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38話 オエスチ侯爵の問いかけ2
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オエスチ侯爵はひとしきり大笑いした後…
「ああ~っ… 失礼!」
ゴホンッ… ゴホンッ… と咳払いをすると、打って変わって真面目な顔をする。
「結婚するのなら、出来ればこの社交シーズン中にした方が良い」
「さすがにそれは難しいかと… そのためにはまず、離婚を成立させなければいけませんし… 確か、数か月はかかると弁護士に言われましたから…」
「通常通りならば、確かに時間は掛かるだろうが… 君は何年も王太子殿下の世話をして来たのだから、彼に口利きを頼めば良いさ」
オエスチ侯爵はニヤリとアディに笑い掛けた。
急に笑い掛けられ、アディは困り顔でへらっ… と愛想笑いで返す。
「うう… 王族にはあまり、借りを作りたくはないのですが… 後から面倒なので」
数年前まで第一騎士団の騎士団長は王太子が務めていたが…
王太子自身が多忙を極めるようになり、騎士団長職を辞任した。
当時は副騎士団長だったデスチーノが、その後で騎士団長に任命されたのだ。
「何を言っている、王太子に貸しの一つぐらいはあるだろう?」
「無くはありませんが…」
デスチーノは頭をガシガシとかく。
「なるべく早く結婚まで成立させて、社交シーズン中にいくつか有力貴族たちの招待状を手に入れて2人で顔を出せば、今年中に醜聞など消えて無くなるさ! 招待状は私が頼んでやる」
「本当ですか?!」
ずっとアディの醜聞に心を痛めていたデスチーノは、急にやる気になった。
「コンプラ―ル男爵との変な噂が出る前に、全部終わらせて隙を見せないことだ」
「んん? エントラーダ伯爵ではなくて、コンプラ―ル男爵… ですか?!」
思いもよらぬ名前を聞き、デスチーノは顔をしかめた。
結婚式の日に、教会でアディとイチャついていた男だと思うと、腹が立つのだ。
「生粋の騎士である君は、やはりあの噂は知らないようだな? 私の弟が商人の娘と結婚して、商売をやっているのだが… ついこの間もコンプラ―ル男爵が詐欺まがいのやり方で、商売敵を潰したと言っていたから…」
オエスチ侯爵自身も、かなり手広く事業に投資しているらしく、その手の話題に関してはとても敏感なのだ。
「あの男はそれほど、危険な男なのですか?!」
教会で姿を見た時、あの年齢でアディのような若いオメガと結婚しようとするのだから… かなり強欲な人間だと、デスチーノはコンプラ―ル男爵にそういう印象を持った。
「うむ… そういう話だ! 私も聞いただけで真偽の確認まではしていないが、弟の目の確かさは保証する!」
「なるほど… 分かりました! どちらにしてもエントラーダ伯爵を抑えるのも面倒ですし」
そうと決まればと、オエスチ侯爵と話をしながら、デスチーノはこれからどう進めて行くかを考えていた。
「来月、ウチでも晩餐会やら舞踏会を開くから、君たちのことは妻に話しておく… きっと喜ぶだろう!」
「ご迷惑でなければ良いのですが?」
手助けしてもらえるのは有難いが、デスチーノはちょくちょく世話になっている相手に迷惑を掛けるようになれば、やはり心苦しい。
どちらにしても… 慌てて離婚し、慌てて結婚すれば誰かに変な勘繰りをされるのは目に見えている。
「いやいや、恐らく君らが結婚すれば、話題の中心になるのは間違いないからな、妻は喜ぶさ!」
「あまり良い話題は、提供できないでしょうが…」
「そこは君が上手く、美談に持って行けるよう工夫をするのさ!」
「うううっ… そう言うのが一番、苦手なのですが?」
眉尻を下げて、デスチーノはため息を吐く。
「やれやれ、よくそれで王太子の右腕なんかやっていられたなぁ?」
オエスチ侯爵は、カラカラと楽しげに笑い声を立てた。
とても頼りになる、完璧なデスチーノしか見たことの無かったアディは… 子供のように情け無さそうな顔をして、ガックリ肩を落とす姿に、妙な感動を覚えた。
落ち込むデスチーノの隣りで、アディは琥珀色の瞳をキラキラと輝かせた。
「ああ~っ… 失礼!」
ゴホンッ… ゴホンッ… と咳払いをすると、打って変わって真面目な顔をする。
「結婚するのなら、出来ればこの社交シーズン中にした方が良い」
「さすがにそれは難しいかと… そのためにはまず、離婚を成立させなければいけませんし… 確か、数か月はかかると弁護士に言われましたから…」
「通常通りならば、確かに時間は掛かるだろうが… 君は何年も王太子殿下の世話をして来たのだから、彼に口利きを頼めば良いさ」
オエスチ侯爵はニヤリとアディに笑い掛けた。
急に笑い掛けられ、アディは困り顔でへらっ… と愛想笑いで返す。
「うう… 王族にはあまり、借りを作りたくはないのですが… 後から面倒なので」
数年前まで第一騎士団の騎士団長は王太子が務めていたが…
王太子自身が多忙を極めるようになり、騎士団長職を辞任した。
当時は副騎士団長だったデスチーノが、その後で騎士団長に任命されたのだ。
「何を言っている、王太子に貸しの一つぐらいはあるだろう?」
「無くはありませんが…」
デスチーノは頭をガシガシとかく。
「なるべく早く結婚まで成立させて、社交シーズン中にいくつか有力貴族たちの招待状を手に入れて2人で顔を出せば、今年中に醜聞など消えて無くなるさ! 招待状は私が頼んでやる」
「本当ですか?!」
ずっとアディの醜聞に心を痛めていたデスチーノは、急にやる気になった。
「コンプラ―ル男爵との変な噂が出る前に、全部終わらせて隙を見せないことだ」
「んん? エントラーダ伯爵ではなくて、コンプラ―ル男爵… ですか?!」
思いもよらぬ名前を聞き、デスチーノは顔をしかめた。
結婚式の日に、教会でアディとイチャついていた男だと思うと、腹が立つのだ。
「生粋の騎士である君は、やはりあの噂は知らないようだな? 私の弟が商人の娘と結婚して、商売をやっているのだが… ついこの間もコンプラ―ル男爵が詐欺まがいのやり方で、商売敵を潰したと言っていたから…」
オエスチ侯爵自身も、かなり手広く事業に投資しているらしく、その手の話題に関してはとても敏感なのだ。
「あの男はそれほど、危険な男なのですか?!」
教会で姿を見た時、あの年齢でアディのような若いオメガと結婚しようとするのだから… かなり強欲な人間だと、デスチーノはコンプラ―ル男爵にそういう印象を持った。
「うむ… そういう話だ! 私も聞いただけで真偽の確認まではしていないが、弟の目の確かさは保証する!」
「なるほど… 分かりました! どちらにしてもエントラーダ伯爵を抑えるのも面倒ですし」
そうと決まればと、オエスチ侯爵と話をしながら、デスチーノはこれからどう進めて行くかを考えていた。
「来月、ウチでも晩餐会やら舞踏会を開くから、君たちのことは妻に話しておく… きっと喜ぶだろう!」
「ご迷惑でなければ良いのですが?」
手助けしてもらえるのは有難いが、デスチーノはちょくちょく世話になっている相手に迷惑を掛けるようになれば、やはり心苦しい。
どちらにしても… 慌てて離婚し、慌てて結婚すれば誰かに変な勘繰りをされるのは目に見えている。
「いやいや、恐らく君らが結婚すれば、話題の中心になるのは間違いないからな、妻は喜ぶさ!」
「あまり良い話題は、提供できないでしょうが…」
「そこは君が上手く、美談に持って行けるよう工夫をするのさ!」
「うううっ… そう言うのが一番、苦手なのですが?」
眉尻を下げて、デスチーノはため息を吐く。
「やれやれ、よくそれで王太子の右腕なんかやっていられたなぁ?」
オエスチ侯爵は、カラカラと楽しげに笑い声を立てた。
とても頼りになる、完璧なデスチーノしか見たことの無かったアディは… 子供のように情け無さそうな顔をして、ガックリ肩を落とす姿に、妙な感動を覚えた。
落ち込むデスチーノの隣りで、アディは琥珀色の瞳をキラキラと輝かせた。
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