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7話 密談2 グランデside

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 王太子の執務室で…
 グランデは眉をひそめ、王太子アニマシオンが自分に何を言っているのか理解できず、聞き返した。

「何ですって?!」

「レガロ伯爵が若い頃、君の母上の職場(娼館)の常連だったらしいと分かってだな、そこでくわしく調査した結果、君こそレガロ伯爵家を継ぐのにふさわしい、立派な非嫡出子だと判明したのさ!」

「お断りします!」
<ふさわしい? 立派な非嫡出子?! 何を言っているんだ、この人は? このオレが爵位を継いで貴族になれるような人間だと、本気で思っているのか?>

「まぁ… まぁ… そう言わずにだな! 爵位を持って貴族になれば、騎士団で君は出世できるし、顔が怖くて野獣のように荒っぽくても、社交界で綺麗なオメガにモテるようになるぞ~?」

 騎士たちの間で、グランデの口の悪さと荒っぽい戦い方から、陰で野獣騎士とさげすんで呼ばれている。

「王太子殿下、オレは爵位なんていりませんから… 騎士団の執務だけでも面倒なのに、そんなものがあると、オレの大嫌いな義務だとか責任だとか、面倒なのが発生するし… それにオレの顔は、少しも怖くありません! これでも娼館へ行くと、オレを取り合って娼婦たちが喧嘩するほど、モテモテなのを知らないでしょう?!」

 ふん! と鼻をならし、グランデはニヤリと自慢げに笑うと、分厚い胸を張って腕組みをした。

「それでも君にはレガロ伯爵家を継いでもらう! そうでもしなければ、いつまでたっても黒騎士団の団長の席が、空席のままになってしまうからな!」

「う゛う゛っ…! 王太子殿下、それは…!」

「困るだろう? グランデ?」

 魔王復活の日が近くなり… 日を追うごとに国中で魔獣の数が増え、魔獣の討伐そうとう戦が激化してゆくなか… 激務続きで身体を壊した黒騎士団の騎士団長は、騎士団を辞めることとなった。

 そこで元騎士団長が指名した副団長のグランデが、団長に代わり掃討戦の指揮をとっていたが…
 実力はあっても爵位が無いため、グランデは正式に騎士団長に就任できずにいた。

(国中から選び抜かれた、特に魔力が強い優秀な魔法騎士で構成される黒騎士団の騎士、通称黒騎士たちのほとんどが、名門貴族出身でエリート意識が強く、そのため爵位を持つ者が団長職に就く決まりとなっている。)


「このままだと、君の大嫌いな、無能な~ 無能な~ バカ公爵殿が騎士団長になることになるが、君はそれでも良いのか、グランデ?」

「殿下…」
<別にオレは面倒ごとが多い騎士団長になんか、なりたくはないが… だが、あの見栄っぱりでプライドが高いバカ公爵が団長になれば、確実に無駄死にする騎士が出て来るだろう… 特にオレが信頼する有能な騎士を中心に、卑劣ひれつな嫌がらせをするはずだから…!!>


「どうだ? 今すぐ伯爵になりたくなっただろう、グランデ?!」

「うう~むぅぅぅぅ… ですが殿下、17人の非嫡出子たちとオレは相続争いをするのなら… 決着するまで何年もかかるのでは?」
<こうやって時間がかかる面倒臭さも、オレが関わりたくない理由なんだが?>

 うなりながらグランデは眉間にしわを寄せ、疑問を口にすると… 有能な王太子アニマシオンは、しっかり方法を考えていた。

「もちろん早く終わらせる秘策は考えてあるさ!」
 パチンッ! と片目を閉じて、王太子はウインクをする。

「秘策?」

「爵位を与えるのは国王陛下だろう? そこで陛下にお願いするのさ」

「何をですか?」

「どの非嫡出子にも、爵位を継ぐ資格が同等にある… だったら、名家(昔は)レガロ伯爵家の爵位にふさわしい、一番に継承させると… 命令を出してもらう」

「ああ、なるほど…!」


「つまりグランデ、非嫡出子たちの中で、一番実力がある君が、レガロ伯爵にふさわしいだろう?!」 







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