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40話 楽しい準備
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ジェレンチ公爵邸に、アディが避難して2日目。
家族用の居間で、オメガ男性専門の仕立て屋が、手際良くアディの身体を採寸し、小さなメモ帳にちょこちょこと数字を書き入れて行く。
「最優先で進めて欲しいのが、結婚式用の純白の礼装ね!」
大張り切りでトルセールがテイラーから来た、従業員たちに指示を出す。
「お式はお屋敷の礼拝堂で行われるのですか? 大聖堂ででしょうか? 大聖堂ですと… 裾を床に広げて歩くような形のものがとても見栄えが良く…」
「裾は短い方が良いです!!」
アディは即答するが…
「お兄様のお話では、第一騎士団本部の礼拝堂が良いのではないかと言っているの… あなたはどんな場所かご存知?」
さりげなくアディの意見をスルーして、トルセールは一番、年嵩のテイラーにたずねた。
「ええ、はい! なるほど… 質素ではありますが、厳かな雰囲気がとても素晴らしい礼拝堂だと、記憶しております」
「そう、それはよかったわ! どんなデザインが良いかしら?」
「たおやかで華やかなものよりも、公爵様の騎士服とお揃いになるように… 騎士のように凛々しくキリリッとしたものはどうでしょうか? アデレッソス様はとても清楚で可憐なご令息ですから」
パタパタと見本帳に貼られた、デザイン画を捲り、テイラーはトルセールに見せた。
「まぁ!! 素敵! これが良いわ!!」
「…お義姉さま」
両掌をぱんっ… と打って、大はしゃぎをするトルセールに、アディは何かを意見するのを諦め、たずねられた時だけ答えるのが無難だと悟る。
「さぁ次は、お披露目用のドレスコートね! うふふふふぅ~っ! 楽しみだわぁ~っ!! ねぇ、アディ?」
「は… はい、お義姉様…」
いつの間にか義姉にも、アディはデスチーノと同じ呼び方をされるようになっていて…
そのせいか、実兄たちよりもお互い親しみが湧き、以前よりも更に2人は仲良くなった。
「アデレッソス様、お手紙が届いております」
早速、アディに不便が無いようにと、デスチーノが付けてくれた専属の従者が、居間まで手紙を持って来た。
アディにとって、生まれて初めての従者で、名前を呼ばれると緊張するのだ。
「あ… ありがとう、フェイラ」
デスチーノに言われて、昨日のうちにアディがエントラーダ伯爵家へ送っておいた、手紙の返事が届いたのだろう。
その場でアディは、手紙の内容を確認した。
「アディ…何て言って来たの?」
事情を知るトルセールは、心配そうに手紙を読み終わったアディにたずねた。
「うん、デスチーノの思惑通りになったよ」
「そう、良かったわ!」
2人で顔を見合せて、ホッ… と胸を撫で下ろした。
「それと… お義姉様に帰るよう説得しろと書いてある」
「ふんっ!! ブラッソに愛人がいる限り、帰らないわ!! 私の鉱山の収益だって、止めてやるんだから!!」
義姉は先代のジェレンチ公爵から、デスチーノと一緒に資金運用の知識を伝授され、自分の鉱山についても良く学び良く知っているのだ。
「本当にブラッソお兄様も、いい加減にしないとね」
堕落した長兄に、アディもがっかりしていた。
「さぁ、アディ! 準備を急がないと!! 邪魔される前に終わらせてしまいましょう!」
未婚のオメガに与えられた、成人していれば自由に結婚できる権利を、実家に文句を言われる前に、アディは愛する人と行使するのだ。
獲物を狙う肉食獣のように、デスチーノと良く似た瞳をギラギラと獰猛に光らせ…
トルセールはその日、アディよりも精力的に結婚式の準備に励んだ。
家族用の居間で、オメガ男性専門の仕立て屋が、手際良くアディの身体を採寸し、小さなメモ帳にちょこちょこと数字を書き入れて行く。
「最優先で進めて欲しいのが、結婚式用の純白の礼装ね!」
大張り切りでトルセールがテイラーから来た、従業員たちに指示を出す。
「お式はお屋敷の礼拝堂で行われるのですか? 大聖堂ででしょうか? 大聖堂ですと… 裾を床に広げて歩くような形のものがとても見栄えが良く…」
「裾は短い方が良いです!!」
アディは即答するが…
「お兄様のお話では、第一騎士団本部の礼拝堂が良いのではないかと言っているの… あなたはどんな場所かご存知?」
さりげなくアディの意見をスルーして、トルセールは一番、年嵩のテイラーにたずねた。
「ええ、はい! なるほど… 質素ではありますが、厳かな雰囲気がとても素晴らしい礼拝堂だと、記憶しております」
「そう、それはよかったわ! どんなデザインが良いかしら?」
「たおやかで華やかなものよりも、公爵様の騎士服とお揃いになるように… 騎士のように凛々しくキリリッとしたものはどうでしょうか? アデレッソス様はとても清楚で可憐なご令息ですから」
パタパタと見本帳に貼られた、デザイン画を捲り、テイラーはトルセールに見せた。
「まぁ!! 素敵! これが良いわ!!」
「…お義姉さま」
両掌をぱんっ… と打って、大はしゃぎをするトルセールに、アディは何かを意見するのを諦め、たずねられた時だけ答えるのが無難だと悟る。
「さぁ次は、お披露目用のドレスコートね! うふふふふぅ~っ! 楽しみだわぁ~っ!! ねぇ、アディ?」
「は… はい、お義姉様…」
いつの間にか義姉にも、アディはデスチーノと同じ呼び方をされるようになっていて…
そのせいか、実兄たちよりもお互い親しみが湧き、以前よりも更に2人は仲良くなった。
「アデレッソス様、お手紙が届いております」
早速、アディに不便が無いようにと、デスチーノが付けてくれた専属の従者が、居間まで手紙を持って来た。
アディにとって、生まれて初めての従者で、名前を呼ばれると緊張するのだ。
「あ… ありがとう、フェイラ」
デスチーノに言われて、昨日のうちにアディがエントラーダ伯爵家へ送っておいた、手紙の返事が届いたのだろう。
その場でアディは、手紙の内容を確認した。
「アディ…何て言って来たの?」
事情を知るトルセールは、心配そうに手紙を読み終わったアディにたずねた。
「うん、デスチーノの思惑通りになったよ」
「そう、良かったわ!」
2人で顔を見合せて、ホッ… と胸を撫で下ろした。
「それと… お義姉様に帰るよう説得しろと書いてある」
「ふんっ!! ブラッソに愛人がいる限り、帰らないわ!! 私の鉱山の収益だって、止めてやるんだから!!」
義姉は先代のジェレンチ公爵から、デスチーノと一緒に資金運用の知識を伝授され、自分の鉱山についても良く学び良く知っているのだ。
「本当にブラッソお兄様も、いい加減にしないとね」
堕落した長兄に、アディもがっかりしていた。
「さぁ、アディ! 準備を急がないと!! 邪魔される前に終わらせてしまいましょう!」
未婚のオメガに与えられた、成人していれば自由に結婚できる権利を、実家に文句を言われる前に、アディは愛する人と行使するのだ。
獲物を狙う肉食獣のように、デスチーノと良く似た瞳をギラギラと獰猛に光らせ…
トルセールはその日、アディよりも精力的に結婚式の準備に励んだ。
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