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32話 甥っ子
しおりを挟む2番目の甥っ子、カンタールがジェレンチ公爵邸のバラ園で、いきなりキンキン声で奇声を発した。
「キャアァァ―――――――――ッ…!!!」
あまりの、けたたましさにアディは両手で耳を塞ぐ。
一緒にいる一番上の甥っ子セグーロは、弟の奇声に慣れているらしく顔をしかめるだけで、あまり動じていない様子である。
一番下の姪っ子は、母親の側で乳母と人形遊びに熱中しているため、今は不在だ。
「急に大きな声を出さないで、カンタール、ああ… 本当にビックリしてしまったよ?!」
急に叫ばれ、その場で飛び跳ねそうになったアディは、右手はカンタールと手を繋ぎ、左手はドキドキと驚いて激しく拍動する自分の心臓の上に当てていた。
「アハハハハ―――ッ!!! キャアァァ――――――ッ!!!」
アディが何かを言う度に、カンタールを刺激してしまうらしく、とにかくケラケラと笑い声をあげながら、交互に大声で奇声を発するのだ。
「カンタール、お前の声が一番大きいのはわかったから、もう止めるんだ! アデレッソスお兄様に嫌われてしまうよ?」
長男セグーロが、弟の説得を試みる。
「やだ!」
カンタールはアディの腰のあたりにしがみつく。
「ほらね、お兄様が好きだろう?」
「しゅき!」
どうやらカンタールは、気に入った相手には、自分が大声を出せることを自慢げにアピールする癖があるらしい。
今までアディは、花嫁修業が忙しく甥っ子たちと長い時間を過ごしたことが無かったために、知らなかったのだ。
「なぁ~んだ、そうなのかぁ~っ…! 僕もカンタールが大好きだよ! うわぁ~っ 可愛いい~っ!!」
我慢できず、アディは屈んでカンタールをギュウギュウと抱きしめ… すりすりと頬ずりした。
「キャアァァ―――――――――ッ…!!!」
抱きしめられて興奮したカンタールは、再び大声で奇声を発し…
「う゛う゛う゛っ~!!」
今度は耳元で、カンタールに強烈なキンキン声で叫ばれ… アディの耳がキ―――ン… となる。
「アハハハハ―――ッ!!!」
「うるさいよ、カンタール!」
セグーロは、指で耳栓をして、文句を言った。
「おや、おや、元気が良い子ですね?」
淡いピンクのつるバラが一面に咲く、柵と柵の間から、麦わら帽子を被った庭師が出て来てニコリと笑う。
「お仕事中に騒がしくてすみません、このバラ園に初めて来たので燥いでしまって…」
例え公爵家の使用人が相手でも、自分の甥っ子が躾が悪い子供だと思われたくなくて、赤い顔でアディは言い訳をして、庭師に謝った。
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