す物語です。

散華-二本松少年隊・岡山篤次郎-

紫乃森統子
歴史・時代
幕末、戊辰戦争。会津の東に藩境を接する奥州二本松藩は、西軍の圧倒的な戦力により多くの藩兵を失い、進退極まっていた。寡兵ながらも徹底抗戦の構えを取る二本松藩は、少年たちの予てからの出陣嘆願を受け、13歳以上の出陣を認めたのだった。後に「二本松少年隊」と呼ばれる少年隊士たちの一人、岡山篤次郎を描いた作品です。

新選組 終焉の語部

逢瀬あいりす
歴史・時代
風にのった雲のように、新選組と呼ばれた日々は流れていった。 生きたかった。死にたくなかった。本当は、死にたかった。 想いと共に置いていかれた男たちの物語

父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

佐倉 蘭
歴史・時代
★第10回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ ある日、丑丸(うしまる)の父親が流行病でこの世を去った。 貧乏裏店(長屋)暮らしゆえ、家守(大家)のツケでなんとか弔いを終えたと思いきや…… 脱藩浪人だった父親が江戸に出てきてから知り合い夫婦(めおと)となった母親が、裏店の連中がなけなしの金を叩いて出し合った線香代(香典)をすべて持って夜逃げした。 齢八つにして丑丸はたった一人、無一文で残された—— ※「今宵は遣らずの雨」 「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

富嶽を駆けよ

有馬桓次郎
歴史・時代
★☆★ 第10回歴史・時代小説大賞〈あの時代の名脇役賞〉受賞作 ★☆★ https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/853000200  天保三年。  尾張藩江戸屋敷の奥女中を勤めていた辰は、身長五尺七寸の大女。  嫁入りが決まって奉公も明けていたが、女人禁足の山・富士の山頂に立つという夢のため、養父と衝突しつつもなお深川で一人暮らしを続けている。  許婚の万次郎の口利きで富士講の大先達・小谷三志と面会した辰は、小谷翁の手引きで遂に富士山への登拝を決行する。  しかし人目を避けるために選ばれたその日程は、閉山から一ヶ月が経った長月二十六日。人跡の絶えた富士山は、五合目から上が完全に真冬となっていた。  逆巻く暴風、身を切る寒気、そして高山病……数多の試練を乗り越え、無事に富士山頂へ辿りつくことができた辰であったが──。  江戸後期、史上初の富士山女性登頂者「高山たつ」の挑戦を描く冒険記。

東洲斎写楽の懊悩

橋本洋一
歴史・時代
時は寛政五年。長崎奉行に呼ばれ出島までやってきた江戸の版元、蔦屋重三郎は囚われの身の異国人、シャーロック・カーライルと出会う。奉行からシャーロックを江戸で世話をするように脅されて、渋々従う重三郎。その道中、シャーロックは非凡な絵の才能を明らかにしていく。そして江戸の手前、箱根の関所で詮議を受けることになった彼ら。シャーロックの名を訊ねられ、咄嗟に出たのは『写楽』という名だった――江戸を熱狂した写楽の絵。描かれた理由とは? そして金髪碧眼の写楽が江戸にやってきた目的とは?

処理中です...