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3話 傷心のアデレッソス3
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「それは本当に気の毒だと思うよ… だからと言って、夜中に他人の寝室へ忍び込んで良い理由にはならないぞ?」
次兄の結婚披露パーティーに招待され、エントラーダ伯爵邸に滞在しているジェレンチ公爵に、大切な頼み事があって…
アデレッソスはこっそりデスチーノの寝室に忍び込んだのだ。
「分かっています、ジェレンチ公爵様… でも僕は、あなたにどうしてもお願いしたいことがあって来たのです」
掌で涙や鼻水を顔から綺麗に拭うと、アデレッソスは身体を回し、ベッドに転がるデスチーノと向き合い、ジッ… と顔を見る。
「昼間、君が言っていたあの話か? あんなバカげた話を、この私が本当に受け入れると君は思っていたのか?」
デスチーノは、じろりとアデレッソスの小さな顔を睨み付けた。
昼間、エントラーダ伯爵邸に到着したばかりのデスチーノを厩舎前で捕まえて、アデレッソスは先に望みを伝えていた。
「はい、あなたならきっと、僕の望みを叶えてくれると思いました」
頬を赤らめてアデレッソスは顔を伏せた。
「結婚する前の思い出作りのために、私に抱いて欲しいと言ったあれか?」
「はい、僕は30歳も年上の商人に売られます… 両親に厄介払いをされるのです、このパーティーの最終日に婚約が発表される予定ですから」
ジェレンチ公爵デスチーノは長兄の妻、義姉トルセールの兄で… 公爵こそ、幼い頃よりアデレッソスが憧れ続けた騎士だった。
元婚約者ヴィードロの母と、デスチーノの母が姉妹で…
つまりヴィードロとデスチーノは、従兄弟同士で容姿もよく似ていた。
<容姿が似ていると思っていたけど… こうして直接会うと、ヴィードロなんかよりも、ずっと素敵だ! 騎士だから身体がすごく大きくて、お顔はとても雄々しくて… 今の僕は無礼な侵入者なのに、こうして話を聞いてくれる優しい殿方だし、やっぱり元婚約者なんかとは全然違う人なんだ…>
胸の中で憧れの人への称賛があふれ、同時に間違った相手に自分の全てを捧げてしまった喪失感で、アデレッソスは切なくなり… 無意識に自分の胸を押さえた。
「妹のトルセールにチラリと聞いたが… 君の新しい結婚相手の名前は、確か… コンプラ―ル男爵… だったか? 晩餐の時、君と一緒に居た太った男か?」
コンプラ―ル男爵は、平民出身の商人だがとても裕福で… 男爵位が付いた土地を買うことで、貴族の仲間入りをしたベータの男性だった。
「はい… 父は僕をコンプラ―ル男爵に売ることで、恩を売り共同で事業を始めようと計画を立てているようです」
「・・・・・・」
途端にデスチーノが嫌そうな顔をするから、アデレッソスはカラカラと笑った。
「別に結婚自体は嫌ではありません、ですから受け入れるつもりです… 僕が起こした醜聞を考えると、まだ誰かに嫁げるだけ幸運だと思いますから… ですが…」
元々、オメガのアデレッソスには選ぶ権利は無く、自由恋愛などエントラーダ伯爵家にとって、道理に背いた行いだった。
「なぜ、私を選んだ? なぜ、私に抱かれたいのだ?」
アデレッソスの心の奥底まで、全て見透かされそうなデスチーノのスミレ色の瞳でジッ… と見つめられ…
大きく一度うなずき、アデレッソスは深呼吸をして緊張を抑え込むと、ニコリと微笑みを告白した。
「それは… あなたが僕の初恋の人だからです!」
「何だって?!」
余程、意外だったのだろう、ぱかりと口を開けて、デスチーノはポカ~ンとする。
次兄の結婚披露パーティーに招待され、エントラーダ伯爵邸に滞在しているジェレンチ公爵に、大切な頼み事があって…
アデレッソスはこっそりデスチーノの寝室に忍び込んだのだ。
「分かっています、ジェレンチ公爵様… でも僕は、あなたにどうしてもお願いしたいことがあって来たのです」
掌で涙や鼻水を顔から綺麗に拭うと、アデレッソスは身体を回し、ベッドに転がるデスチーノと向き合い、ジッ… と顔を見る。
「昼間、君が言っていたあの話か? あんなバカげた話を、この私が本当に受け入れると君は思っていたのか?」
デスチーノは、じろりとアデレッソスの小さな顔を睨み付けた。
昼間、エントラーダ伯爵邸に到着したばかりのデスチーノを厩舎前で捕まえて、アデレッソスは先に望みを伝えていた。
「はい、あなたならきっと、僕の望みを叶えてくれると思いました」
頬を赤らめてアデレッソスは顔を伏せた。
「結婚する前の思い出作りのために、私に抱いて欲しいと言ったあれか?」
「はい、僕は30歳も年上の商人に売られます… 両親に厄介払いをされるのです、このパーティーの最終日に婚約が発表される予定ですから」
ジェレンチ公爵デスチーノは長兄の妻、義姉トルセールの兄で… 公爵こそ、幼い頃よりアデレッソスが憧れ続けた騎士だった。
元婚約者ヴィードロの母と、デスチーノの母が姉妹で…
つまりヴィードロとデスチーノは、従兄弟同士で容姿もよく似ていた。
<容姿が似ていると思っていたけど… こうして直接会うと、ヴィードロなんかよりも、ずっと素敵だ! 騎士だから身体がすごく大きくて、お顔はとても雄々しくて… 今の僕は無礼な侵入者なのに、こうして話を聞いてくれる優しい殿方だし、やっぱり元婚約者なんかとは全然違う人なんだ…>
胸の中で憧れの人への称賛があふれ、同時に間違った相手に自分の全てを捧げてしまった喪失感で、アデレッソスは切なくなり… 無意識に自分の胸を押さえた。
「妹のトルセールにチラリと聞いたが… 君の新しい結婚相手の名前は、確か… コンプラ―ル男爵… だったか? 晩餐の時、君と一緒に居た太った男か?」
コンプラ―ル男爵は、平民出身の商人だがとても裕福で… 男爵位が付いた土地を買うことで、貴族の仲間入りをしたベータの男性だった。
「はい… 父は僕をコンプラ―ル男爵に売ることで、恩を売り共同で事業を始めようと計画を立てているようです」
「・・・・・・」
途端にデスチーノが嫌そうな顔をするから、アデレッソスはカラカラと笑った。
「別に結婚自体は嫌ではありません、ですから受け入れるつもりです… 僕が起こした醜聞を考えると、まだ誰かに嫁げるだけ幸運だと思いますから… ですが…」
元々、オメガのアデレッソスには選ぶ権利は無く、自由恋愛などエントラーダ伯爵家にとって、道理に背いた行いだった。
「なぜ、私を選んだ? なぜ、私に抱かれたいのだ?」
アデレッソスの心の奥底まで、全て見透かされそうなデスチーノのスミレ色の瞳でジッ… と見つめられ…
大きく一度うなずき、アデレッソスは深呼吸をして緊張を抑え込むと、ニコリと微笑みを告白した。
「それは… あなたが僕の初恋の人だからです!」
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余程、意外だったのだろう、ぱかりと口を開けて、デスチーノはポカ~ンとする。
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