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25話 親友

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 クリステルはフロルの膝で号泣した。

「私は幸せだから… 旦那様に救われて、諦めていたコトをいくつも叶えてもらったし、クリステル… ねぇ?」


 短くしたせいでくりくりと跳ねる黒髪を丁寧に撫でるフロル。


「契、契‥約結婚って何さ!! お…お兄様の…っ豚…ふぐっ…」


 罵りを途中まで言って我慢するクリステルに、笑みが零れるフロル。


「私がアルファだったら、学園を辞める前にプロポーズしたのに!!」


 ガバッと顔を上げたクリステルは、盛大に鼻水を垂らしていて、フロルはハンカチを出して鼻水と涙を綺麗に拭う。


「そうだね‥でもアナタにディアマンテ様を紹介された時、あの方に恋してしまったから…プロポーズは受けなかったと思う」

「フロル…厳しい!」


 クリステルもシンプルで丈夫そうな、ネックガードをしている。


「それにしてもあの子爵!! 私が訪ねて行った時も、男のオメガはコレだからって、聞こえるように悪口言われて… フロルのお父様だとは信じられなかったよ」

「あの家の人たちはみんなそう」

「弟に襲われたって? 信じられない… お兄様なんか私が発情期で誘惑フェロモン出しても… 弟のフェロモンなんて、オエエエ~ッ! 気持ち悪い! …って言うんだよ?! さっさと抑制剤飲めって」

「まあ私だってお兄様の性器見たいとは思わないから一緒だけど… フロルのは見たいけどね?」


 なぜか照れるクリステル、オメガらしくないオメガである。


「私のコトよりもアナタの話を聞かせて! どうやって騎士団に入ったの?」


 フロルは小さな手で剣術で硬くなったクリステルの掌をキュウと握る。


 クリステルも小さな手を包むように節は太いが細長い指でキュウと握り返す。


「近衛騎士にはオメガだけの隊があってね、王族でも未婚のオメガを護衛する隊なんだ… アルファが護衛だと逆に危険でしょう?」

「ああ、でもスゴイねクリステル! 本当にスゴイ!!」


 憧憬を含んだラベンダー色の瞳がキラキラ光る。


「褒めてもらえて嬉しい! …でも最近は上から早くつがいを作れとうるさく言われていて… うなじを噛まれるとその刺激で"オメガ・ホルモン" が安定して発情期が治まると言うでしょう?」

「ええ… 主治医の先生に聞いた」

「分かってはいるけど私より強くないとね!」

「いないの?」

「みんな既婚者なんだ」

「アナタが強すぎるのね?」


 クリステルが苦笑いを浮かべる。

「兄さんがフロルと結婚したから、私は一生独身でも良いけど… つがいとなると発情期が再発しないよう定期的に情交しないとイケナイし」



 


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