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54話 怒り狂う招待客

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 エントラーダ伯爵と、長兄ブラッソが悪魔のような顔で怒り狂いアディをにらみ付けた。


「大丈夫だアディ、君はもう私の妻なのだから! 恐れることは無い、堂々としていれば良い」

「でもデスチーノ、お父様… お兄様が… どうしてここに?」
 おびえて震えるアディの手をギュッ… と握り… デスチーノは小さな手にキスを落とす。

「それは… 私が呼んだからさ! 忙しいから効率良く、面倒ごとを全部まとめて終わらせようと思ってだな…」
 ぽりぽりと頬をかきながらデスチーノがさらりと答える。

「え?」

「お前は一体、ここで何をしているのだ!! 自分が何をしているのか分かっているのか?! この愚か者が―――っ!!」
 大声で叫びながら怒り狂ったエントラーダ伯爵が、祭壇さいだん前に立つアディに詰め寄った。

 怒鳴られて、ビクッ… ビクッ… と臆病おくびょうなウサギのように飛び跳ねそうになるアディを、デスチーノはえて背中に隠さず、妻として隣に立たせる。


「これだからオメガは!! お前がいつも自分勝手だから、しつけが悪いと伯爵家がバカにされるのだ!」
 長兄がアディに軽蔑けいべつの目を向けののしる。 

「さてと、くだらない個人的意見をだらだらと並べるのはそれぐらいにしてもらえるかな? 伯爵、それと義弟殿? …んん? いや待てよ? 一応は妻の兄だから、義殿と呼んだ方が良いのかな? んんん?」
 わざとらしく首をひねるデスチーノに…

「今まで通りでかまわないだろう? それとも君の義弟殿はそんな小さなことで、さっきのように口汚くののしるような小さな器の持ち主なのか?」
 オエスチ侯爵がのんびりと参列者席から出て来て、口をはさみ…
 大勢の人前で、実の弟を口汚くののしるようなやつは、小人物なのだとほのめかす。
 
「なっ… 義兄上、今はそのようなことを問題にする時では無い!! 今はアデレッソスの問題を話しているのです!」
 顔を真っ赤にして、長兄はデスチーノに抗議したが… 相手がオエスチ侯爵と、ジェレンチ公爵だと認識しているため、さすがに長兄は2人を口汚くののしるようなことはしなかった。

「ほらな! 君は義で良いらしいぞ? 本人が決めたのだから、これで良いのではないかな?」

「それもそうですね」
 のんびりと口をはさんだオエスチ侯爵に合わせて、デスチーノものんびりと受け答えた。

「話にならん! アデレッソス帰るぞ!」
 エントラーダ伯爵が腕をのばしアディの腕を掴もうとするが… その手をデスチーノが止める。

「義父上、先程からあなた方は、私の妻… ジェレンチ公爵夫人に無礼が過ぎますぞ?」
 
「なっ… なんだと?! アデレッソスは私の息子だ! 愛人にすると連れ去ったかと思えば、今度は結婚だと? そんなバカな話があるか―――っ!!」
 息子と同年代の若い公爵にいさめめられて、プライドだけは高いエントラーダ伯爵は、長兄のようには、屈辱に耐えられなかった。

「先ほどアデレッソス殿の意志で、ジェレンチ公爵との結婚式を私がり行った、伯爵は何か異議がおありか? あったとしても、アデレッソス殿本人が望んだ、"結婚をする権利"をあなたが曲げることは出来ませんぞ?」
 それまで黙っていた剣聖が、むっ… としながら自分がり行った結婚式に文句を言うなと、エントラーダ伯爵を威圧いあつする。

 当然、剣聖も強力なアルファであり、オエスチ侯爵が師匠とあおぐ人物である。


「なっ…」
 3人の強力なアルファににらまれ、伯爵は青ざめ、長男と共によろよろと後退あとずさった。

「エントラーダ伯爵、あなたに1つ面白い話を教えてあげましょう! そのためにわざわざお呼びしたのです」
 ニヤリとデスチーノは悪い笑を浮かべる


 エントラーダ伯爵を呼べば大騒ぎになるとわかっていて、デスチーノがえてこの場に呼んだのには、それなりの理由があった。









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