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24話 クリステル イメージ補強イラスト

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「どうしてフロルがいるの?! どうして…?!」

「そ、その煌びやかな騎士の制服は… 近衛騎士団? …クリステル…様」

「様は止めろって言ったのに… 忘れたの?」


 頭の上で結んでいたふわふわとした黒い巻き毛は、顎のラインで揃えクルリと外向きに巻いている。

 キリリと凛々しい騎士へと成長したクリステル。

 学園に在学中、たとえオメガでも貴族の令息なら剣術は必須科目だった、当然フロルもだ。


 子供の頃から騎士になるのが夢で、8歳年上のディアマンテに仕込まれていたクリステルの剣技はずば抜けていて、相手がアルファでも同年代には敵無しだった。



「コ、ココにはお兄様の愛人が…っ!」

「ソレは私のコトです」

「・・・っ!!!」


 クリステルはイキナリ頭を殴られたかのようにビクリッと一歩下がる。

 背筋を伸ばし真っ直ぐクリステルを見つめるフロルの手が小刻みに震えていた。


「お… お兄様の豚野郎!! …よくも! …よくも私の親友を…っ! 日陰者にするなんて!!」


 クリステルは凛々しい顔をクシャリと歪ませ、金色の眼から涙を流す。


「クリステル!! 待って誤解だから…っ! とても面倒な事情があって、でも結婚してるから!!」


 フロルは慌てて駆け寄り、クリステルの腕を掴み視線を合わせる。


「だったら、なぜお兄様はこそこそとアナタを別邸に隠してるの?!」

「そ、それは…」


「奥様、お茶の用意ができました、クリステル様は少しお気を静められてはいかがですか?」


 落ち着いたシャーヴィの呼びかけに、フロルはホッとするが。


「シャーヴィ!! アナタこのコトを知っているの?!」

 シャーヴィをキッと睨み食って掛かるクリステル。

「当然でございます、ですが部外者であるクリステル様にはお教えできません」


 たとえクリステルが有能な騎士でも、生まれた時から知っている公爵邸の元執事に敵うわけもなく…


「な、何ですって?!!」

「理由はどうであれ、奥様が大切にしている旦那様を、クリステル様が罵れば、旦那様を大切に思うお優しい奥様が心を痛められるのは当然ですから、そんな方にお話するコトはありません」


 静かに諭し、ついでにキッパリ断るシャーヴィ。

 クリステルはハッと息を呑み、ぐっと黙り込む。


 フロルは気マズイ空気を変えようとパンッと手を叩き慌てて割って入る。


「お、お茶にしましょう! ね? 冷めないうちに… ああ薬湯を入れてくれたのねシューヴァ!」

「は… はい! ネ―ヴィ先生がこのお茶には心を穏やかにする効果もあると聞いたので…」

「シューヴァは本当に気が利く子! さあクリステル、このお茶は美味しいから飲みましょう! ね?」


「…分かったよフロル、でもその前に…」


 クリステルはフロルをギュッと抱きしめる。
 
 フロルの目からも涙が溢れ、スラリと伸びた背中に手を回す。


「手紙を書いても戻って来るし…! 子爵家に直接行ったら遠縁にあたる人に嫁いだと言われて… 相手は誰だと聞いても、貴族ではないから教えられないと…っ 子爵に追い返されて…!」

「クリステル… 私もアナタを思っていたけれど…オメガが外へ出ると問題を起こすと言われてね… ずっと家にいたよ」


 下働きの少年と一緒に屋敷の掃除や雑用をして、厨房で野菜の皮むきをしたり… 時には義母や弟、子爵の繕い物をしながら…        



 何度も幸せな学園の思い出に浸っていた。


 こんな話をしたらクリステルをもっと泣かせてしまう。






  ○  ○

クリステルです。
イメージ補強用イラストです。イメージ違ったらすみません!!
以前描いた、モノクロ挿絵に色を付けてみました。煌びやかな感じは脳内変換で、追加してください!!
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