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86話 エキボカル公爵
しおりを挟む『エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵の3隊に第2結界の、結界壁周辺に張り付いて守らせろ! 転移魔法を許可する!』
王太子アニマシオンの命令を聞き、エキボカル公爵は激怒し… 騎士団長グランデを良く思わない、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵も公爵の意見に同調した。
「無能な王太子の命令など聞いていたら、手柄を全部、王太子お気に入りのグランデに横取りされてしまいます! 我々が直接、魔王と対決するべきです! エキボカル公爵!!」
鼻息あらくセルビシオ伯爵が訴えると、公爵は正にその通りだとうなずく。
「そもそもオメガが作った結界などが、本当に役に立つとは思えません! 結界とは優秀な魔法士たちが力を合わせ、何年もかけて緻密な魔法陣を作りあげることで、初めてできる高難度の魔法です!!」
王都を守る結界が、その方法で張られている、強固な魔法である。
「デポシシオン子爵が言う通りだ! 加工した魔石で作った結界など、ただの気休めでしかない!」
結界壁が魔獣たちを阻む様子を、実際に自分の目で見ていない、セルビシオ伯爵が思い込むのも、無理もない話だった。
4代目レガロ伯爵の手記を参考にして、アスカルがグランデと王太子に提案した、結界石を使って結界を張る方法は、結界石を正しい位置に配置すれば、簡単に短期間で完成させられる、便利な簡易結界である。
…だが、その一方で強度が脆弱で、長期的に維持することが難しいという弱点もあった。
その弱点を補うために、結界石へ加工する前の研磨した魔石を、専門家とアスカルによって厳選し、純度の高い良質なものだけを使用し、結界の強度を上げることに成功した。
「グランデからの報告では、大量の魔獣が発生し、魔王の触手が暴れているというが… 子供だましの結界を破ったからと言って、脅威になるとは思えない!」
グランデの報告は、自分の手柄を大きく見せるために、グランデが必要以上に大騒ぎしているだけで… そのうえ普段から仲の悪い自分たちを落とし入れようとしていると、エキボカル公爵は深読みしていた。
「このまま無能な王太子、アニマシオンの命令を守っていては、下賤な娼婦の息子が、我が国の貴族社会を脅かすようになるだろう!! そんなことは断じて許してはならない!! 我々は、この愛するインテルメディオ王国のためにアニマシオンの命令を無視し、第一結界内に転移し、魔王と対決する!!」
「おおお!! エキボカル公爵!! その御言葉を待っていました!」
「エキボカル公爵! どこまでもお供します!」
エキボカル公爵、セルビシオ伯爵、デポシシオン子爵の3人は、高揚感に酔いながら、瞳を輝かせてお互いの顔を見合せ、大きくうなずいた。
「そして我々が魔王を討伐した後は、グランデに頼る恥知らずの王太子アニマシオンの廃嫡と、第二王子殿下の立太子を国王陛下に進言する!!」
エキボカル公爵は友人たちの前で、堂々と宣言する。
「騎士たちを集めろ―――っ!!」
セルビシオ伯爵がエキボカル公爵のテントを出て、3隊に号令を出す。
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