伯爵夫人Ωの攻防

82話 契りからの解放3

　近衛騎士団の練兵場で、ヴァーリは元部下と手合わせをし…

　殺意が籠る気迫を放ち、隙が出来た元部下の首に、鋭い一閃を打ち込み、首を刎ねる寸前で、ピタリと剣を止めた。

「…ヒッ…！！」　

「・・・・・・」

　ヴァーリが剣を引くと、元部下はズルズルと、その場に崩れ落ちた。



　剣を鞘へしまうと、ヴァーリは颯爽と歩き、彼の元へ真っ直ぐ向かい誓った。


「アナタに忠誠を誓います…　どうか私をあなたの騎士に！！」 

　ヴァーリは彼の前で跪き、細く華奢な手を取り、そっとキスをした。



「嗚呼、侯爵様！！　侯爵様！！」

　彼は頬を赤らめ、自分の前に跪く騎士を、熱烈に見つめた。


「…どうか、あなたの騎士に！！」

　真摯な輝きを宿した、ヴァーリの鳶色の瞳が彼を見つめた。


「アナタの望みのままに…　どうか、私の騎士に！！」

　彼は瞳を潤ませ、ヴァーリをウットリと見つめ続けた。


　ヴァーリは、サッ…　と、立ち上がり、彼をその暖かい胸に、力強く抱き締め…

　彼の耳元で、囁いた。



「必ずあなたを、悪漢から守り…　そして成敗して見せます！！　どうかその美しい瞳で最後まで見届けて下さい！！」



「はい！　私の騎士様☆彡」


　

　フェーリアスは、ギリギリと歯ぎしりをした。



　圧倒的な騎士の強さを、元部下との手合わせで、被験者のオメガに見せつけ…

　そのスグ後に、ヴァーリは被験者を、全力でタラシ込む。


　アルファなら誰でも出来る、役目ではない。

　強さと容姿、ついでに資産と爵位がある、魅力的なアルファにしか、出来ない大仕事だった。


　見なけれが良いのにと…　思いつつも、フェーリアスは見ずには、いられなかった。




「さぁ、行きましょうガート！　2人きりになれる場所へ」


　被験者の彼の細い腰を、少し荒っぽく引き寄せ、そのままイチャイチャムードで、団長の執務室へと向かった。

　ソコで、ブランコ医師が、ウットリと陶酔している被験者に、催眠術を掛けるのだ。




　チクチクと背中に、突き刺さるような、フェーリアスの視線には…

　ヴァーリは、気付かないフリをした。




　被験者とヴァーリの後ろ姿を眺めて、フェーブリ医師は感嘆の声を上げる。


「団長殿はドンドン、色男ぶりが上がるね…　いやぁ、上手い！　上手い！　詐欺師の才能があるよ！！」



　悪魔のような形相のフェーリアスに、フェーブリ医師は流石に、気マズイらしく、ペラペラと話すが、増々フェーリアスの機嫌が、悪くなるばかりだった。




　今のところ、この実験を7人に試して、4人が成功している。

　ヴァーリが好みのタイプだと言う被験者程、成功率が上がるとブランコ医師は分析していた。


　そこでフェーブリ医師は…


　王立第2騎士団の団長や、剣聖の称号を持つ公爵に協力を求めているから、その2人から良い返事が得られれば、もっと成功の確率が上がるハズだった。