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26話 夜道

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 厩舎の前に繋いでおいたクリステルの愛馬を連れ、門に向かう2人。


「長居して悪かったねフロル、すっかり暗くなってしまったなぁ」

「旦那様もそろそろ帰って来るから、泊まって行けばいいのに… 1人で帰るなんて危ないよ?」

「お兄様に拳骨で殴られたらもっと危ないもの」


 不貞腐れながらいうクリステルに笑ってしまうフロル。


「旦那様はそんなコトしないよ」

「フロルは可愛いね、アルファの独占欲を知らないの?」

「…ああ!」


 ネ―ヴィ医師の診察を受ける時にも、ディアマンテは細々とシューヴァに指示を出していた。


 伸ばした腕の長さ以下まで医師とフロルを、近づけてはイケナイとか、フロルの肌を見なければならない時は、ディアマンテ自身が必ず同席するとか…


「ココで良いよ、寒いから中に戻ってフロル… 風邪をひいてしまうよ」


 ショールを肩から掛けているがフロルはかなり薄着だ。


「うん、暇になったら遊びに来て、クリステル約束だから!」

「約束ね!」


 剣をカチカチと鳴らしながらクリステルは馬の背に乗る


「気を付けて、クリステル」

「今夜は月が明るいから平気だよ」



 フロルはクリステルが見えなくなるまで見送ると、寒さでブルリと震えながら邸へ向かって歩き出す。





 夜道を並足で進む馬の背で、ぼんやり考え込むクリステル。



「てっきりオパーラがいると思ったのに… お兄様は本当にどうする気なのだろう?」



 クリステルの背後から馬車が駆けてくる。

 脇へ避けるとスゴイ勢いでクリステルを追い越してゆく。

 御者席にランプを下げ、派手な装飾が付いた貴族の馬車だ。紋章があればどこの誰か分かるのだが、残念ながらついて無かった。


「何で貴族がこんなところを走る…? 変な感じだ…」

 

 この辺りで貴族が行きそうな場所は公爵家の別邸だけだからだ。




 
 首を傾げるクリステル。





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