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42話 招待状
しおりを挟む新婚初夜3日目、 ディアマンテはローブ姿で書類仕事を手際よく処理しながら、ふと顔を上げる。
「フロル、君はワルツを踊れるか?」
「え? …ワルツですか? カドリールとかではなくて?」
ワルツは身体を密着させて踊るからドキドキするのだ。
「ブリンカール侯爵家から舞踏会の招待状が届いている… あそこはワルツばかりを流すので有名なのだよ、他にもいくつか招待状はあるが…」
「今は社交シーズンでしたね…」
「フロル… 2つ… 嫌な話をする」
「はい?」
「私たちは他の招待客に話題を提供するために招待されたのだ… 貴族たちはゴシップが大好きだからな」
フロルをジッと見つめるディアマンテ。
「…私たちから話を聞き出そうとする人や、意地悪を言う人がたくさん押し寄せるという意味ですね?」
「耐えられるか? 嫌なら私一人で参加するつもりだが」
「…私は負けませんよ旦那様! 子爵にもっと酷いコトを毎日言われても平気でしたから!」
フロルは元気よく小さな拳を振り上げる。
「そうか、だがあまり無理はするな! …無理をしてると分かったらすぐに止めるからな?」
「旦那様は過保護すぎますよ」
フロルは何度も、ディアマンテを死ぬほど心配させているのだから無理はない。
ベント子爵家の醜聞で、フロルとディアマンテの結婚も公表され、秘密にしていられなくなったのだ。
今のところ2人の結婚は美談として、世間には受け入れられているが…
オパーラの件もあるから、いつソレが引っくり返されるか分からない、微妙な状況だ。
大きな醜聞にまみれているからこそ、オウロ公爵家としては少しでも社交の場に顔を出し、名誉を回復しておきたいのだ。
この状況だから、社交活動は2人揃って出るコトに意味がある。
ソレでもディアマンテは、フロルの気持ちを優先させようとする気遣いを見せた。
<旦那様の妻になる覚悟も、オウロ公爵夫人になる覚悟も、出来ている>
「ダンスは好きです! 学園時代いつもクリステルが相手をしてくれたので」
ディアマンテは満面の笑みを浮かべる。
「クリステルにダンスを教えたのは私だ… なら出席で決まりだな!」
「あ! その前に練習を!! 学園を退学したのは7年も前ですから… それ以来一度も踊って無いので」
「ああ、そうしよう!」
<わあぁ… 旦那様とダンスが踊れる! ソレもワルツ!!>
「あともう一つ… 私とオパーラの醜聞だ」
ハッと息を呑み、フロルは姿勢を正す。
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