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81話 レガロ伯爵家の支援

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 大地の裂け目からふき出した、生物の魔力を吸い取る黒い炎に追われ、黒騎士たちの一番うしろを走るグランデは…
 このまま走っても、大地の裂け目を囲んで張られた、結界の外への退避たいひは間にあわないと判断し、剣を抜いて立ち止まると、大地をなめるように追って来る黒い炎を剣圧で振り払い、炎が後退したすきに再び結界の外へ向けて走った。


 ようやく結界の外まで逃げのびると、振り返って… 黒い炎が結界ではばまれているのを確認し、黒騎士たちはその場でドスンッ… と腰を下ろし、ハァッ… ハァッ… ハァッ… ハァッ… と荒い息をはく。

 騎士たちの人数をかぞえて、新人騎士も含め、全員無事だとわかり、ホッ… とグランデは一息つく。


「あの黒い炎… 我々の持つ魔力に引かれて追って来ましたね?」
 グランデの腹心の部下の1人、エンチュフェが口を開く。

「ああ、こんなものは180年前に残された、魔王復活の記録にも無かったな…!」
 結界の結界壁のこちら側から、グランデが手を出すと…
 黒い炎がグランデの差し出した手に向かって襲い掛かって来るが、バチッ… バチッ… と白い火花を散らして結界壁に阻まれた。

 その黒い炎の間から、グランデたちが見慣れた魔獣が猛烈な勢いで走って来ては、透明の結界壁にガツッ…! ガツッ…!とぶち当たって白い火花を散らして、面白いぐらいにはね飛ばされる。
 

「書記官を何人か読んで、詳細な記録を取らせた方が良いかもしれませんね… 約200年後の子孫のために」
 エンチュフェは自分たちが、とっくに死んでいるであろう、未来のことを考え、苦笑を浮かべた。

「そうだな… とりあえずは、アスカルに感謝だ!! 結界のおかげで一息つける」
 グランデは手に持っていた大剣を、さやにもどした。

「正直、あまり期待はしていなかったのですが… 使えますね、この魔石の結界は… 伯爵夫人にお礼を言わなければ」

 結界用の魔石も、アスカルがレガロ伯爵家魔石鉱山から調達したのだ。


 自慢げに妻の話をするグランデの前に、妻のアスカル本人が転移魔法を使って突然あらわれた。

「グランデ様! ご無事ですか?! 皆様をお迎えに来ました」

「アスカル…っ!! 危険な場所には絶対に来るなと言ったはずだ!!」

「グランデ様の側が、どこよりも一番安全だと、僕はいつも思っていますから? ここが危険だとは思いません」
 じょうずに夫の説教をかわし、丸め込もうとするアスカル。

「まったく… 有能過ぎる妻も、考えものだな…?」
 ぼやくグランデの背後で、くすくす… とエンチュフェは忍び笑いをもらす。


 たった今、アスカルが使った転移魔法の魔道具は、王太子アニマシオンと取引をして… アスカルが手配した技師や職人たちを使い、レガロ伯爵家の魔石鉱山から採掘された、最高級の魔石で、騎士団長グランデが持つ転移魔法の魔道具の複製を作った。

 厳しく王家が管理している転移魔法の魔道具を複製し、使用許可を王太子からえる代わりに、アスカルは数個作り、そのうちのいくつかを、無償で騎士団に提供している。

 すべては、グランデを魔王討伐で死なせないための、アスカルなりの後方支援だった。


 魔石鉱山をせっかく3ヶ所も所有しているのに、ここで出しおしみをするのは、愚か者のやることだと… ここぞとばかりに、アスカルはレガロ伯爵の名で、戦いに使う魔石を提供しているのだ。

 エキボカル公爵家をはじめ、有力貴族たちも魔石や武器の提供をしているが、どの貴族も中途半端で… レガロ伯爵家の支援に勝てる貴族はいなかった。 


 王国内でレガロ伯爵グランデの名声を、アスカルは爆上げしている最中である。

 ちなみに… 大型魔道武器の大砲で山頂を吹き飛ばした、山を調査すると、新たな魔石鉱脈が見つかり… 近い未来、伯爵家は4つ目の魔石鉱山を所有することになる予定だ。







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