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69話 神に与えられた役目 ディアマンテside

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 今朝の朝食室は珍しく、フロルとディアマンテの2人だけだった。

 
 昨日の舞踏会でみんな疲れているのだろう。


 出来ればディアマンテもクリステルのように休暇を取りフロルとゆっくりしたかったのだが、残念ながら立場上そういうワケにはいかなかった。


<以前は騎士団の副団長職は神に与えられた役目で、これ以上素晴らしい仕事は他に無いと疑わなかったが、最近は面倒に感じるコトが多くなった… そろそろ引き際かもしれない>


「どうかしましたか? 旦那様、そんなに難しいお顔をなさって」

 いつものようにディアマンテの膝に座ったフロルが心配そうに見上げてくる。


「次の副団長候補を何人か決めて育て始めようかと思ったのだ」

「ええ?!」


「前もって準備をして、団員たちの不平不満や意見を良く聞き、私も説得したりと… そうすればヴェルメーリョのような愚か者も出ないのではないかとな」


「あ…あの…! 私が前に余計なコトを言って旦那様を困らせてしまったからですか?」

「………」

 不安そうにするフロルの頬を指先でくすぐる。


「以前ほど、私は騎士でいることに執着が無くなったせいだ」

「執着ですか?」

「やりたいコトが他に出て来たということさ」

「何がしたいのですか?」


 ニヤリと笑うディアマンテに、何となく察してフッと頬がバラ色に染まるフロル。


「そうだ! せっかく美しい妻を手に入れたのだから、もっと可愛がるべきだと思わないか?」

「ふううううぅ~んん…」

 子犬が鼻を鳴らすような声を漏らすフロル。


「領地経営にも本腰を入れたいし」

「ああっ! 私もお手伝いしたいです… 私の祖父は商人でしたし、健在だった頃は元ベント子爵領の運営についてコッソリ話し合ったり帳簿の付け方を習ったりしてました」

「ソレは頼もしいな!! 帳簿なら書斎にあるからいつでも見ると良い」

「良いのですか?!」

「ダメな理由は何も無いだろう?」

「フフフフフッ」

 嬉しそうに笑うフロル。



<後はヴェルメーリョ伯爵の罪を暴く証拠を集め断罪へ持ち込めば、心配事は今のところ無くなる、その前に手合わせがあるが…>


 モモのジャムを付けたパンを千切ってディアマンテの口に入れるフロル。


<フロルは手合わせについては何も言わないが、昨夜の話し合いでその話題が出ると不安そうにしていたから、けして平気では無いのだろうけれど… 騎士の妻の本分だと耐えようとしているのは確かだ>





 さっさと終わらせてしまいたいモノだ。

 




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