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12話 朝の見送り
しおりを挟む朝食を終え、仕事に出掛けるディアマンテを、フロルは玄関まで見送りに出る。
今日も良く晴れた良い日だ。
執事のシャーヴィが渡した、重そうな大剣を受け取り、ディアマンテは腰に装着したベルトに剣の鞘を固定する。
「本当にこんなに遅れて… 騎士団の団長様に叱られませんか?」
自分の朝食に付き合って遅くなってしまったのだから、フロルとしては落ち着いてはいられない。
気を揉むのは当然である。
「ウチの… 第二騎士団の騎士団長はラーゴ王子だと、君は知っていたかな?」
気を揉むフロルとは正反対に、ディアマンテは大丈夫だと微笑む。
「第二王子ですよね? はい、知っています」
首を傾げて見上げるフロルの細い腰を、ディマンテは引き寄せた。
「第一、第二の騎士団長は、実力で選ばれるのではなく王族が就くのが慣例でね、いわば名誉職なのさ」
ちなみに第一騎士団の騎士団長は、現在の王太子。
「ソレは知りませんでした…」
分厚い胸に手を置いて、ディアマンテの肩より低い位置から、フロルは顔を見上げた。
「王子は忙しい方だから、実質的には、私が騎士団を預かっているのだよ… だからこういう時には自由が利くというワケさ」
サッと屈んで、ディマンテはキスをして、フロルを満足そうに見下ろした。
「あの旦那様… 本邸に帰らなくても良いのですか? 私はとても体調も良いですし、気遣って下さるのはとても嬉しいのですが… 騎士団の他に公爵家のお仕事もあるのでしょう?」
別居暮らしになると聞いていたのに…
ディアマンテはずっと、この別邸に帰宅し、毎晩フロルと一緒のベッドで眠る。
今はフロルの体調を考慮し、子供を作る為の行為は、全くしていないのにだ。
朝食を摂ったら、ディアマンテは別邸から騎士団本部へと出掛けるという毎日だから、心配になる。
「君といたいから帰って来るんだ… 君が嫌なら我慢するが?」
心配そうにディアマンテが、フロルの機嫌を窺うように見つめ…
「嫌ではありません…!」
フロルの胸がギュッと疼き、自分でも目が潤んでいるのが分かる。
「良かった、ソレなら今夜もこちらに帰って来るよ」
ディアマンテは、ホッとため息をつく。
「それと… ディアと呼んで欲しい! ベッドでは何度もそう呼んでくれただろう? あの呼ばれ方気に入ったから」
フロルにだけ聞こえるよう、耳元で囁き、ディアマンテはついでに耳にもキスをする。
「・・・っ!」
キスをされた耳まで真っ赤になるフロルに、ディアマンテは明るい笑い声を上げた。
「行ってくるよ」
真っ赤になったフロルをギュッと抱きしめ、もう一度キスし、名残惜し気に厩へと向かうディアマンテ。
「明日からもっと早起きしないと…」
自分の膝にフロルを乗せて、時間が掛かっても今朝と同じように食事を摂る。
ディアマンテが頑固にそのやり方を通すなら…
フロルの方が、上手く合わせるしかないのだ。
キスされた唇を、フロルはそっと舌先で撫でる。
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