55 / 87
54話 怒り狂う招待客
しおりを挟むエントラーダ伯爵と、長兄ブラッソが悪魔のような顔で怒り狂いアディを睨み付けた。
「大丈夫だアディ、君はもう私の妻なのだから! 恐れることは無い、堂々としていれば良い」
「でもデスチーノ、お父様… お兄様が… どうしてここに?」
怯えて震えるアディの手をギュッ… と握り… デスチーノは小さな手にキスを落とす。
「それは… 私が呼んだからさ! 忙しいから効率良く、面倒ごとを全部まとめて終わらせようと思ってだな…」
ぽりぽりと頬をかきながらデスチーノがさらりと答える。
「え?」
「お前は一体、ここで何をしているのだ!! 自分が何をしているのか分かっているのか?! この愚か者が―――っ!!」
大声で叫びながら怒り狂ったエントラーダ伯爵が、祭壇前に立つアディに詰め寄った。
怒鳴られて、ビクッ… ビクッ… と臆病なウサギのように飛び跳ねそうになるアディを、デスチーノは敢えて背中に隠さず、妻として隣に立たせる。
「これだからオメガは!! お前がいつも自分勝手だから、躾が悪いと伯爵家がバカにされるのだ!」
長兄がアディに軽蔑の目を向け罵る。
「さてと、くだらない個人的意見をだらだらと並べるのはそれぐらいにしてもらえるかな? 伯爵、それと義弟殿? …んん? いや待てよ? 一応は妻の兄だから、義兄殿と呼んだ方が良いのかな? んんん?」
わざとらしく首を捻るデスチーノに…
「今まで通りでかまわないだろう? それとも君の義弟殿はそんな小さなことで、さっきのように口汚く罵るような小さな器の持ち主なのか?」
オエスチ侯爵がのんびりと参列者席から出て来て、口をはさみ…
大勢の人前で、実の弟を口汚く罵るようなやつは、小人物なのだと仄めかす。
「なっ… 義兄上、今はそのようなことを問題にする時では無い!! 今はアデレッソスの問題を話しているのです!」
顔を真っ赤にして、長兄はデスチーノに抗議したが… 相手がオエスチ侯爵と、ジェレンチ公爵だと認識しているため、さすがに長兄は2人を口汚く罵るようなことはしなかった。
「ほらな! 君は義兄で良いらしいぞ? 本人が決めたのだから、これで良いのではないかな?」
「それもそうですね」
のんびりと口をはさんだオエスチ侯爵に合わせて、デスチーノものんびりと受け答えた。
「話にならん! アデレッソス帰るぞ!」
エントラーダ伯爵が腕をのばしアディの腕を掴もうとするが… その手をデスチーノが止める。
「義父上、先程からあなた方は、私の妻… ジェレンチ公爵夫人に無礼が過ぎますぞ?」
「なっ… なんだと?! アデレッソスは私の息子だ! 愛人にすると連れ去ったかと思えば、今度は結婚だと? そんなバカな話があるか―――っ!!」
息子と同年代の若い公爵に諫められて、プライドだけは高いエントラーダ伯爵は、長兄のようには、屈辱に耐えられなかった。
「先ほどアデレッソス殿の意志で、ジェレンチ公爵との結婚式を私が執り行った、伯爵は何か異議がおありか? あったとしても、アデレッソス殿本人が望んだ、"結婚をする権利"をあなたが曲げることは出来ませんぞ?」
それまで黙っていた剣聖が、むっ… としながら自分が執り行った結婚式に文句を言うなと、エントラーダ伯爵を威圧する。
当然、剣聖も強力なアルファであり、オエスチ侯爵が師匠と仰ぐ人物である。
「なっ…」
3人の強力なアルファに睨まれ、伯爵は青ざめ、長男と共によろよろと後退った。
「エントラーダ伯爵、あなたに1つ面白い話を教えてあげましょう! そのためにわざわざお呼びしたのです」
ニヤリとデスチーノは悪い笑を浮かべる
エントラーダ伯爵を呼べば大騒ぎになるとわかっていて、デスチーノが敢えてこの場に呼んだのには、それなりの理由があった。
0
お気に入りに追加
378
あなたにおすすめの小説
アルファとアルファの結婚準備
金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。 😏ユルユル設定のオメガバースです。
山神様と身代わりの花嫁
村井 彰
BL
「お前の子が十八になった時、伴侶として迎え入れる」
かつて山に現れた異形の神は、麓の村の長に向かってそう告げた。しかし、大切な一人娘を差し出す事など出来るはずもなく、考えた末に村長はひとつの結論を出した。
捨て子を育てて、娘の代わりに生贄にすれば良い。
そうして育てられた汐季という青年は、約束通り十八の歳に山神へと捧げられる事となった。だが、汐季の前に現れた山神は、なぜか少年のような姿をしていて……
エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~
冬之ゆたんぽ
BL
二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。
■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。
■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)
攻められない攻めと、受けたい受けの話
雨宮里玖
BL
恋人になったばかりの高月とのデート中に、高月の高校時代の友人である唯香に遭遇する。唯香は遠慮なく二人のデートを邪魔して高月にやたらと甘えるので、宮咲はヤキモキして——。
高月(19)大学一年生。宮咲の恋人。
宮咲(18)大学一年生。高月の恋人。
唯香(19)高月の友人。性格悪。
智江(18)高月、唯香の友人。
花婿探しに王都へ来たら、運命の番が2人いた?!
金剛@キット
BL
田舎の領地で醜聞騒ぎをおこし、婚約者に捨てられたオメガのヒラソルは、悪竜を退治した勇者と王太子が率いる騎士団が王都へ凱旋すると聞き… 騎士の1人を捕まえて花婿にしようと王都までやって来る。
そこで出会った騎士とヒラソルは番になるが… 相手が勇者だと後から知り、身分違いだと身を引こうとする……
※エロ濃厚!
※3Pあります。嫌いな方は要注意!
※お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。ご容赦を😓
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
ワールド エンド ヒューマン
村井 彰
BL
目を覚ましたのは、異形の頭を持つ化け物達の街だった。
女の家を転々としてヒモ暮らしを続けていた杉崎千尋は、ヤクザの情婦に手を出してしまい、夜の街を追われていた。だが、必死で逃げ惑ううちに駆け込んだ路地裏は、奈落の底への入り口だった。
そうして辿り着いたゴミ捨て場の街で、千尋は花の怪人に拾われる。その男の頭部があるべき場所には、真っ白な百合の花が咲いていたのだ。人間を憎んでいるというその怪人は、“復讐”と称して千尋を組み敷こうとするが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる