上 下
45 / 90

44話 オウロ公爵家の朝

しおりを挟む


 オウロ公爵家、伝統の結婚初夜三日三晩が明けた朝。



 朝食室に集うクリステルとフェーブリ医師せんせい、フロルとディアマンテ。


「クリステル、美しいローブをありがとう」

 ニコニコと嬉しそうに礼を言うフロル。


「気に行った? 絶対フロルに似合うと思ったんだ!!」

「ふふふふっ… 旦那様もいっぱい褒めてくれたよ」


 フロルとディアマンテは仲良く見つめ合う。


「それで… フェーブリ医師せんせいはなぜ、ウチで朝食を摂っているのだ?」

 隣に座るフロルの細い指を、極太の親指でやわやわと撫でながら、ディアマンテはフェーブリ医師せんせいを見る。


「私の妻の家がこの近くなんでね …まあついでだよ!」


「えええ―――っ!! フェーブリ医師せんせいは結婚しているの?!」

 ショックを受けるクリステル。


「ああ、妻は3人いるのだが… 相手の身分が低くて結婚となると面倒でね、残念だがみんな愛人扱いになってるよ」

(この国の法律では一夫一妻制である)


「3人とはまた… 剛胆だな!」

 流石に呆れるディアマンテ。


「あんたが公爵のクセに小さ過ぎるのだよ!!」

 スゴイ美女なのに、ガハハハハッ…と笑うフェーブリ医師。


 どうやってもフェーブリ医師には口では勝てなくて、何とも言えない微妙な顔をするディアマンテに、フロルは吹き出す。


「ほら、みんなさっさと食べて!! フロルも全部食べるんだよ!!」

「フェーブリ医師には誰もかないませんね…」


 素直に言うコトを聞き、もぐもぐと残りを一生懸命食べるフロルを、目を細め愛し気に見つめる3人。




 公爵家の書斎に移り、ディアマンテが座る、書斎机にフェーブリ医師は封筒を置く。

 2日前にディアマンテがフェーブリ医師に送ったオパーラからの手紙だ。


「何か分かったのか?!」

 ディアマンテの顔色が変わる。


 フェーブリ医師は手紙の隣に謎の液体が入った小指サイズの、小瓶を並べる。


「"禁忌の研究" から出た産物だよ… まずはコレを試してから話をしよう」


 ディアマンテが頷くと、フェーブリ医師はクリステルとフロルに窓とドアを開けさせ、書斎の風通しを良くする。


「さあ、栓を抜くよ!」


 栓を抜きディアマンテの顔の近くで小瓶を振る。


「うううっ…くぅ…ぅ…っ!!」


 顔を振り、口と鼻を手で覆いディアマンテは椅子から立ちその場から離れる。
 

 小瓶に栓をして机に置きフェーブリ医師も、机から離れる。





「ソレは何だ?! その攻撃的なフェロモン… オパーラと同じだ!!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

さよならの向こう側

よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 絵  YOHJI様

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

黒騎士はオメガの執事を溺愛する

金剛@キット
BL
レガロ伯爵邸でオメガのアスカルは先代当主の非嫡出子として生まれたが、養父の仕事を引き継ぎ執事となった。 そこへ黒騎士団の騎士団長アルファのグランデが、新しい当主レガロ伯爵となり、アスカルが勤める田舎の伯爵邸に訪れた。 アスカルは自分はベータだと嘘をつき、グランデに仕えるが… 領地にあらわれた魔獣退治中に運悪く魔道具が壊れ、発情の抑制魔法が使えなくなり、グランデの前で発情してしまう。 発情を抑えられないアスカルは、伯爵の寝室でグランデに抱かれ――― ※お話に都合の良いユルユル設定のオメガバースです。 😘溺愛イチャエロ濃いめのR18です! 苦手な方はご注意を! ツッコミどころ満載で、誤字脱字が猛烈に多いですが、どうか暖かい心でご容赦を_(._.)_☆彡

僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル
BL
(2024.6.19 完結) 両親と離れ一人孤独だった慶太。 容姿もよく社交的で常に人気者だった玲人。 高校で出会った彼等は惹かれあう。 「君と出会えて良かった。」「…そんなわけねぇだろ。」 甘くて苦い、辛く苦しくそれでも幸せだと。 そんな恋物語。 浮気×健気。2人にとっての『ハッピーエンド』を目指してます。 *1ページ当たりの文字数少なめですが毎日更新を心がけています。

僕は貴方の為に消えたいと願いながらも…

夢見 歩
BL
僕は運命の番に気付いて貰えない。 僕は運命の番と夫婦なのに… 手を伸ばせば届く距離にいるのに… 僕の運命の番は 僕ではないオメガと不倫を続けている。 僕はこれ以上君に嫌われたくなくて 不倫に対して理解のある妻を演じる。 僕の心は随分と前から血を流し続けて そろそろ限界を迎えそうだ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 傾向|嫌われからの愛され(溺愛予定) ━━━━━━━━━━━━━━━ 夢見 歩の初のBL執筆作品です。 不憫受けをどうしても書きたくなって 衝動的に書き始めました。 途中で修正などが入る可能性が高いので 完璧な物語を読まれたい方には あまりオススメできません。

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない

仁茂田もに
BL
旧題:ローゼンシュタイン伯爵夫人の王太子妃教育~不仲な夫と職場が同じになりました~ オメガの地位が著しく低い国、シュテルンリヒト王国。 その王国貴族として密やかに生活するオメガ、ユーリス・ヨルク・ローゼンシュタインはある日、新しく王太子の婚約者となった平民出身のオメガ、アデル・ヴァイツェンの教育係に任命される。 王家からの勅命を断ることも出来ず、王宮に出仕することなったユーリスだが、不仲と噂されるユーリスの夫兼番のギルベルトも騎士として仕えることになっており――。 不仲であるとは思わない。けれど、好かれているとも思えない。 顔を会わせるのは三か月に一度の発情期のときだけ。 そんな夫とともにユーリスはアデルを取り巻く陰謀に巻き込まれていく。 愛情表現が下手くそすぎる不器用な攻め(α)×健気で一途なだけれど自己評価が低い受け(Ω)のふたりが、未来の王太子妃の教育係に任命されたことをきっかけに距離を縮めていくお話です。 R-18シーンには*がつきます。 本編全77話。 完結しました。 11月24日より番外編を投稿いたします。 第10回BL小説大賞にて奨励賞をいただきました。 投票してくださった方々、本当にありがとうございました!

処理中です...