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13話 初夜が明けて

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 激しく淫らな初夜が明けると… 昼近くにラーヤは食事の時間だからと女官に、起こされた。

 新婚夫婦が初夜の翌日に、2人で一緒に“幸運を呼ぶ女神の花” と呼ばれる、ビンタンの花を練り込んで打った、ピンク色の長い極太麺を2本、ラーヤは小皿に用意された数種類のタレに付けて食べる。

 本来なら花嫁と花婿が一本ずつ、お互いに食べさせ合うのがビンタンの花麺の正式な食べ方だが… 今さら皇帝がラーヤの食事に同席するはずもなく、お腹が減っていたラーヤは、花麺を2人分綺麗に完食した。
 

「ふふふっ… あ~あ…」
<まさかビンタンの花麺を、1人で2本も食べることになるなんてね…? そういえば元婚約者のサピが、この麺を食べるのが夢だと言っていたっけ? 彼女には本当に悪いことをしたなぁ…>


 第4皇妃になることを皇家に承諾し、サピの家に婚約解消の話をしに、父と2人でラーヤはムンブリ侯爵家へ行くと… 

『私の心をもてあそんで、なんて不誠実でひどい人なの?! ラーヤの薄情者―――っ! 私があんなに愛してあげたのに!!』

 ティーテーブルに並べられた熱いお茶を注いだカップを、怒り狂ったサピがラーヤに投げ付けた。


 父親がとっさに腕を出して、ラーヤをかばってくれなければ、危うく顔に大やけどをするところだった。

 ムンブリ侯爵はラーヤがだめなら、バングヌ伯爵家を継ぐ次男とサピを婚約させようとしたが、熱いお茶を投げ付けられて腕にやけどを負った父はその場で断った。

<“愛してあげたのに” …と言われても、彼女に愛されていたか、どうかなんて、正直… 僕にはわからないよ>
 なぜならラーヤ自身が、家族以外の人間を、まだ愛したことが無いからだ。


だから…
 
『ふふふっ… ラーヤ、愛しているよ!』

<クバラ様にも言われたけど… 本当かな? 言われた時はドキッ… 
としたけど、僕も誰かを愛すことが出来るのかな? 僕はサピのいう通り薄情だから…>


 サピと婚約していた時は、婚約者を好きになろうと努力したが… 結局、家族以上に大切だと感じられず、ラーヤは誰かを愛す自信を無くしていた。

<こんな状態なのに、僕は皇帝陛下の皇妃になってしまったし… 陛下を愛さなければいけないのに… やっぱり自信が無いよ>


『君を学園生時代から、ずっと愛していたんだ』

「ふふふっ…」
<でも… 学園中の生徒が憧れていた、あのクバラ殿下に言われて… 何となく嬉しいなぁ>







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