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13話 フロルの狡さ
しおりを挟む別邸自慢の庭園を一望できるテラスで、午前中の清々しい光の中…
日光浴を楽しみながらフロルは、ネ―ヴィ医師に指示された、体外に毒を排出するための薬湯を飲んでいた。
フロルの弱った身体に、毒を輩出する為の薬を使うのは、かえって危険だとネ―ヴィ医師が判断し…
時間はかかるが身体に負担がかからない方法を選択した。
薬湯と言っても、数種類のハーブと香りづけの為に、甘い香りのする白く小さな花を浮かべた、とても美味しいお茶だ。
コレを毎食後に飲めるなんて、とても贅沢だと、フロルは密かに喜んでいた。
ボンヤリと美しい庭園を眺めているうちに…
何もするコトが無いと、どうしても暗い気持ちで余計なコトをウジウジと考えてしまう。
<私は何のために、ココにいるのだろう?>
毒が身体に蓄積されているため、流産や、もしくは障害を抱えた子が生まれる可能性が高く…
今、子どもを妊娠するのは、危険だとネ―ヴィ医師に止められているのだ。
下手をすると、フロル自身も命を落としかねないと。
<毒が完全に抜けるのに、半年もかかるというのなら…
今すぐ離婚して、ディアマンテ様を自由にした方が、良いのではないか?
彼が相手なら、契約結婚をしても良いという人は、きっといるハズ…
早く子供が生まれれば、ディアマンテ様は愛する人と、運命の番と結婚できる日も、早くなるのだから>
「私は狡い人間…!」
フロルの小さな顔が、自己嫌悪で歪み涙が滲む。
ディアマンテの為に何が一番最良の選択か、分かっているのに、どうしても自分から言い出せないのだ。
フロルの発情も、この別邸に来た一日目だけで、失神してからスグに治まってしまった。
生殖活動よりも、生命維持を優先させるよう、フロルの身体がそう判断したのだと、医師に説明された。
<今は…少しでも早く子供が産めるように、健康になるコトが私の仕事>
滲んだ涙を指で拭い、カップに残る薬湯を飲み干す。
「奥様、ネ―ヴィ医師がいらっしゃいました、奥様のお部屋の方へお通ししました」
従者のシューヴァ(執事シャーヴィの孫)がフロルを呼びに来た。
「…もうそんな時間でしたか… ありがとう、スグに行きます」
今日は医師の診察を受ける日だった。
ネ―ヴィ医師の診察は、いつも自室で受けるコトになっていた。
「良くなっていれば良いのだけれど…」
ポツリと零すフロルに、シューヴァがニコリと微笑む。
「最近はお顔の色も、よろしいですし、きっと良くなっていますよ奥様」
フロルの5歳年下の、執事の孫は祖父に似て、優しいグリーンの瞳をしている。
ベータだが、シッカリしていて、老執事同様、とても頼りになるのだ。
「ありがとうシューヴァ、旦那様の為にもそうならなくてはね」
既婚者とはいえ、フロルはまだ若く新婚の花嫁なので…
アルファのネ―ヴィ医師と2人っきりでは、何かと噂の種になりかねないと、従者のシューヴァが部屋の隅に影のように立ち、付き添いとして同席する。
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